こんにちは、カズです。
1週間前は、2次試験の合格発表でしたね。合格された皆さま、本当におめでとうございます。
2次試験に合格したものの、ほっとする間もなく「次は実務補習か……」と、少し身構えている方も多いのではないでしょうか。
「かなり大変らしい」「指導員に当たり外れがある」「費用が高い」——そんな話を耳にすると、不安になるのも無理はありません。
私自身も、受講前は同じような気持ちでした。
今回は、昨年実務補習15日間コースを受講した経験をもとに、実務補習の実態と、実際に受けて感じたことを率直にまとめています。これから実務補習を控えている方が、少しでも安心して一歩を踏み出せる材料になれば幸いです。
実務補習とは?
実務補習とは、中小企業診断士として必要な実務能力を身につけるために、日本中小企業診断士協会連合会等が実施している実践的な研修制度です。実在する中小企業を対象に、企業診断を行い、最終的に報告書としてまとめます。
昨年から制度が変更され、15日間コースと8日間コースの2種となりました。15日間コースの場合、初日に全体オリエンテーションがあり、その後7日間×2サイクルで、2社分の企業診断を行う構成になります。
各サイクルでは、班(3〜6名程度)で企業を訪問し、ヒアリング、分析、提言、報告書作成までを短期間で一気に進めます。指導員(現役の中小企業診断士)の指導を受けながら、より実務に近い形で診断プロセスを経験できる点が特徴です。
実際の実務補習の流れ
実務補習は、初日の全体オリエンテーションから始まりますが、その前段階として、受講前に実務補習用のテキストが郵送で届き、「いよいよ始まるんだな」と実感したのを覚えています。
さらに、オリエンテーション前には、指導員・副指導員からメールで連絡があり、診断先企業の財務情報や会社概要などの資料が共有されました。事前に一通り目を通したうえで臨みましたが、このあたりの進め方は指導員によってやり方が異なるようです。
班のメンバーは15日間を通して同じで、指導員も同一の方が担当されました。一方、副指導員は前半と後半で交代し、それぞれ異なる観点からのコメントや助言を受けられたのは良い経験だったと感じています。
1社目、2社目それぞれの開始時には、まず担当機能の分担を班内で相談して決定しました。経営戦略を担当するメンバーがリーダー役を担い、全体の進行管理や報告書の取りまとめを行う形です。担当機能が決まった後、各自が自分の機能に関するヒアリング項目を書き出し、事前準備を行ったうえで企業訪問に臨みました。この準備の有無によって、ヒアリングの深さが大きく変わることを、初回の訪問で強く実感しました。
ヒアリング後は、班内で情報を共有しながら分析と提言を進めていきます。2次試験で学んだフレームワークがそのまま使える場面もあれば、教科書どおりにはいかず、「この会社にとって本当に意味のある提案は何か」を考え続ける場面も多くありました。
報告書作成では、指導員からのレビューを受けながら内容を修正していきますが、私の指導員は「延長はしない」という方針を明確にされており、夜遅くまで拘束されることはありませんでした。それは単に時間を区切るという意味ではなく、受講生に任せるところは任せつつ、限られた時間の中でも鋭い指摘によって最低限の軌道修正を行うというスタンスだったように思います。
そのため、議論が大きく迷走することもなく、結果として大幅に時間が超過することはありませんでした。ベテラン診断士ならではの視点や判断の鋭さを、間近で見ることができたのは非常に貴重な経験だったと感じています。
15日間コースでは、この7日間のサイクルを2回繰り返します。担当機能は1社目と2社目で決め直しました。1社目で全体の流れや作業量を把握できたことで、2社目では進め方や時間配分に余裕が生まれました。一方で、企業が変われば課題の性質も大きく異なり、毎回新鮮な気持ちで実務補習に取り組むことができました。
実務補習を終えて得たもの
診断士試験では多くのフレームワークや考え方を学びましたが、その中でも特に重要なものが、実務補習を通じてよりはっきりと浮かび上がったと感じています。その代表が、「事業ドメイン」を突き詰めて考えることでした。誰に、何を売るのか。この問いが定まらなければ、どれだけ分析を重ねても、実行につながる提案にはなりません。
「戦略とは、戦いを略すること」と言われますが、実務補習の現場では、競争を避けながら勝てる領域を見つけることの重要性を何度も意識させられました。大企業や強力な競合と真正面から戦うのではなく、自社の強みが最も活きる土俵を選ぶ。その意味で、事業ドメインを正しく定めることこそが、中小企業にとって最も重要な戦略なのだと、頭ではなく実感として理解できたように思います。
また、中小企業支援において特に印象に残ったのは、コンサルティングによって「社長の考え」を変えることよりも、「社長の行動」を変えることの方が重要だという点です。理屈を積み上げて納得してもらうことよりも、「これならできそうだ」と思える施策を一つ示す。その小さな一歩が、結果として経営を動かす力になるのだと実感しました。実務補習では、正論よりも実行可能性が重視される場面が多く、診断士としての実務のリアルを学ぶことができました。
さらに、実務補習を通じて、先輩診断士や診断士協会との距離が一気に縮まったことも大きな収穫です。指導員や副指導員とのやり取りを通じて、診断士としての考え方や仕事への向き合い方に触れることができ、「資格を取った後の世界」を具体的にイメージできるようになりました。協会活動や実務の話を直接聞けたことで、診断士としてのキャリアの広がりを感じています。
そして何より、多様なバックグラウンドを持つ班員との出会いは非常に刺激的でした。異なる年代・業界・職種のメンバーと議論する中で、自分では気づけなかった視点に何度も出会い、診断士という資格が持つ懐の深さを改めて実感しました。実務補習は、単なるポイント獲得の場ではなく、診断士コミュニティへの入口であり、今後の活動につながる大切な経験だったと思います。
実務補習を振り返って思うこと
実務補習を受ける前、私自身も含めて、周囲からよく耳にしていた話がいくつかありました。実際に受講してみて感じたことを、率直に振り返ってみたいと思います。
「めちゃくちゃ大変、睡眠時間が削られる」
結論から言うと、私の場合はそこまで大変だとは感じませんでした。平日は有給休暇を取得して受講していたこともあり、肉体的・精神的には、普段の業務よりもむしろ楽だった印象があります。もちろん作業量はそれなりにありますが、試験のように点数を競うわけではなく、「企業のためにより良い提案を考える」という前向きな時間だったため、苦痛は感じませんでした。
負荷の大きさは、班の人数や役割分担、指導員の方針によって左右されると思います。ただ一つ言えるのは、実務補習が耐えられないほど辛いと感じる場合、コンサルティング業務を続けていくのは正直難しいということです。コンサルの仕事は、やはり一定以上にハードです。
「指導員に当たり外れがある」
実際のところ、私の場合は非常に恵まれており、「大当たりだった」と感じています。受講生に任せるところは任せつつ、要所では的確な指摘で軌道修正してくれる指導スタイルで、限られた時間の中でも安心して議論を進めることができました。
一方で、毎年多くの合格者が実務補習を受講している以上、指導員の経験や指導スタイルに一定のばらつきが生じるのは事実だと思います。ただし、これは個々の良し悪しというよりも、指導方法の違いによる部分が大きいのではないでしょうか。協会側もこの点は認識しており、全体の質を保つための工夫や改善が進められているようです。
実務補習は、指導員の考え方や進め方に触れる貴重な機会でもあります。そうした違いも含めて学びと捉えることで、より多くの気づきが得られるのではないかと感じました。
「受講費用が高い」
費用については、人によって感じ方が分かれると思いますが、個人的には「妥当」だと感じました。指導員・副指導員の立場から見れば、決して割の良い仕事ではありませんし、特に副指導員に至っては、ほぼボランティアに近い側面もあります。一定の質を維持し、指導員を確保するためには、ある程度の費用がかかるのは仕方がないと思います。
実務補習を単なる「ポイント取得のためのコスト」と見るか、「診断士としてのスタート投資」と見るかで、印象は大きく変わるでしょう。
実務補習は、確かに楽な制度ではありません。しかし、試験勉強だけでは得られない学びや出会いがあり、診断士として最初の一歩を踏み出す場としては、非常に価値のある経験だったと感じています。これから実務補習を受ける方には、ぜひ前向きに、そして少しだけ肩の力を抜いて臨んでほしいと思います。
おすすめ書籍紹介
『外資系コンサルのスライド作成術(山口周)』
単なるPowerPointのテクニック集ではなく、外資系コンサルがどのように思考を整理し、相手に伝わる形に落とし込んでいるのかを学べる一冊です。実務補習では、指導員によってはPPT作成を求められるケースもありますが、そうでない場合でも、報告書の構成や論点整理、見せ方を考えるうえで大いに参考になります。診断士として実務に向き合う際の「伝える力」を磨きたい方に、ぜひおすすめしたい書籍です。








