試験前最後の投稿なので事例4解説の7月で解説した令和3年より前の3年分を解説をしたいと思います。
なぜこれを取り上げるかというと、この3年間はとりわけ設問間のすり合わせが必要だと思われるからです。この観点で説明しているものが見当たらないため、どうしても試験前に間に合わせたく、大量になり申し訳ありません。
とにかく事例4もポエムではなく設問文と与件文から解答が作れること、また作り方を1つでも感じ取っていただければ嬉しいです。
それでは平成30年から令和2年の事例Ⅳを振り返っておきたいと思います。なお擦り合わせに必要な計算問題も解説しています。
平成30年度
手始めに他社比較なので
財務指標5つ
売上高総利益率 〇D24.15% 他9.92%
売上高営業利益率 ×D1.20% 他3.25%
たな卸資産回転率 D150.30回 他1815回 (重要度低いので除外)
有形固定資産回転率×D17.08回 他42.21回
自己資本比率 〇D35.59% 他12.01%
与件の要約
1段落 資本金5000万円、55名売上15億 27百万円/人
倉庫・輸送・不動産サービスと多角化。 顧客要望に応え工夫を全社共有。
2段落 E社の引越業務の地域拠点が起源。
二人1組の配送ネットワークから全国ネットワーク構築。
3段落 新築物件に入れる大型品を集めて一括配送業務。
E社の子会社F社を吸収合併した。F社事業はインテリアのサービスなど。
4段落 E社から不動産管理サポートも事業譲受。報告システムで拠点なくても受託可能。
5段落 受注業務は、協力個人事業主に外注する。
→課題は外注確保、育成、連携とサービス向上。
6段落 配送ネットワーク強化 自社拠点拡大と外注の増加
労働集約的であり優秀な人材採用と教育が方針
7段落 財務諸表
第2問
第3段落のF社吸収合併の成否
(設問 2 )
インテリアのトータルサポート事業のうち、吸収合併により拡充されたサービス
の営業損益に関する現金収支と非資金費用は次のとおりであった。
企業価値の増減を示すために、吸収合併により増加したキャッシュフロー(単位:
百万円)を求め、その値を⒜欄に、計算過程を⒝欄に記入せよ。⒜欄の値について
は小数点第 3 位を四捨五入すること。また、吸収合併によるインテリアのトータル
サポート事業のサービス拡充が企業価値の向上につながったかについて、(設問 1 )
で求めた値も用いて理由を示して⒞欄に 70 字以内で述べよ。なお、運転資本の増
減は考慮しない
設問2論述プロセス
値も用いた理由なので、要求されるCF>実際に稼いだCFなのだから、うまくいかなかったというしかない。ほかの要素を入れる余地もない。
(設問 3 )
(設問 2 )で求めたキャッシュフローが将来にわたって一定率で成長するものとす
る。その場合、キャッシュフローの現在価値合計が吸収合併により増加した資産の
金額に一致するのは、キャッシュフローが毎年度何パーセント成長するときか。
キャッシュフローの成長率を⒜欄に、計算過程を⒝欄に記入せよ。なお、⒜欄の成
長率については小数点第 3 位を四捨五入すること
第3問
設問1 計算問題 図表省略
来年度は外注費が 7 %上昇すると予測される。また、営業所の開設により売上高
が 550 百万円、固定費が 34 百万円増加すると予測される。その他の事項に関して
は、今年度と同様であるとする。
予測される以下の数値を求め、その値を⒜欄に、計算過程を⒝欄に記入せよ。
①変動費率(小数点第 3 位を四捨五入すること)
②営業利益(百万円未満を四捨五入すること)
問題文がわかりにくい例としてなにかと引き合いに出される問題です。
設問2
D社が新たに営業拠点を開設する際の固定資産への投資規模と費用構造の特徴について60字以内で説明せよ。
設問解釈がおそらく過去一難しい問題です。
これは「投資規模」を聞かれているので、なんらかの基準に比して大きい小さいが必要なのですよね。
そこで他の投資を考えると第2問でF社を吸収合併して大規模な固定資産投資を行っています。
増えた固定資産は91百万円です。これに比べたら固定資産増加は小さいと言えそう。
固定費大小が事業に与える影響から「営業レバレッジ」が1次知識で出てくるはず。
第2問の企業価値高めなかった吸収合併の代替事業と考えれば、こちらのメリットは?
という発想からひねり出すしかないかも。 与件から確実に拾えそうな内容も私には見つけられなかった。
設問3
(設問 2 )の特徴を有する営業拠点の開設が D 社の成長性に及ぼす当面の影響、 および営業拠点のさらなる開設と成長性の将来的な見通しについて、60 字以内で 説明せよ。
今は「地方別に計3ケ所」「中核となる大都市に」しかない。地方別でしたら全国10ケ所くらいは相互の干渉なく拡大できるはず。
→当面は拠点開設すれば売上利益の成長は見込める。
「さらなる開設」で一定数以上の拠点を増やすと、今度は拠点間のカニバリゼーションを引き起こし売上利益の増加は鈍り少ない固定費でも割に合わない状況が推測できる。
→将来的には、需要が飽和し売上利益の成長性の鈍化が推知される。(60字と80分の制約だとここまでかも)
与件文にこだわるなら
6段落の課題に沿わせ「将来的には外注業者と緊密な連携でサービス水準を向上できる。」
拠点なくても自動で対応できるが営業所あればサービス向上できると言えそうです。
(解答例)
第1問に戻ります。
設問1
D 社と同業他社の財務諸表を用いて経営分析を行い、同業他社と比較して D 社が優れていると考えられる財務指標を 1 つ、D 社の課題を示すと考えられる財務指標を 2 つ取り上げ、それぞれについて、名称を⒜欄に、その値を⒝欄に記入せよ。
設問2
自己資本は何が多いでしょうか?
179百万円のうち114百万円が「資本剰余金」です。
これは何か?
与件3段落と第2問にF社吸収合併があり資産負債差が52百万円ある。4段落にもE社から事業譲受もあるため、これらが資本剰余金で自己資本が充実していると推知できる。
優れた点は、「吸収合併・事業譲受で自己資本が充実。」
課題:
有形固定資産回転率は第2問の吸収合併で増加した資産に相応するキャッシュを稼ぐ、6段落の課題「労働集約的」に対応させて「資本集約を進め固定資産の効率性を高め。」
売上高営業利益率は5段落から課題を拾い。「協力業者を育成連携高め収益性を高める。」
もう一段先まで答えると「サービス網を充実させ収益性高める。」かも。
この文字数制約は厳しすぎます。
第4問
D 社が受注したサポート業務にあたる際に業務委託を行うことについて、同社の事業展開や業績に悪影響を及ぼす可能性があるのはどのような場合か。また、それを防ぐにはどのような方策が考えられるか。70 字以内で説明せよ。
与件に忠実に
令和元年度
このころ計算自体は今と比べるとかなり楽だった印象です。
しかし記述については計算結果とのすり合わせが必要になっています。
したがって解く順番は第1問(設問1)→第2問→第3問→第1問(設問2)→第4問がよいと思います。
・財務諸表から 連結であること2期比較であることを確認
収益性
① 売上高総利益率 19.10%→16.76% ×
② 売上高営業利益率 3.41%→0.98% ×
効率性
③ 棚卸資産回転率 4.74回→3.13回 ×
④ 有形固定資産回転率 1.49回→1.62回 〇
安全性
⑤ 自己資本比率 31.47%→28.61% ×
各段落要約
1段落 建材販売 資本金2億円 従業員70名 100%子会社あり
2段落 建材事業部 工務店に建材販売
子会社はその配送
マーケット事業部 建売住宅分譲販売とリフォーム
不動産事業部 保有不動産を賃貸する。
3段落 建材事業部 受注増加も業績低迷 価格高騰と中抜き取引 利益率悪い×
配送コスト 小口化で増加非効率 →EDI使い情報共有、効率上げる検討中
4段落 マーケット事業部 近隣の住宅分譲 販売滞る 棚卸悪化×
5段落 不動産事業部 所有物件の賃貸は収入多い。利益に貢献。 有形固定資産回転〇
第1問(設問1)
きれいに3事業に割振れるのですよね。
(設問2)D社の当期の財政状態および経営成績について前期と比較した場合の特徴。50字
上の通り3事業部を意識して記述。文字数が厳しすぎですが。
第2問
(設問2)bの設問ですが重大な問題を30字で記載。
設問1から事業部間の変動比率がバラバラです。
CVPはCost Volume Profitなのでコストと取引量と利益の関係なので
「売上が上がればどのくらい利益が上がるか検討する」
変動比率が一定を前提としています。
しかしD社は事業により変動比率が大きく異なります。
=どの事業部を増やすかで答えが変わるので単純なCVPに向きません。
第3問
各年のキャッシュフロー計算するだけ
(設問3)
当年度で最も難しい計算だが年度毎CFと資料の人件費原材料費の現在価値が税前CFという点に気づけば後は電卓を間違えないだけ。
第4問
設問1
D社は建材事業部の配送業務を分離し連結子会社としている。
a)メリット
第2問で事業毎の変動費割合がバラツキCVPの業績管理やりにくい点に注目
b)デメリット
別会社なので間接部門のダブり、管理コストの二重負担や次のEDI絡みで情報共有が別会社で非効率あたり
設問2
建材事業部でのEDI導入による財務的効果。60字
与件、第3段落 「建材事業部においては、地域における住宅着工数が順調に推移しているため受注は増加」「建材価格高騰による業績低迷」「今後は着工戸数が減少見込まれる」「メーカーと顧客のダイレクト取引中抜きが増加」
子会社で「建材配送の小口化による配送コスト増大、非効率な在庫保有で収益性低下」
課題に「タイムリーな建材配送を実現」
第1問の収益性と棚卸回転率の悪化に結びつける。
令和2年度
第2問は専ら計算なので割愛します。
経営指標5つから
売上高総利益率 〇D 26.39% 他16.32%
売上高営業利益率 ×D 2.15% 他3.95%
棚卸資産回転率 ×D 3.91回 他2.99回
有形固定資産回転率×D 5.30回 他13.60回
自己資本比率 ×D 15.82% 66.12%
与件要約
1段落 創業40年 資本金3000万円、従業員106人
2段落 戸建住宅事業
顧客志向 他社よりアフターケア充実。商圏を3県に限定。地元に根差した企業と評判高い。
しかし 費用負担重い
3段落 食も地元のために飲食事業に多角化6年 懐石2店、和食1店
ステーキ1店、ファミレス1店は赤字
4段落 事業部担当取締役は セグメント毎ROIにより業績評価。
5段落 将来のため 土地保有 出店計画なく駐車場。
販売した戸建住宅向けリフォーム事業
バリアフリーのニーズあり、拡大したい←方向性
第1問(配点 25 点)
(設問 1 )
D 社および同業他社の当期の財務諸表を用いて比率分析を行い、同業他社と比較
した場合の D 社の財務指標のうち、①優れていると思われるものを 1 つ、②劣って
いると思われるものを 2 つ取り上げ、それぞれについて、名称を⒜欄に、計算した
値を⒝欄に記入せよ。
優れ:売上高総利益率 2段落顧客志向でアフターケア充実。商圏を3県に絞る地元評判高い。
劣り:売上高営業利益率2段落費用負担重い
有形固定資産回転率 第2問が固定資産活用法 店舗の選択である
※総利益率が唯一の優れであり、一方販管費が嵩んでいる。このため収益性から敢えて2つ選択。
設問2での直接的な説明が難しい安全性を外しています。
(設問 2 )
D 社の当期の財政状態および経営成績について、同業他社と比較した場合の特徴
を 60 字以内で述べよ。
プロセス
総利益が優れる。←顧客志向で地元に根差しているから。
営業利益は劣る。←過剰サービスで費用嵩むから。
固定資産の効率劣る。←出店計画ない土地保有しているから。
第3問(配点 20 点) D 社は、リフォーム事業の拡充のため、これまで同社のリフォーム作業において作 業補助を依頼していた E 社の買収を検討している。当期末の E 社の貸借対照表によれ ば、資産合計は 550 百万円、負債合計は 350 百万円である。また、E 社の当期純損失 は 16 百万円であった。
(設問 1 ) D 社が E 社の資産および負債の時価評価を行った結果、資産の時価合計は 500 百万円、負債の時価合計は 350 百万円と算定された。D 社は 50 百万円を銀行借り 入れ(年利 4 %、期間 10 年)し、その資金を対価として E 社を買収することを検討 している。買収が成立した場合、E 社の純資産額と買収価格の差異に関して D 社 が行うべき会計処理を 40 字以内で説明せよ。
プロセス
E社純資産額 500-350=150百万円。株式買取価格 50百万円。
つまり150の価値あるものを50で買うから100百万円得をする。
利益はどう処理するか? →負ののれんで取得時の特別利益。
(これは1次知識に頼ることになりますが、利益になることは書けると思います。)
(設問 2 ) この買収のリスクについて、買収前に中小企業診断士として相談を受けた場合、 どのような助言をするか、60 字以内で述べよ。
当期純損失が発生している→基本キャッシュが目減りする。
リスク将来キャッシュマイナスでE社純資産が減少。
=将来キャッシュ見積、 D社のシナジー効果による業績改善可能性を探る。
もう一面はもともと安全性低い、借入による投資で悪化しないよう留意。
第4問(配点 25点)配点高い! 40字なのに。
取締役に対する業績評価の方法について、中小企業診断士として助言を求められた。現在の業績評価の方法における問題点を⒜欄に、その改善案を⒝欄に、それぞれ 20 字以内で述べよ
プロセス
不動産と飲食の業態違う、固定費変動費構成も違う。投資利益ではなく取締役の責任権限に基づき業務プロセスや顧客、教育の視点を取り入れる。→与件文でも優秀な人材採用と教育が方針
1次知識:バランススコアカードの観点 財務、業務プロセス、顧客、教育を意識してまとめる
20字×2は厳しい。
方針に合わせた評価が重要で、別に財務指標は問われていないのですよね。
(令和6年度の最終問の留意点でも同じことが言えましたね。過去問に学ぶ意味はここだと思います。)