「みんなの再現答案」が公開されましたので事例Ⅳの再現答案を解説したいと思います。
私の再現答案は
https://www.aas-clover.com/tokyoblog/17254
協会の得点開示では90点をいただけました。
ただし再現答案の評価はAAS49点、L68点、個人サービス48点という採点でした。
採点サービスや予備校と協会得点で何が違ったのかを考えると
①計算問題は途中式の考え方を重視している。
②結果数値は意外に配点小さい。
③複数の考え方が許容される。
計算問題が本線の解答とあっていたのは第2問設問1だけでした。
④記述は会計知識を問うておらず、事例企業の課題解決など他の事例と同じことを聞かれている。
という見立てです。
では、解答プロセス再現してみます。
試験開始、受験番号書いて、段落番号振って、設問を確認。
第1問経営分析、第2問セールスミックス、第3問NPV、第4問事業部評価あたり論述
と当たりつけて1→4→2→3の順でいいかな。
まずは第1問
優れ1の劣り2 記述は「特徴」
財務諸表を見て5項目を計算します。
①総利益率、②営業利益率、③棚卸回転率、④有形固定資産回転率、⑤自己資本比率
あとは当座比率が比較対象と100%上下であるなど明確に異なったときに追加する位。
R4のように生産性指定の時は付加価値追加という柔軟性は要りますが、だいたいここから指定通りに選べれば、他は取り立てて計算しなくても対応できます。
逆にこれ以外は与件から理由付けするのが難しいという側面もあるので、学習上もこの5つの使いどころを極めるほうが有意です。 例えば流動比率、指摘しても何が悪いのかいいのかを記載が難しく使い勝手が悪いのですよね。
経営指標 D社 同業
売上高総利益率 59.01% 70.08% ×
売上高営業利益率 1.01% 4.22% ×
有形固定資産回転率11.26回 6.73回 〇
棚卸資産回転率 20.69回 214.44回 ×
自己資本比率 14.14% 35.67% ×
(ここまで5分程度)
選んだのは
優れは有形固定資産回転率で決定
棚卸も大きく劣っているが、差がありすぎ同業は本当に同じ事業形態か?
飲食が多め加工が少ない?固定資産で土地、工場もないし
生鮮品扱う飲食業なら2日で1回転するので冷凍食品とは比べられない。
さらに同業の事業記述がないので比較できず選べないと判断しました。
劣りは自己資本比率と収益性のどちらか?
与件文を見て、要約すると
1段落 D社は飲食、総菜、加工の3事業で従業員100人
2 飲食は30店舗 売上30億円 商品差別化できている。Qはいい。
課題はコスト削減とさらなる差別化。
3 総菜は40店舗 売上20億円 コロナ禍をリスク分散。
4 現在は県内のみ中長期で県外へ出たい→課題
5 加工事業部 外部売りは4億円内部売りが中心
売上減少、コスト効率向上が求められる。→課題
6 一貫体制
利点 開発の迅速化、品質管理の徹底、店舗運営の効率化
有形固定資産回転率OK
欠点 構築維持のコストかかる、財務的なリスク高める
経営指標は営業利益率と自己資本比率で確定!
7 投資決定や業績評価の在り方 見直し。 第4問
8 財務諸表
という内容
与件文第6段落が注目、ここから文言を拾ってきて、
(再現答案)
特徴は、製品開発から生産加工販売迄一貫体制を構築し県内出店のみで効率性が高い。一貫体制の構築維持にコストがかかり収益性が低く、投資を借入金で賄い長期安全性が低い。
(ここまで10分程度)
*事後感想
・後日の振り返り3段落より3事業部制でリスク分散のD社の特徴は入れたほうがよかったと思います。
(作り直すなら)
特徴は、3事業部でリスク分散しながら県内に商圏を絞り一貫体制で有形固定資産の効率性は高い。一貫体制維持コストが嵩み収益性低く、投資を借入金で賄い安全性も低いこと。
次は第4問
(設問1)
D 社では、事業部の業績評価のために、加工事業部から飲食事業部および惣菜事業部への製品の供給を事業部間の販売とみなし、そこでは製品単位当たりの全部原価に一定の割合の利潤を上乗せした価格を用いている。D 社が採用しているこのような価格の設定方法には、事業部の業績評価を行う上でどのような問題点があるのか、80 字以内で説明せよ。
設問1は「事業部の業績評価」を問われています。
事業部の業績評価で大切なことは、「評価することで会社の課題解決につながること」ですよね。
問題点なので「この評価だと加工事業部の動きがD社の課題解決にならない」この線でまとめる。
書く内容は、
製品単位当たりの全部原価に一定の割合の利潤を上乗せした価格を用いています。
→内部売りすれば加工事業部は「作れば利益になる」 (内部環境)
→5段落の課題「外部売り増やし、コスト削減」する誘因にならない
また2段落にある外部環境が厳しい状態に対しては
他の2事業部だけが「競争環境の厳しさ」を背負い不公平になる。
(再現答案)
問題点は後工程のみ競争環境の厳しさの影響を受けてしまうこと。加工事業部にコスト削減志向が働かないこと。加工事業部は生産量を増やせば業績が上がるため過剰生産になる。
*事後感想
再現答案では「外部売り」を増やすところ明示できてないですね。あと「作れば利益が保証される」を強調したほうがよかったか。
(作り直し)
問題点は、加工は作って内部販売すれば利益が保証され生産過剰となり、外販売拡大やコスト削減志向が働かない。競争環境の厳しさは飲食・総菜事業部が負担し不公平な点である。
(設問 2 )
D 社では、創業者である社長が事業部の運営に大きな影響力を有しており、設備投資に関しては当該社長が実質的な意思決定権限を持っている。このような場合、財務指標を用いて事業部長の業績評価を行うときに留意すべき点を、60 字以内で説明せよ。
今度は「事業部長の業績評価」で留意点。
社長の決定で事業部長業績評価が決まる=責任権限が一致していないのでラッキーアンラッキーがついて回る。
公平性担保で問題に留意→管理可能なものだけで評価すべき。
あくまで留意点であり「どんな財務指標を使うか」は問われていないと改めて確認。(予備校各校は模範解答で財務指標で何かを使うというものが多かったですが、)
(再現答案)
留意点は、事業部長の権限と業績評価が合わないこと。社長の意思決定で事業部長の業績評価が左右され評価の公平性が損なわれる。
(ここまで20分経過)
*事後感想
留意点なので締め方が「公平性を担保する」ほうがよかったかも。
(作り直し)
留意点は、事業部長の意思決定の権限と業績評価項目を合わせた財務指標を用いる。権限外の要因を排除し評価の公平性を担保する。
☆予備校の得点と開示得点を見る限りこの考え方で間違えではなかったと思う。
(多くの予備校や再現答案と切り口は違うだろうな、でも聞かれていることはこれだから信じて書くしかない。というのが当日思ったこと)
第 2 問(配点 20 点)
1時間残して、計算パート突入
セールスミックス。制約条件の時間当たり限界利益を求めて有利なほうから作ればいい。
計算経過(あの狭い箱に小さい字で埋めていく)
X 1袋の限界利益 3000-1780=1220
直接作業1h/袋 1220/1h=1220 機械時間2h/袋 1220/2h=610
Y 追加加工に注目
1袋の限界利益 4800-(1780+1600)=1420
直接作業2.5h/袋 1420/2.5h=568 機械時間2.5h/袋 1420/2.5h=568
どっちもX有利だからXをMaxで作る。
(a)6500袋
作業時間 10,000h-6500×1h=3500h Yは3500/2.5=1400袋
機械時間 13,600h-6500×2h=600h Yは600/2.5=240袋 少ないほう
(b)240袋
(c)営業利益 6500×1220+240×1420-5,600,000=2,670,800円
(設問 2)
Y 社から、最低でも 2,400 袋以上購入することを希望しており、また販売価格の引き上げについては交渉に応じる旨の連絡があった。なお D 社は、設定した販売価格の下で営業利益を最大化するように生産数量を決定するという方針をとっている。生産数量についての Y 社の希望に応じるためには、Y 社向けの製品の販売価格を何円以上に設定すればよいか。
最低でもYを2,400袋以上購入だろ、不利なほうを2,400袋作っても元の営業利益以上を確保すればいいんだろ。
Y2400袋の場合、
作業時間 10,000-6,000=4,000h Xは4000袋
機械時間 13,600-6,000=7,600h Xは3800袋〇
Xは価格変えないから1袋限界利益は1220円
3800袋×1220=4,636,000円
稼ぐべき限界利益は 2,670,800+5,600,000=8,270,800円
(8,270,000-4,636,000)=3,634,800円
3,634,800/2400袋=1,514.5円 切り上げ1,515円
1,515+1780+1600=4,895円
(ここまで40分)
☆(80点以上のみんなの再現答案を見る限りこれでも4,905円と同じくらい点数あったと思う。)
第3問(配点 30 点) あと40分ある。落ち着け。
(設問 1)
初年度および 2 年度のキャッシュフローの更新前と比べた増加額(初期投資と旧機械の売却収入を除く)を計算せよ。
旧機は3年前で240万円 耐用年数12年 240/12年=20万円/年
現簿価240-20×3=180万円
処分70-180=売却損110万円 タックスシールド110×30%=33万円
新機は540万円 耐用年数9年 540/9年=60万円/年
減価償却差額 60-20=40万円
営業利益 初年度30万円×70%=21万円 運転資本 25万円(初年末)
21+40-25=36万円
2年目は
営業利益70×70%=49万円 運転資本40-25万円=15万円
49+40-15=74万円
(a) 36 万円
(b) 74 万円
なお問題文末尾の解釈は
「また、新機械への初期投資と旧機械の売却収入以外のキャッシュフローは、各年度末に生じるものとする。」
「初年度および 2 年度のキャッシュフローの更新前と比べた増加額(初期投資と旧機械の売却収入を除く)を計算せよ。」
初期投資と旧機械の売却収入が初年度の前年度末であることを否定しきれないことから、
「前年度末投資として計算した」=旧機売却損税効果は前年末に発生なので(a)には含めていません。
(設問2)
上の解釈通り、初期投資時に売却損の税効果は発生として解いています。
(a) 53.88 万円
(b) 旧設備 240/12=20/年 残存240-20*3=180 現在売却70
損失70-180=110税効果33 売却CF70+33=103
新設備 540/9=60万/年 償却差額40万円
初年度 30×70%+40-25=36 ×0.917
2年度 70×70%+40-15=74 ×0.842
3-9年度 70×70%+40=89 ×5.033×0.842
9年度運転資本戻 40 ×0.460
初期投資 -540+103=△437
計53.88万 投資する
(設問3)
期待値に毎年のCFを直して計算すればいいか、投資時期を上の考えにしていたので、見直して最後に調査費の30万円を引きました
(間違えるにしても税引のため70%かけて21万円引くべきだった)
また途中転記をミスっています。
(a) △16.72 万円
(b) 実行すべきで ない
(c) 営業利益期待値
CF初年度30×(60%+40%×0.7)=26.4、CF26.4×70%+40-25=33.4
2年以降 70×(60%+40%×0.7)=61.6CF2年61.6×70%+40-15=58.12
CF3年から9年 61.6×70%+40=83.12
9年のみ +40
△437+33.48×0.917+58.12×0.842+83.12×5.073×0.842+40×0.46
=13.28297232 ∴13.28万
13.28-30=△16.72万円
(30万円引く前で65分、15分の見直しで30万円を後から引いて 実行すべきであるをすべきでないに変えました…今考えるともったいなかった)
☆この設問の配点は相当小さかったと推測します。
最後に事例Ⅳの総括ですが、
事例Ⅳは「数学でも会計学でもない。事例Ⅳという試験である。」
得点開示を受けて、再現答案をみると与件文から課題を抽出することの大切さを改めて感じております。
以上 わたしの再現答案事例Ⅳでした。