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【おくと】第6回:わたしの再現答案リアル解説(R06事例Ⅳ 66点)

本日解説するわたしの再現答案はこちらです(R06年度事例4 66点) おくと

こんにちは、おくとです。

全13回シリーズの第6回目となる今回は、事例Ⅳの再現答案について詳しく解説していきます。事例Ⅳは「計算ありき」の科目だけに、本番での緊張やプレッシャーの中で正確に解答するのは本当に大変ですよね。私自身、この事例では計算ミスに泣かされた部分もあり、振り返ってみると反省点も多くあります。でも、だからこそ皆さんに共有できる学びがあると思っています。

それでは、設問ごとに解答プロセスと反省点を率直にお話ししていきます。

第1問:経営分析

設問1
[設問文]
D社および同業他社の財務諸表を用いて経営分析を行い、同業他社と比較してD社が優れていると考えられる財務指標を1つ、劣っていると考えられる財務指標を2つ取り上げ、それぞれについて、名称を(a)欄に、その値を(b)欄に記入せよ。解答にあたっては、①の欄に優れていると考えられる指標を、②、③の欄に劣っていると考えられる指標を記入すること。なお、(b)欄の値については、小数第3位を四捨五入し、小数第2位まで表示すること。また、(b)欄のカッコ内に単位を明記すること。
[解答]
①(a)有形固定資産回転率 (b)11.26回
②(a)売上高総利益率 (b)59.01%
③(a)自己資本比率 (b)14.15%

この設問では、与件文第6段落の「製品開発から生産、加工、販売に至る一貫体制」という記述から、D社の設備活用の効率性に着目しました。有形固定資産回転率の高さは、まさにこの一貫体制による設備の有効活用を表していると判断しました。
一方で劣っている指標として、売上高総利益率と自己資本比率を選択。前者は与件文第5段落の「売上の減少」の影響、後者は安全性の観点から長期借入金の多さが気になったためです。
振り返ってみても大きく外してはいなさそうで、計算も正確にできていたと思います。

設問2
[設問文]
D社の当期の財政状態および経営成績について、同業他社と比較した場合の特徴を80字以内で述べよ。
[解答]
製品開発から販売の一貫体制で効率性が高いが、その構築・維持のためのコストや飲食事業の競争激化、加工事業の売上減少で収益性が低い。また、長期借入金で安全性が低い。

ここでは与件文の複数箇所を参照しながら、D社の両面性を表現することを意識しました。具体的には第2段落の競争環境、第5段落の売上の減少、第6段落の一貫体制とそのコストについて触れています。
80字という制限の中で、効率性と安全性の両面から特徴を整理できたのは良かったと思います。

第2問:CVP分析・線形計画法

現在D社の加工事業部は、自社工場で製造した唐揚げの一部を得意先向けの業務用冷凍食品として販売している。当期における当該業務用冷凍食品の製造に関するデータは以下のとおりである。次期においても、販売価格を除き、これらのデータに変動はないと予想されている。
1袋当たり販売価格 3,300円
1袋当たり変動費 1,780円
固定費 5,600,000円
1袋当たり直接作業時間 1時間
1袋当たり機械運転時間 2時間
次期において、当該業務用冷凍食品の製造に割り当てが可能な直接作業時間は最大10,000時間、機械運転時間は最大13,600時間である。

設問1
[設問文]
取引先のX社から次期に最大6,500袋を購入したいという引き合いがあった。ただし、販売価格3,000円での納入を打診されている。D社としては加工事業のテコ入れを検討しているという事情もあり、引き受けを検討している。一方で、新たにY社からも、次期に最大4,200袋を購入したいという引き合いがあった。ただし、タレで味付けするなどの追加加工を行った上で、4,800円で納入することを打診されている。
なお、追加加工は現有の設備で可能であり、新規の設備投資は必要ない。追加加工に必要な1袋当たりの原価などのデータは以下のとおりである。
1袋当たり変動費 1,600円
1袋当たり直接作業時間 1.5時間
1袋当たり機械運転時間 0.5時間
X社およびY社と交渉したところ、両社とも注文数量の調整に応じてくれることが分かった。次期の営業利益を最大化するための生産数量と、そのときの営業利益の額を答えよ。
解答にあたっては、X社向けの生産数量を(a)欄に、Y社向けの生産数量を(b)欄に、それぞれ記入すること。また、営業利益の額は(C)欄に記入するとともに、計算過程を(d)欄に示すこと。
[解答]
(a)6,500(袋)
(b)240(袋)
(c)2,670,800(円)
(d) X社 Y社
1袋当たり販売価格 3000 4800
1袋当たり変動費 1780 3380
固定費 5600000
1袋当たり直接作業時間 1 2.5
1袋当たり機械運転時間 2 2.5
X社向けの生産数量をx、y社向けの生産数量をyと置くと条件より、x≦6500、y≦4200、x+2.5y≦10000、2x+2.5y≦13600
ここで営業利益が最大になる組み合わせは
(x、y)=(6500、240)
よって営業利益は
(3000-1780)・6500+(4800-3380)・240-5600000=2670800

計算過程では、X社向けの生産数量をx、Y社向けの生産数量をyと置いて制約条件を整理しました。
線形計画法の基本に従って、制約条件の交点を確認し、目的関数(営業利益)が最大となる組み合わせを求めました。この設問については、計算も正確にできて安心しました。

設問2
[設問文]
Y社から、最低でも2,400袋以上購入することを希望しており、また販売価格の引き上げについては交渉に応じる旨の連絡があった。なおD社は、設定した販売価格の下で営業利益を最大化するように生産数量を決定するという方針をとっている。生産数量についてのY社の希望に応じるためには、Y社向けの製品の販売価格を何円以上に設定すればよいか。
解答にあたっては、販売価格を(a)欄に記入するとともに、計算過程を(b)欄に示すこと。
[解答]
(a)4895(円)
(b)条件より、x≦6500、y≦4200、x+2.5y≦10000、2x+2.5y≦13600、y≧2400
この時、営業利益が最大になる組み合わせは(x、y)=(3800、2400)
販売価格をxと置くと
1220・3800+(x-3380)・2400-5600000>2670800
2400x>-4636000+8112000+5600000+2670800
x>4,894.5
∴4895円以上
+グラフ

ここで計算ミスをしてしまいました。正しくは以下のようになるはずでした。
制約条件より、営業利益が最大になる組み合わせは(x、y)=(3,600、2,560)または(x、y)=(6,500、240)となります。Y社の売値をPとすると、この2つのパターンで営業利益が等しくなる価格を求める必要があります。
パターンA:3,600×1,220+2,560×(P-3,380)
パターンB:6,500×1,220+240×(P-3,380)
A=Bとなる価格は4,905円となり、これが答えでした。
試験本番の緊張の中で、制約条件の変化に伴う最適解の変化を正確に把握しきれませんでした。線形計画法では、制約条件が追加されると実行可能領域が変わり、最適解も変わることがあります。この基本原則を頭では理解していても、時間に追われる中で正確に適用できなかったのが反省点です。
このような問題では、グラフを描いて視覚的に実行可能領域を確認することをお勧めします。私も計算過程でグラフを描いていましたが、制約条件追加後の領域変化をもう少し慎重に確認すべきでした。
ただ、計算結果が4,895円と正解の4,905円にかなり近い値だったので、アプローチ自体は間違っていなかったと思います。部分点はもらえているはずです。

第3問:設備投資意思決定

 D 社は、今後の出店エリアの拡大を見据え、これまで使用してきた鶏肉のスライス加工のための機械を、新型のスライサー(以下、新機械)に更新することで、これまで一部手作業に依存していたスライス加工の省力化を図るとともに、生産能力を増強したいと考えている。このため、全面的な設備の更新に先立って、新機械を試験的に1台導入した場合の採算について検討している。
 現在使用しているスライサー(以下、旧機械)は3年前に240万円で購入し、定額法(耐用年数12年、残存価額ゼロ)で減価償却している。従来は耐用年数経過後、処分価額ゼロで除却する予定であった。更新にあたり、旧機械は中古機械として70万円で売却できると見込まれている。
 一方、導入を検討している新機械は、価格が540万円であり、定額法(耐用年数9年、残存価額ゼロ)で減価償却する予定である。耐用年数経過後は、処分価額ゼロで除却することが予定されている。なお、新機械の導入により、生産能力は増強される。そのため営業利益は、初年度は更新前と比べて30万円多くなり、それ以降は各年度
とも更新前と比べて70万円多い額になると予想されている。また、それに伴い、各年度末における運転資本の残高は更新前と比べて初年度は25万円多くなり、それ以降は更新前と比べて40万円多い額になると予想される。ただし、耐用年数経過後の運転資本の残高は、新機械を導入する前の水準に戻るものとする。
 なお、法人税等の税率は30%であり、今後9年間は赤字に転落することはないと
予想される。また、新機械への初期投資と旧機械の売却収入以外のキャッシュフロー
は、各年度末に生じるものとする

設問1
[設問文]
初年度および2年度のキャッシュフローの更新前と比べた増加額(初期投資と旧機械の売却収入を除く)を計算せよ。解答にあたっては、初年度の増加額を(a)欄に、2年度の増加額を(b)欄に、それぞれ記入すること。
[解答]
(a)33(万円)
(b)50.5(万円)

この問題で重要なのは、営業利益の増加、減価償却費の増加による節税効果、運転資本の増加を適切に考慮することです。
正しい計算は以下の通りでした
減価償却費の増加:新機械60万円-旧機械20万円=40万円
売却損の節税効果:(簿価180万円-売却価格70万円)×30%=33万円
初年度:営業利益増加30万円×0.7+減価償却増加40万円×0.3+売却損節税33万円-運転資本増加25万円=69万円
2年度:営業利益増加70万円×0.7+40万円×0.3-運転資本増加15万円=74万円
私の解答では33万円、50.5万円となっていますが、これは計算過程で見落としがあったようです。

設問2
[設問文]
この新機械の試験的導入における正味現在価値を計算せよ。ただし、資本コストは9%とする。利子率9%のときの複利現価係数と年金現価係数は以下のとおりである。解答は小数第3位を四捨五入し、小数第2位まで表示すること。なお、正味現在価値を(a)欄に記入し、計算過程を(b)欄に示すこと。
      1年  2年  7年  9年
複利現価係数 0.917 0.842 0.547 0.460
      7年
年金現価係数 5.033
[解答]
(a)白紙
(b)旧機械の減価償却費/年:240÷12=20
新機械の減価償却費/年:540÷9=60
-540+33×0.917+50.5×0.842+

設問3
[設問文]
D社は、営業利益の予測が正しいかどうかを探るため、初年度期首に30万円をかけて市場調査を行った。その結果、営業利益は60%の確率で予測どおりとなるが、40%の確率で価格競争の激化により予測の7割にとどまることが分かった。
なお、営業利益が減少する場合でも、運転資本の残高に関する予測に変化はない。
このとき、新機械の試験的導入を実行すべきかどうか、正味現在価値を示して答えよ。正味現在価値は(a)欄に、小数第3位を四捨五入し、小数第2位まで表示するとともに、(b)欄のカッコ内の「ある」か「ない」に〇印を付して答えること。また、(C)欄に計算過程を示すこと。
[解答]
(a)空欄
(b)ある
(c)正味現在価値が正のため実行すべきである。

設問2のNPV計算は途中で時間切れになってしまい、設問3も完全には解答できませんでした。事例Ⅳでは計算量が多いため、時間配分が極めて重要です。私は前半の設問に時間をかけすぎて、後半で時間が足りなくなってしまいました。特にNPVのような複雑な計算については、途中式を整理しながら効率的に進める必要があったと痛感しています。
設問3の期待値計算まで含めると、第3問だけで30分程度は必要でした。全体で80分の試験時間を考えると、1問あたり20分程度に抑える必要があります。普段の練習でも、この時間感覚を身につけることが重要です。

第4問:管理会計・事業部制

設問1
[設問文]
D社が採用しているこのような価格の設定方法には、事業部の業績評価を行う上でどのような問題点があるのか、80字以内で説明せよ。
[解答]
製品単位当たりの全部原価に加工事業部の個別固定費が含まれており、精緻な業績評価にならないことが問題点である。個別固定費が含まれないような原価に改善すべきである。

設問1については、改めて考えてみると少しズレていた気がします。全部原価に個別固定費が含まれること自体が問題なのではなく、むしろ事業部間で適切に原価を負担し合うことが重要です。個別固定費を除外すると利益率が高くなってしまい、加工事業部が本来負担すべき原価を他の事業部に転嫁することになりかねません。

設問2
[設問文]
このような場合、財務指標を用いて事業部長の業績評価を行うときに留意すべき点を、60字以内で説明せよ。
[解答]
事業部長が管理不能な設備等に関する固定費を含めると精緻にならないため、管理可能な貢献利益を用いて評価するよう留意すべき。

設問2も「管理可能な貢献利益」ではなく「管理可能利益」の方が適切だったかもしれません。

おわりに

事例Ⅳを振り返ってみると、計算ミスと時間配分の難しさを痛感した科目でした。第2問設問2では4,895円と4,905円という僅差で惜しい結果でしたし、第3問では時間不足で完答できませんでした。でも、こうした経験も含めて皆さんの学習に役立てていただければと思います。
事例Ⅳで特に大切なのは、完璧を目指すよりも部分点を確実に積み重ねていく戦略です。私のように計算ミスをしても、アプローチが正しければ部分点はもらえる可能性が高いです。普段の練習では見直しの時間を確保し、本番では冷静に制約条件を整理することを心がけてください。
次回以降は、具体的な勉強法などついて解説していく予定です。もしよろしければまた読んでいただけるとうれしいです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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