本日解説するわたしの再現答案はこちらです(R06年度事例3 60点) おくと
こんにちは!今回はR06年度事例Ⅲの私の再現答案について解説していきます。
事例Ⅲは製造業の生産管理や工程改善がテーマとなる事例で、毎年多くの受験生が苦戦する分野です。私自身も本番では時間配分に苦労し、思うような回答ができなかった部分もありました。そんな失敗談も含めて、リアルな解説をお届けします。
第1問:C社の強みの整理
[設問文]C社の強みを 80字以内で述べよ。 [解答]強みは①C社社長の工場設備レイアウト設計の経験②それに基づく搬送機能についての有効な提案③NC 加工機④設計要員や製造要員等の技術者⑤営業・設計部のIT利用である。
与件文からは以下を参照しつつ、①と②は第4,5問での事業展開、④は第2問の工程改善といったように、後の設問との接着を意識して記載しました。
ただし振り返ってみると、⑤のIT利用は加点に繋がっている可能性が低く、別の強みの方が適切だったのではないかという反省があります。強みの抽出では、後の設問で活用される要素を優先的に選択することが重要だと改めて感じました。
・第4段落:C社社長の工場設備レイアウト設計の経験
・第5段落:C社社長の搬送機能についての有効な提案
・第6段落:NC加工機、設計要員や製造要員などの技術者
・第8,9段落:設計・営業部の受注管理システム利用
第2問:生産能力向上のための工程改善
[設問文] コロナ禍以降増加傾向にある受注量に対応するため、C社製造部では工程改善によって生産能力の向上を図る検討を進めている。どのように工程改善を進めるべきか、100字以内で助言せよ。
[解答] 工程改善を①製作図面・部品構成表をDB化、全社に共有し②生産計画を全社化・短サイクル化③製缶工程を中心にOJT等し④製造要員を教育して多能工化させることで進める。以上で負荷平準、生産能力を向上を図る。
与件文からは以下を参照しつつ、第3問との違いを意識して、ここでは「工程改善」に焦点を当てて記載しました。
③④のOJTや多能工化による負荷平準化は適切だったと思いますが、①②のDB化や生産計画の全社化については、この問題の論点として的確だったか疑問が残ります。もう少し他の論点に重点を置くべきだったかもしれません。
・第6段落:製造要因
・第9段落:製品仕様書および製品図面に基づいて部品構成表を作成
・第12段落:大日程計画を策定
・第15段落:製缶工程(製缶課)の残業や休日出勤
第3問:工程管理業務の改善
[設問文] C社では、受注量の増加や納期短縮要請などの影響で製造部の工程管理が混乱している。どのように工程管理業務を改善するべきか、その進め方を 100字以内で助言せよ。
[解答] 進め方は①生産計画を全社化②それの短サイクル化③それに基づく各作業の工数見積もり作成の標準化④作業進捗状況等の情報のDB化、全社共有により生産統制を徹底する。以上で受注量の増加、短納期要請に対応する。
この設問では以下の与件文を参照しつつ、製造部の工程管理の改善に焦点を当てて解答しました。
ただ、③の工数見積もり標準化は適切だったと思いますが、①②については第2問と重複する内容となってしまい、加点されているか疑問です。
むしろ、IT利用による変更の即時共有や統制の強化といった論点を盛り込んだ方が良かったと感じています。工程管理の混乱という課題に対して、より直接的な解決策を提示すべきでした。
・第12段落:大日程計画を策定
・第13段落:作業進捗状況の確認、各作業の工数見積もり
第4問:価格交渉を円滑にする事前対策
[設問文] C社の顧客企業との契約金額は、最近の材料費や人件費の高騰に対応した見直しは行われているものの、現状のコスト高には対応できていない。今後、顧客企業と価格交渉を円滑に行うための社内の事前対策を120字以内で助言せよ。
[解答] 対策は①過去に製造した機器の契約金額や材料費等の情報を標準化・DB化して全員が引き出せるようにし②C社社長の提案力や技術力等の強みを活かして高付加価値化③それらを訴求できる営業部の交渉力を教育で向上させることで納得感を高め、交渉を円滑化する。
この設問では以下の与件文を参照して、顧客企業と価格交渉を円滑に行うことを図る形で記載しました。
ただ、改めて見直すと、①については「全員が引き出せるようにして正確な金額見積もりに繋げる」というところまで明記すべきでした。また、②の高付加価値化については問題の趣旨からやや外れてしまったのではないかと反省しています。
価格交渉の円滑化という観点では、コスト構造の可視化や根拠のある価格提示により顧客の納得を得るという流れをより明確に示すべきでした。
・第5段落:C社社長の搬送機能についての有効な提案
・第6段落:設計要員や製造要員などの技術者
・第8段落:価格交渉、材料費、最終契約金額
第5問:新事業展開の推進方法
[設問文] C社社長は、小規模の工場施設や物流施設の新設や更新を計画している企業と直接契約し、自社企画の製品を設計、製造することで事業を拡大したいと考えている。この新しい事業展開を成功させるにはどのように推進するべきか、120字以内で助言せよ。
[解答]①営業部の顧客ニーズ収集力を教育で高め②そのニーズや社長の提案に沿った設計ができるよう採用・教育で設計力を高め③その自社製品のデータを一元管理、全社的に共有し、営業・設計・製造の同時進行化を図り、生産性向上、高付加価値化、新事業展開する。
この設問では以下の与件文を参照しました。
ただ、①②の能力向上は適切だったものの、③については優先度の高い論点があったかもしれません。
例えば、ニーズ収集や企画により近い論点、または営業部の余力を生み出すためにメンテナンス業務を切り離すといった施策も考えられました。新事業展開という大きな変化に対して、より戦略的な視点からの提案が求められていたのかもしれません。
・第4段落:工場レイアウト設計を担当
・第5段落:C社社長の搬送機能についての有効な提案
おわりに
事例Ⅲは製造業特有の専門用語や概念が多く、普段馴染みのない方には難しい事例だったと思います。私自身も本番では時間に追われながらの解答となり、各設問間の整合性や論点の深掘りが不十分だった部分が多々ありました。
特に工程改善と工程管理の違いを明確に区別できていなかったり、新事業展開における優先順位付けが甘かったりと、反省点も多い解答でした。それでも、与件文の根拠を基に一定の論理性を保った解答ができていたのは良かったと思います。
次回は事例Ⅳの解説をお届けする予定です。財務・会計の計算問題に四苦八苦した体験談も含めて、リアルな解説をしていきますので、ぜひお読みいただければと思います!