言い回し(フレーズ)集を使った学習の罠

こんにちは。
典茶漬け@在宅勤務期間中です。

2次試験に臨む受験生の中には、答案に「何を書くか」よりも「どう書くか」に自信がない、という方もいらっしゃるかもしれません。

かくゆう私がそうでした。
多年度生として、定番の切り口や骨子をたっぷり学んだ後になっても、

「骨子ができたあと、文章の肉付けに時間がかかる」

「もっと的確な言い回しがあると思うのだけど、出てこない」

「文字数調整のため、言い回しを替えて何度も書き直す」

など、「書き方」の悩みをかかえていた時期が、受験生時代の大半を占めていました。

内容(中身)が問われる試験だとはいえ、文章がスムーズに書けるかどうかは、試験中の集中力維持や解答スピードに影響するため、結構切実な問題です。

そこで今回は、同じ悩みを持つ受験生のために、「書き方」をなんとかしようとする上での留意点を、自己の失敗談を踏まえて紹介します。

既成フレーズの丸暗記は、実戦で使えない

「手っ取り早く診断士っぽいスマートな文章で、答案を書けるようになりたい!」

そう考えた私がまず取り組んだのは、先輩受験生や勉強会などのブログと、様々な出処の模範解答から抜き出した、既成の言い回し(フレーズ)をひたすら覚えることでした。

ご存じの通りフレーズとは、2つ以上の単語・熟語および文節から成り立つ句で、2次試験事例1(組織人事)の答案で良く使われる例としては次のようなものが挙げられます。

”競争優位性を発揮する”
”一体感や使命感を共有する”
”成果に応じた透明で公平な評価制度を導入する”

合格年度以前の私は、このようなカッコイイ(?)フレーズを事例あたり120個以上は集めて、それを読み・唱え・書き写す、といった訓練をしていました。

確かにこの訓練は、試験特有の言い回しに慣れ、知っているフレーズの量を増やす、という点では役に立ったと思います。

しかし、試験や模試など本番さながらの状況ではほとんど役に立ちませんでした。
いざ新しい事例問題に向き合うと、苦労して覚えたはずのフレーズがちっとも出てこないのです。

そう、当時の私はすっかり失念していました。
語彙と同様にフレーズも、「知っていること」と「使えること」は別物だ、という事に・・・。

暗記しただけで自分で使ったこともないフレーズを、いきなり実戦で使えるわけがなかったのです。

フレーズは、何度も使うことで応用できるようになる

フレーズを沢山覚えても、実戦で使いこなせなければ無意味。
では使いこなす力、応用力を培うにはどうすれば良いのでしょうか。

残念ながら近道はなく、「とにかく使って場数を踏むしかない」、と思います。

幸い、試験で何度も出てくるようなフレーズの種類はそれほど多くないので、コツコツと過去問などをこなしていれば、いつか必ず重要なフレーズに触れ、そこで覚えることができます。

大事なのは、覚えたフレーズをこの先また同じ事例問題や別の問題で答案を作成する際に、積極的に使ってみることです。

そして必ず自分の答案をフィードバックします。

具体的には、使用したフレーズの妥当性(文脈を理解した上で正しく使えたか)を自己分析または評価を受けること、フレーズを使用できなかったのならその理由*を追究することです。
(*「因果に腹落ちしていない」、「フレーズに含まれる言葉の意味を理解していない」など)

骨の折れる作業ですが、これらの一連の作業の繰り返しによりフレーズが頭に浸み込み、必要に応じて引き出せるようになります。

非効率なフレーズ暗記で遠回りしてしまった身としては、受験生の皆さんに「フレーズ集を作る時間があったら、1回でもいいので使ってみて!」と強く訴えたい。

それでもやはりフレーズ集を手放せない方は、それを暗記用としてではなく、答案で使えたかどうかのチェックリストとして活用されてはいかがでしょうか。

フレーズへの頼りすぎは、弊害をもたらす

フレーズを使いこなして答案を速く楽に書けるようになるのは、自己の成長が感じられてモチベーションも上がるでしょう。

しかしここにもう一つ、さらに深刻な被害を及ぼす罠が潜んでいます。

耳障り良いフレーズの使用にこだわり過ぎると、採点上不利になることがあるのです。

実際、私は平成30年度試験の事例1で、設問に明らかな切り口のヒントがあったにも関わらず、思いついたフレーズをもとに解答してしまい、切り口完全外しの大事故を起こしました。

切り口や因果はあくまでも与件や設問から設定すべきところ、いつの間にかフレーズの知識を優先していたのです!

この苦い経験をふり返り、フレーズの使用で生じ得る弊害(リスク)を下記にまとめました。

フレーズ使用に伴うリスク

① 思考の幅が狭くなる
フレーズを当て嵌めたとたんにそれで満足してしまい、それ以上深く考えることを怠ってしまいがちです。その結果、与件や設問を吟味し、解答の方向性を多面的に考えるといった重要なプロセスが疎かに成り得ます。

② 与件活用力が低下する
重要な固有名詞や特有の表現(わざわざ表現)など、与件からそのまま抜き出して使うべきキーワードを、フレーズの平坦な言葉に置き換えてしまうことにより、加点され辛くなります。

③ 主述のねじれや因果不明確の原因となる

④ 不要ワード(非加点要素)が入る

⑤ 採点者に与件設問の読み込みが浅い印象を与える

もしあなたが何かフレーズに特化した学習をしているのなら、この機会にそれが本当に成績の伸びに繋がっているか、もしくは弊害になっていないか、客観的に振り返ってみてはいかがでしょうか。

特に「解答の方向性は間違ってないのに、なぜか点数が伸びない・・」という方は、要振り返りです。


 

「何を書くかはわかってるんだ、あとはどう書くかだけ!」

経験的に、そういう時は大抵「何を書くか(切り口、キーワード)」が間違っていました。
書き方が上達しても内容を間違えていたら話になりません。

フレーズは、書き方で悩む時間を減らし、より重要な「何を書くか」に費やす思考タイムを増やすためのツールと割り切り、それだけの訓練にあまり固執されませんように。

 

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