早くも7月になり、今回が1次試験前の最終投稿となります。
ということは・・・次回までに2次対策シーズン開始なので、重要なのに「なんか書けば点になる」とあまり語られない事例Ⅳの記述について令和3~5年度過去問を使って対処法を書いておこうと思います。
第2回のわたしの再現答案事例Ⅳでも書きましたが、会計知識だけではない与件意識の書き方が少しでも伝わればと思って書いています。
令和5年度 事例Ⅳ
第1問 経営分析から
財務諸表が2年比較なので、いつもの5項目①売上高総利益率②売上高営業利益率③棚卸資産回転率④有形固定資産回転率⑤自己資本比率に短期の安全性:当座比率を加える。 そこから改善1悪化2。
収益性
売上高総利益率 R3:62.29%→R4:61.66%×
売上高営業利益率R3:16.99%→R4:11.59%×× 悪化
効率性
棚卸資産回転率 R3:5.34回→R4:6.14回 〇
有形固定資産回転率 R3:89.82回→R4:71.90回×
ちょっと回転数多過ぎ=分母が小さすぎると効率性というより重要性が少ない可能性補強
固定資産回転率 R3:31.00回→R4:23.04回 × 悪化 こっちのほうがよさそう
第4問で試験研究があるため固定資産回転のほうがいい
安全性
自己資本比率 R3:69.48% →R4:77.56%〇 よいが当期利益が増えただけかも
当座比率 R3:197.22% →R4:311.97%〇 改善2期間比較で短期安全性が優勢
各段落要約します(線引きでもよい)
1 D社 資本金1億、総資産30億、売上高45億、従業員31名。化粧品製造20年。基礎化粧品サプリメントを企画開発販売。製造はOEM生産。
2 大都市圏の顧客。 卸通さず、百貨店ドラッグストアに直接卸。自社ECサイトで美容液の定期販売。
3 実店舗、ネットとも他社と競争激化。 売上低迷。今後、輸送コスト高騰、原材料仕入原価上昇。しかし、今後のため人件費等を削減しない。→売上高営業利益率×の理由。
4 基礎化粧品はライフサイクル長いゆえ、新製品開発の必要性は低い。
しかし、近年他のメーカーは新製品を市場に投入し競争が激化。
顧客ニーズは健康志向、アンチエイジング志向。 →開発に動く。課題?
5 D社 男性向けアンチエイジングに挑戦。バイオテクノロジーで基礎化粧品。 基礎研究の費用=営業利益率×
6 中長期的には市場の拡大が見込まれる。男性向けアンチエイジング製品は 画期的だが市場見通せず。
7 新製品は、OEMでなく自社生産。資金確保は進む。 →現預金化できており当座比率〇 改善
同業他社と競争激化で 設備投資の意思決定必要。
ここで悪化と改善の指標確定すると
悪化① 売上高営業利益率 3段落から
悪化② 固定資産回転率 6,7段落から
改善③ 当座比率 7段落 資金確保すすむ。(自己資本比率でもいいと思います)
(設問 2 ) 設問 1 で解答した悪化したと考えられる 2 つの財務指標のうちの 1 つを取り上げ、悪化した原因を 80 字以内で述べよ。
プロセス
段落3と5から拾える売上高営業利益率についてが書きやすい。
売上高は同業と競争が激化し下がるのに、将来を見据えて人員削減をしない方針で販管費下がらず。営業利益が減少。さらにバイオテクノロジーの基礎研究を進めていて販売費および一般管理費が増加。
解答例
売上高営業利益率の悪化原因は、①競争激化
により売上が低下したが人員削減しないため、
②男性向アンチエイジング製品開発の基礎研
究により一般管理費が増加したことである。
第2問(設問 3 ) D 社では、売上高を基準に共通費を製品別に配賦している。この会計処理の妥当性について、あなたの考えを 80 字以内で述べよ。
プロセス
直前の設問から
貢献利益がプラスにもかかわらず廃止したいという経営判断の誤りが誘発された。=妥当ではない。
なぜ妥当でない。
製品ごとの変動比率のばらつきが大きい=変動比率が大きい
限界利益率が低い製品の利益がマイナスになりやすい不公平が起こる。
さらに第4段落から
基礎研究とは無縁の既存製品に共通費に含まれてしまう。
解答例
妥当でない。理由は基礎研究が無縁の既存製
品に賦課される。限界利益率が低い製品に共
通費が過大配賦され、貢献利益が正でも営業
利益が負となり経営判断を誤らせやすいから。
第 4 問(設問 1)
D 社は、基礎化粧品などの企画・開発・販売に特化しており、OEM 生産によって委託先に製品の生産を委託している。OEM 生産の財務的利点について 50 字以内で述べよ。
プロセス
OEMとは生産設備持たない。他社の生産設備を活用する。→効率性は高まる。
設備資金調達不要で安全性も高まる。
多面性で効率性と安全性を考慮。
固定費少なく営業レバレッジ低いため、損益分岐点を低く抑え、安全性が高い経営が可能。
(字数的に最後までは入らないか)
解答例:
利点は、生産設備なく売上計上可能で、資産
効率性が高まる。投資資金調達が不要で固定
費低く安全性も高まる。
(設問 2 ) D 社が新たな製品分野として男性向けアンチエイジング製品を開発し販売することは、財務的にどのような利点があるかについて 50 字以内で述べよ。
プロセス
利点:設問1OEMの裏返し?→5、6段落で生産性高めたい方向性が見える。
自社のコアテクノロジーを、将来成長する男性向新市場に拡大。
→①経営リスク分散。結果として売上を確保しやすくなる。
②競争激化した市場で差別化が可能。付加価値を増大可能、生産性、収益性向上。
固定費が上がるメリット。レバレッジを利かせ売上が増えれば利益率を上げられる。
解答例
利点はノウハウ活用で新市場参入、リスク分
散で売上確保。差別化し付加価値と営業レバ
レッジ上げ収益性改善。
令和4年度事例Ⅳ
第1問 経営分析
生産性を少なくとも1つが独特
生産性=付加価値なので
付加価値 D45,279万円 他27,538万円
労働生産性 ×D854.32万円 他1197.30万円/人
付加価値率 〇D43.76% 他23.92%
一人当り売上高×D1952.17万円 他5006万円
(本音言うと第2問で製造原価中に労務費がいるんで、これも含めなきゃいかんですよね。ただし同業比較対象の労務費は不明なので計算できない。冷静に考えれば同じレベルの生産性を求められず没問。)
収益性
売上高総利益率 〇D 59.59% 他 31.78%
売上高営業利益率 〇D 14.50% 他 9.84%
生産性で付加価値出したので営業利益+人件費+減価償却とダブり選びにくい。
しいて言えば利益率は良いが生産性は低いで使えるか?
効率性
たな卸資産回転率 〇D23.70回 他21.73回
有形固定資産回転率×D6.12回 他13.72回
安全性
自己資本比率 ×D49.91% 他51.69%
各段落の要約
1 D社は中古タイヤ・アルミホイールの販売で創業。のち廃車・事故車引取。中古車パーツ販売・再生。 資本金1500万 売上10.3億
2地方都市の事業。環境問題対応Oから ビジネス拡大。海外や多角化 目指す。
3これまで 廃車から中古パーツ回収 リユース、リサイクル。日本車の中古車市場拡大
中古パーツ需要拡大。3Dプリンターでパーツ製造販売。
中古車買い取り 再整備して中古車販売事業に拡大。
4中古車販売、海外中古車市場だけでなく、抵抗感の低下によって国内市場も拡大。
同業他社も近年大きく業績を伸ばし。D 社は中古車市場が成長するものと予測。
中古車販売事業に進出
新たな収益源を確保、現在の中古パーツ販売にもプラスの相乗効果。
中古車販売事業に関して、当面は海外市場をメイン。将来的には国内市場への進出も。
5しかし 当面、海外市場を中心とすることや事業ノウハウが不足。リスクマネジメントが重要。
→これらを克服
6 D 社 53名、同業他社 23 名。
経営指標選択プロセス
生産性の選び方として「生産性に関する指標を少なくとも 1つ入れ」に注目=2つ入れてもよい。
優れに付加価値率43.76%、劣りに一人当たり1952.17万円 とすると次の記述が書きやすくなる。
残る優れのもう一つは、収益性より たな卸資産回転率23.70回としたい。
第4問の中古自動車販売業説明へ布石になるから。
(設問 2 )
D 社が同業他社と比べて明らかに劣っている点を指摘し、その要因について財務指標から読み取れる問題を 80 字以内で述べよ。
プロセス
劣っているのは付加価値労働生産性である。
分解すると、①付加価値率は高いが②一人当たり売上高が低いから。
その原因は人員が多いから。なぜ人員が多いかは3段落のパーツ回収整備に人手をかかる。
「労働集約的な事業」だから。
(第2問以降で、3Dプリンター導入や製品ミックス、中古車でこの課題克服する)
解答例
付加価値労働生産性が劣っている。要因は、
売上高付加価値率は高いが一人当たり売上高
が低いため。廃車パーツ回収、整備は人手が
かかる労働集約的な事業で人件費が嵩むため。
第4問
D 社が中古車販売事業を実行する際に考えられるリスクを財務的観点から 2 点指摘し、それらのマネジメントについて 100 字以内で助言せよ。
プロセス
2つのリスク
①事業説明の4段落より海外事業 →為替リスク
改善法:為替変動リスクをなくす中古車販売事業
②中古車を扱う 仕入れて売るビジネス。→在庫リスク とくに製品一つ一つの個性が強い事業。
改善法:滞留在庫をなくす、事業ノウハウ強化
解答例
①海外事業で外貨回収のため為替変動リスク
がある。売掛金で得た外貨のプットオプショ
ン購入や予約で為替変動リスクを減らす。②
中古車は個性の強い商品で在庫滞留リスクあ
り。現地ニーズに合う品揃えで滞留を減らす。
事例ⅠからⅢ同様に与件から読み取れるD社の経営課題の克服を意識して記述する。
令和3年度 事例Ⅳ
第1問の経営指標は優れ2課題2
収益性
売上高総利益率 〇D27.78%、他25.75%
売上高営業利益率 ×D0.32%、他2.01%
効率性
商品回転率 〇D25.79回、他21.04回
有形固定資産回転率〇D4.56回、他3.65回
安全性
自己資本比率×D19.85%、他74.21%
課題2つは確定。
1 D社 地方都市の食品スーパーマーケット。資本金4500万、従業員1200人。15店舗。創業90年以上。
「こだわり」 地元産、地元密着。 →固定客取込みと経営状況安定 =商品回転率優れる。
2000年代から 高齢化と人口減少。 競合の低価格・大量販売に苦戦。収益性圧迫される
2 レジ待ち解消でサービス向上。コロナ禍非接触型レジ。セミセルフレジ、フルセルフレジを導入。
→第2問や有形固定資産回転率
3 旧小学校をリノベーション 魚養殖
→第3問や有形固定資産回転率
4 スーパー+外食、ネット通販、移動販売に多角化スーパーとの親和性やシナジーを勘案。
移動販売は不採算。高齢化対応。
生活に必要な日用品販売トラックのキャパにあわせ品数絞るトラックは自己保有。
社員が運転配達。D社では移動販売事業への対処も経営課題。
→第4問や有形固定資産回転率
経営指標選定プロセス
×課題は自己資本比率を上げ魚養殖やレジ投資資金を確保。移動販売のシナジーや地元密着の理念で営業利益を向上させる。
〇総利益率はわずかであり収益は課題に挙げている。効率性2つはこだわり地元産で商品、トラックやレジ養殖投資で固定資産を推せる。
優れ① 商品回転率 25.79回 ②有形固定資産回転率 4.56回
課題①自己資本比率 19.85% ②売上高営業利益率 0.32%
(設問 2 )D 社の財務的特徴と課題について、同業他社と比較しながら財務指標から読み取れる点を 80 字以内で述べよ。
プロセス
特徴 商品回転率:1段落 地元産にこだわった商品で商品回転率よい。
有形固定資産回転率:1、2段落 自社ブランドやセルフレジなどで売上確保し固定資産の効率もよい。
課題 売上高営業利益率:4段落 の他の事業シナジーで収益性向上し、
自己資本回転率:2,3段落のレジや魚養殖に要する投資資金を賄う自己資本を蓄積する。
解答例
特徴は、地元密着の経営で地元産の品揃えや
設備投資で効率性が高い。課題は多角経営の
シナジーで採算を改善し、投資資金を賄う自
己資本を蓄積し安全性を高めることである。
第4問D 社は現在不採算事業となっている移動販売事業への対処として、当該事業を廃止しネット通販事業に一本化することを検討している。
(設問 1 )
移動販売事業をネット通販事業に一本化することによる短期的なメリットについて、財務指標をあげながら 40 字以内で述べよ。
(設問 2 )
D 社の経営者は移動販売事業を継続することが必ずしも企業価値を低下させるとは考えていない。その理由を推測して 40 字以内で述べよ。
設問1プロセス
自己保有のトラックを社員が運転。廃止すれば固定資産の減少で効率性は上がる。従業員の削減で収益性が向上。
解答例
メリットは自己保有トラックが減り固定資産
の効率性が向上。従業員削減で収益性が向上。
設問2プロセス
4段落で既存のスーパー事業と親和性やシナジーを期待しているから。
→地元密着サービスとして高齢者対応位置づけ。
効果は企業価値向上と与件に書いてある
解答例
地元密着サービスでスーパーの固定客が増え、
親和性やシナジーで企業価値向上するから。
このように、特に第1問の経営指標で浮き彫りにされた課題と第4問での解決。
設問間をすり合わせた解答を心がけるとよいと思う。
与件と設問から理由は拾えるので、決してなんか書けば点が入るポエムではないです。