本日解説するわたしの再現答案はこちらです(R06年度事例2 59点) おくと
こんにちは。今回は令和5年度事例Ⅱの私の再現答案について解説していきます。
全13回シリーズの第4回目となります。事例Ⅱはマーケティング戦略が中心となる事例ですが、今回はSWOT分析から新規事業提案、オムニチャネル戦略まで幅広い設問が出題されました。
第1問:SWOT分析による現状把握
[設問文]
B社の現状について、SWOT分析をせよ。各要素について①~④の解答欄にそれぞれ40字以内で説明すること。[解答①強み(S)]
①自社店舗②カフェスペース③3代目のセンス・提案力・企画力④自社のECサイト。 [解答②弱み(W)]
①X焼への依存②X焼に関する社会全般への情報発信が弱い③X焼が安くないこと。 [解答③機会(O)]
①X市の郷土料理②それを自宅で再現したい問い合わせ③驚きや感動のコメント④祭り。 [解答④脅威(T)]
①窯元当たりの陶工の減少②産地問屋の減少による販路の縮小③同じような陶磁器の増加。
与件文からは時制に注意して以下を参照しつつ、各設問への接着を意識して構成しました。強みの①②は第4問、③は第3・4問、④は第4問へと繋がる要素として記載し、弱みの③は第3問、機会の①②③は第2問、脅威の②は第2・3・4問、③は第2問へそれぞれ活用していく戦略で臨みました。
・第2段落:B社の取扱商品のほとんどがX焼
・第4段落:陶工が一窯元当たり1〜2人と零細
・第6段落:安価な外国製陶磁器の輸入が増加
・第7段落:X焼に関する社会全般への情報発信の滞り、陶磁器祭り、販路が細っている
・第9段落:提案力、企画力
・第10段落:郷土料理、自宅で再現したいという問い合わせ、驚きや感動を表すコメント
・第11段落:自社店舗、カフェスペース、センス、ECサイト
第2問:ふるさと納税返礼品の企画提案
[設問文]
X市は、ふるさと納税の返礼品としてX焼を活用したいと考えている。現在でも市の返礼品の中にX焼はあるが、全国の返礼品の中で埋もれている状態にある。3代目は、X市から「返礼品の中でもっと目立ち、市とX焼のファンを増やすような返礼品の企画を考えてほしい」と依頼を受けた。ブランド価値構造のうち、消費者にもたらす感覚価値と観念価値を意識して、返礼品の企画を100字以内で提案せよ。 [解答]
納税者に対し、B社オリジナルの陶磁器とX市の郷土料理の食材、レシピをセットで返礼する。X市でしか味わえなかった美味しさという感覚価値を自宅でも感じてもらい、市とX焼への愛着を高め、観念価値を生み出す。
与件文からは以下を参照しつつ、感覚価値と観念価値への理解をアピールすることを意識しました。ただし、振り返ると、X焼の歴史的背景などを訴求して市とX焼への愛着を高めるという書き方の方が、より観念価値を明確に表現できたのではないかという反省点があります。
・第10段落:B社オリジナルの陶磁器、郷土料理
第3問:食器愛好家向け新規事業の提案
[設問文]
X焼には窯それぞれの魅力があるため、3代目は、消費者がいろいろな窯の陶磁器を手にとれる機会をつくりたいと思っている。しかし、陶磁器祭りで接客をしていると、「あれもこれも欲しいが、家にはもうたくさんの食器がある。収納スペースがないし、今あるものも捨てられない」と購入をためらう食器愛好家の声をよく耳にする。3代目は、自社や窯の事業機会拡大を図る一方、こうした食器愛好家のニーズを充足する新規事業を手がけたいと考えている。どのような事業内容にすべきか、100字以内で提案せよ。 [解答]
購入をためらう食器愛好家に対し、食器の下取り、中古販売を行う。この際、3代目の提案力を活かして顧客ニーズに沿った様々な陶磁器を提供し、ニーズ対応して、愛顧向上、関係性強化、事業・売上拡大を図る。
この設問では以下の与件文を参照しつつ、提案力という強みを活用し、食器愛好家の具体的なニーズに対応する事業を提案しました。ただし、下取りや中古販売では、下取りの時点で消費者が欲しいX焼を入手できるとは限らないため、この整合性についてもう少し深く考える必要があったと反省しています。
・第9段落:提案力
第4問:オムニチャネル戦略の構築
[設問文]
ECサイトの新規顧客は増えたが、3代目は顧客の顔を直接見ながら販売できない寂しさも感じ始めた。3代目は、今後は、X市の窯元で開く店舗とECサイトの両方を利用する顧客を増やしていきたいと考えるようになった。B社にはどのような施策が必要か、150字以内で具体的に提案せよ。 [解答]
ECサイトの新規顧客や食器への盛り付け方に関心がある若者や海外の人々に対し、カフェスペースで盛り付けにこだわった食事をそれに合う食器で提供する。この際、積極的にコミュニケーションをとり、実際に使ってみて気に入ったものは自社店舗とECサイトどちらでも購入可能にし、愛顧向上、顧客獲得、売上向上を図る。
この設問では以下の与件文を参照して、それらを組み合わせて記載しました。ただし、改めて見ると、店舗からECサイトへの動線は描けているものの、ECサイトから店舗への動線が不十分だったため、この要素も含めるべきだったと思います。
・第9段落:料理内容に合わせた色や形の食器を提案
・第10段落:おいしそうに見える食器への盛り付け方を紹介
・第11段落:カフェスペース、自社店舗、ECサイト
おわりに
事例Ⅱは顧客との接点が多様化する現代において、非常に実践的な内容が問われる事例でした。SWOT分析を起点として各設問への接着を図りつつ、ブランド価値の理解、新規事業の創出、オムニチャネル戦略の構築と、マーケティングの全体像を俯瞰する力が求められたと感じています。
特に今回は、与件文の情報を単に抽出するだけでなく、それらを組み合わせて新たな価値提案を行う創造性が重要だったと振り返っています。一方で、各設問における論理的整合性の確保や、より深い戦略的思考の必要性も痛感しました。
次回は事例Ⅲの解説となりますが、引き続きこのシリーズをお読みいただければと思います。皆様の学習の一助となれば幸いです。引き続きよろしくお願いします!