本日解説するわたしの再現答案はこちらです(R06年度事例3 56点) あおたろ
こんにちは、あおたろです。
今回は令和6年事例Ⅲの再現答案解説です。
事例Ⅲは56点のB評価でした。
なぜA評価に至らなかったのか、その要因を自分なりに分析したいと思います。
一方で、事例Ⅰ~Ⅳの中で、私が最も実力を伸ばすことができたのも事例Ⅲです。
得点推移としては、令和5年が44点、令和6年が56点でした。
得点を12点伸ばすことができた要因についても書きたいと思いますので、事例Ⅲで伸び悩んでいる方はぜひお読みいただけると幸いです。
第1問(配点20点)
C 社の強みを 80 字以内で述べよ。
再現答案
①社長の搬送機器を含む工場設備レイアウト設計経験や生産性向上の提案力。②設計から組立まで対応できる一貫生産体制。③搬送機器生産を国内に移管しており、納品が安定。
解説
強みを問われていますので、与件文のキーワードを忠実に拾うことを意識しました。
また、事例Ⅲにおいては、SWOTを問われる第1問と、事業展開について問われる第5問との設問構造上のリンクを意識し、「強みを活かして機会を捉える」解答が求められます。
しかし、第5問の解答は、③で挙げた「安定した納品」を盛り込めていませんので反省すべき点だと思います。
他の方の解答を見ると、「メンテナンス対応」や「X社との関係性」を強みとして捉えているケースがあります。
意見が割れるところだと思いますが、私はこの2つはネガティブな要素として解釈しました。
この2つについては第4問、第5問で詳しく解説します。
第2問(配点20点)
コロナ禍以降増加傾向にある受注量に対応するため、C 社製造部では工程改善によって生産能力の向上を図る検討を進めている。どのように工程改善を進めるべきか、100 字以内で助言せよ。
再現答案
①ラインバランシングにより工程間の負荷を平準化し、前工程の仕掛品増加を減らし、後工程の手待ちを減らす、②多能工化を図り、多工程持ちを育成し、工程間の応援体制構築、以上の工程改善を進め、生産性を上げる。
解説
私が事例Ⅲを苦手としていた要因の1つは、設問の切り分けが上手くできなかったことでした。
設問の切り分けに迷わなくなったのは、「問われているのは現場のことなのか、それとも管理のことなのか」という視点を持つようになってからです。
現場に関する問いであれば、工程分析、標準化、マニュアル化、多能工化などが解答の候補になり、管理に関する問いであれば、生産計画、生産統制(現品、余力、進捗)などが該当します。
第2問で問われているのは「現場」のことです。
解答を振り返ると、キーワードはそれらしきものにはなっているようには見えますが、得点はあまり伸びていないのではないかと思われます。
①でラインバランシングについて言及していますが、後半の「前工程の仕掛品増加を~」の部分は冗長な気がします。
②は、多能工化を図る前の段階で何をすべきかを言及すれば、得点が伸ばせたのではないかと反省しています。
多能工を育成するためには、教育が必要になります。
教育のためにはマニュアルが必要で、マニュアルを作るためには標準化が必要です。
そして、標準化を図るためには、現在の工程を分析する必要があります。
つまり、工程分析→標準化→マニュアル化→OJT→多能工化という黄金の流れを解答に盛り込むことで、加点が期待できたはずです。
第3問(配点20点)
C 社では、受注量の増加や納期短縮要請などの影響で製造部の工程管理が混乱している。どのように工程管理業務を改善するべきか、その進め方を 100 字以内で助言せよ。
再現答案
①日次日程計画を作成し、設計変更や納期変更を迅速に反映させる、②生産計画、生産統制をIT化し、一元管理し、全社共有する、③各作業の工数見積を実績を基に作成し標準化、以上により混乱をなくし、納期を短縮。
解説
第2問が「現場」のことを問われていたのに対し、第3問は「管理」のことが問われています。
第3問に関しては、全5問の中で比較的よく書けてたと感じています。
与件文と紐づけて説明すると、①は「顧客からの設計変更や納期変更」に対応するために生産計画の短サイクル化に言及しています。
②は「週 1 回週末に開催される生産会議」で実施している進捗確認を、IT化によりリアルタイムに全社的に把握できるようにし、混乱防止につなげています。
③は、「製造部各課長の経験を基に作成されている」という属人的な工数見積を実績ベースにすることで、納期短縮につなげています。
第4問(配点20点)
C 社の顧客企業との契約金額は、最近の材料費や人件費の高騰に対応した見直しは行われているものの、現状のコスト高には対応できていない。今後、顧客企業と価格交渉を円滑に行うための社内の事前対策を 120 字以内で助言せよ。
再現答案
営業面では①据付後のメンテナンス費用を見積もりに含める、②営業に設計担当者が同行し、設計変更による手戻りを防止する。製造面では、ラインバランシングや多工程持ち育成により製缶工程の負荷を減らし、残業や休日出勤を減らす。以上でコスト削減を図る。
解説
おそらくこの問題が最も得点できていないのではないでしょうか。
「価格交渉」というこれまで問われたことのない論点だったので、試験中は何を書くべきかが頭の中でまとまりませんでした。
今になって振り返れば、与件分の「過去に製造した搬送機器の契約金額を参考に、営業部員が材料費と社内加工費、その他の経費を合計して算出し、最終契約金額も含め営業部長が決裁している。」といった部分などを根拠にして、解答を組み立てるべきだったとわかります。
試験中の思考プロセスとしては、まずは、営業面と製造面の2つの切り口で解答しようと決めました。
まず営業面ですが、第1問の解説でも言及した通り、私は「メンテナンス対応」はネガティブな要素として解釈しました。
その根拠は、与件文の最後の一文に「据付後のメンテナンスについては顧客企業が行うが、X 社の場合はC 社の営業部が担当している。」と書いてある点です。
なぜ、X社の場合のみC社がメンテナンスをしているのでしょう。
与件文にもある通り、C社は受注金額の6割をX社に依存しています。
C社がメンテナンスをしている理由は、X社の買い手の交渉力の高さにあるのではないかと考えました。
つまり、X社にやらされていると考え、その結果、「メンテナンス費用を見積もりに含める」という解答に至りました。
製造面からは、第2問の解答と重複しますが、ラインバランシングによる残業削減について言及しています。
顧客との価格交渉も当然大事ですが、その前に、工程のムダから生じる残業代の抑制が先だろうと考えました。
第5問(配点20点)
C 社社長は、小規模の工場施設や物流施設の新設や更新を計画している企業と直接契約し、自社企画の製品を設計、製造することで事業を拡大したいと考えている。この新しい事業展開を成功させるにはどのように推進するべきか、120 字以内で助言せよ。
再現答案
①社長の工場設備レイアウト設計経験や提案力を形式知化し、OJTを行い、営業力を強化する事で、VE提案により受注を増やす、②顧客ニーズを収集し、一貫生産体制を活用し、自社企画製品の設計、製造を進める、以上でX社の依存を減らし、事業を拡大する。
解説
この問題もまずまず得点できているのではないかと思います。
反省点は、第1問の解説でも触れましたが、強みとして挙げた「安定した納品」を解答に盛り込めていない点です。
解答の結びの部分でX社依存の脱却に言及しています。
前述の通り、私はX社の買い手の交渉力の高さ故にメンテナンスをやらされていると解釈していました。
第5問では、メンテナンスについては触れていませんが、「メンテナンス専門の部署を設置し、営業からメンテナンス業務を切り離すことで、営業力を強化する」という解答も考えられます。
最後に
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
事例Ⅲは私のように製造業に縁のない方にとっては、鬼門となる科目かと思います。
この解説記事が、事例Ⅲに苦手意識を持つ方にとって、少しでもお役に立てば幸いです。
次回は事例Ⅳです。
お楽しみに!