本日解説するわたしの再現答案はこちらです(R06年度事例3 48点) とっつぁん
こんにちは、とっつぁんです!
今回はR6年度本試験事例3の再現答案の解説をさせていただきます。
なお再現答案については、助詞などの使い方が適切でない文章もそのまま残していますがご了承ください。
試験終了後に本試験で実際に記載したと思われる内容を整理した結果ですので、試験で解答したリアルを感じていただければと思います。
なお、第1問・第5問が成長戦略に関する問題、第2-4問が生産戦略に関する問題でしたので、それぞれをセットとして問いて行きました。
各設問の再現答案と解説
第 1 問(配点 20 点)
C 社の強みを 80 字以内で述べよ。
①工業団地に位置し生産設備を有し技術者を中心に採用し特注品の受託生産が可能②工場設備レイアウト設計と工場の生産性を高める搬送機能に関する有効な提案力。
強みの整理については、生産面に対する強みと市場に対する強みの2つの切り口で整理しました。
この強みについては第5問(成長戦略問題)の内容と合わせることを意識しましたので、第5問の整理をした後に第一問(強み)を整理するという順番で解きました。
第 2 問(配点 20 点)
コロナ禍以降増加傾向にある受注量に対応するため、C 社製造部では工程改善によって生産能力の向上を図る検討を進めている。どのように工程改善を進めるべきか、100 字以内で助言せよ。
進め方は①各課で内製している製造工程を共有し相互に応援できる体制とし余力管理しラインバランスを整える②工業団地内の製造業者との連携を強化し自社で対応できない生産の委託先を確保し、生産能力を向上する。
工程改善に関する生産戦略の問題です。
①は15段落目の工程ごとの残業時間が異なる旨の記載より、余力管理・ラインバランシングという切り口で生産能力を確保する記載としました。
ただ、②については、自社内で完結する工程改善の観点での解答の切り口が整理できなかったため、工業団地という立地を活用した外注化による生産能力の確保としました。事例Iっぽさのある組織に近いと思いますので、事例Ⅲらしくはないとは思いつつ、他の設問を含め異なり切り口から生産能力を向上させる可能性がある内容として記載をすることにしました。
第 3 問(配点 20 点)
C 社では、受注量の増加や納期短縮要請などの影響で製造部の工程管理が混乱している。どのように工程管理業務を改善するべきか、その進め方を 100 字以内で助言せよ。
進め方は①製造課長の経験による工数見積ではなくIEで算出した標準時間を算出し週次計画を作成する②設計や納期変更を即時共有するためのクラウドシステムを導入し日次計画の作成を可能にし、納期遅延を防ぐ。
工程管理業務の改善に関する生産戦略の問題です。
「受注量の増加や納期短縮要請などの影響で」が設問文に記載されていますので、”受注量の増加””納期短縮要請”の情報が記載されている14段落から情報を選択しました。
①は「大日程計画や週次日程計画などの工程管理の混乱が生じている。」ことから計画面より、13段落目「週次日程計画表の各作業の工数見積もりは、製造部各課長の経験を基に作成されている。」という記述を参照し、計画の精度を向上させるための取り組みとしてIEの手法による取り組みを考えました。
②は14段落にはIT利用に関する記載があるため、ITツールを活用した改善策を記載しました。13段落目の「顧客からの設計変更や納期変更などが生じた場合など、生産会議には必要に応じて設計担当者が参加し、変更内容を周知して作業順序などの確認を行う。」より即時共有が行えるITツールをイメージした記載としました。
第 4 問(配点 20 点)
C 社の顧客企業との契約金額は、最近の材料費や人件費の高騰に対応した見直しは行われているものの、現状のコスト高には対応できていない。今後、顧客企業と価格交渉を円滑に行うための社内の事前対策を 120 字以内で助言せよ。
対策は①見積金額作成時の材料費や社内加工費の算出、最終契約金額の決裁工程に製造部長が加わり最新のコスト状況を反映できる体制とする②X社に実施している据付後のメンテナンスを他企業にも提供できるサービス内容とし付加価値を高め交渉材料とする。
生産戦略の問題だと思いますが、顧客との交渉を行う前の社内の事前対策という少し惑わせるような設問だったという印象です。
設問文の「最近の材料費や人件費の高騰に対応」より、同様の記載のある第8段落から切り口を整理しました。
切り口としては、
①は「過去に製造した搬送機器の契約金額を参考に、営業部員が材料費と社内加工費、その他の経費を合計して算出し、最終契約金額も含め営業部長が決裁している。」より生産管理面で実施できていないコスト及び契約金額の把握の段階に製造部長が関与することで最新のコスト状況を把握する対応(=価格交渉する前に自社内でやるべきことはやっている状態)
②は「据付後のメンテナンスについては顧客企業が行うが、X 社の場合はC 社の営業部が担当している。」より付加価値を高めて交渉力を高める(=価格交渉を行う必然性を作る)
として記載しました。
5 問(配点 20 点)
C 社社長は、小規模の工場施設や物流施設の新設や更新を計画している企業と直接契約し、自社企画の製品を設計、製造することで事業を拡大したいと考えている。この新しい事業展開を成功させるにはどのように推進するべきか、120 字以内で助言せよ。
C社は①新設を検討している企業に対して、設備のレイアウト設計から関与しニーズにあった特注品生産の提案を行う②更新を計画している企業に対して、工作機器メーカーや物流機器メーカーから受託した製品仕様を参照し生産性を高める機器の製造提案を行う。
第5問は”成長戦略”問題ですので、最初に整理をしました。(その後第1問を解答し、残りの第2-4問を整理・解答)
切り口としては、『アンゾフの成長戦略マトリクス』の新製品開発戦略(新製品×既存市場)、新市場開拓戦略(既存製品×新規市場)の2つとなるように意識しました。
新製品開発は、新製品=設計段階から関わる特注品の生産、既存市場=新設を検討している工場
新市場開拓は、既存製品=生産性を高める製品、新規市場=更新を計画している工場
最後に
※記載内容には他の再現答案解説との重複があります
よく言われることではありますが、他の事例も含め解答において意識していたことは大きくこの2つだけです。
①設問文、与件文に忠実に。客観性をつけるために設問文・与件文の記載内容を単語レベルでも活用した解答とする。
まず、理由は?狙いは?施策は?などの問いに対して、解答の”主語”を間違えないこと。これは、解答作成における最重要事項でもあると思います。
私は、設問文を読むと同時に、解答用紙と解答下書き欄にまず主語だけ書いておくことで、問いに対して解答の方向性がズレないように意識していました。
加えて、時間軸や切り口などの制約も漏らさないように気をつけます。
また、事例企業に対する診断・助言ですので、企業の状態を考慮しているということが伝わるように、必ず設問文・与件文に記載されている内容を活用します。最低限では、特徴的な単語ひとつでも良いともいます。
一方で、相談を受けている”中小企業診断士”の立場ですので、中小企業診断士としての知識・スキルを活用していることがわかるような内容とする=文の抜き出しだけにならないようにすることも重要です。(ex.第2問の余力管理やラインバランシングという単語を使用)
②成長戦略(第1問と第5問)が繋がりのある解答とすること、生産戦略(第2問〜第4問)の解答の切り口に重複がないように切り分ける
事例問題は、企業の現状分析をもとに戦略を考える(助言する)というストーリーです。ですので、一貫性のある解答・被りのない解答を意識します。
事例Ⅲは成長戦略(事業戦略)・生産戦略の問題に区分できますが、成長戦略については一貫性、生産戦略については被りがないようにすることが重要だと思います。
成長戦略問題については、最終的には戦略の助言をするため、私は第5問(最終問題)を最初にまとめ第一問に戻るように意識して解答をしていました。
生産戦略問題については、切り口が重複しないように下書き段階で参照する与件文の情報を切り分けていました。
試験本番では、事例演習を行っている時にできていることが、良くても同じレベルまでしか発揮できません。
試験時間の過ごし方や解答に至るプロセスや考え方、書き方は、再現性のある自身の”型”として定着させれば、試験当日の初見問題に対しても落ち着いて向き合えるようになるはずです。
満点解答がわからない試験ですので、合格者の解答もさまざまですし、解答を導くまでの型もひとつではありません。
ご自身に合う型を見つけ、定着させ、本試験に挑んでください!
おまけ
私は、全事例の中で事例3が一番苦手な科目でした。(60点を取れる気が全くしていなかった)
これは、初めて受験したR5年度の試験が49点だったことに加え、R6年度試験に向けてAASにて過去問演習&添削をしている時からどうも解答のプロセスにしっくりしていないことから感じていたことでもありました。
そのため、科目への向き合い方としては、まずは40点以上=足切りを回避できればOK、50点以上取れれば御の字という位置付けでした。
その分、他の3事例は60点以上取ることが必須だったわけですが、自分が得点しやすいと思う科目、そうでない科目を切り分けで準備することも、習熟度や理解度によっては選択肢として持っても良いと思います。(個人的には事例4が得意科目でしたので、事例4で稼げれば十分達成できる点数だと考えていました)
なお、私が足切りを回避するために意識したことは、上にあげた2つのポイントに加え、設問ごとに解答の切り口が重複しないようにすることで各設問で最低限加点がされるようにしたことです。
再現答案の振り返りをしても、切り口を選ぶ段落がおかしな設問がほとんどです。
が、切り口として被っていなかったり、各設問の解答①②のいずれかは適切な選択ができていたと思われ、各設問で最低限でも加点されたのかなと思います。
試験では4事例で合計240点を達成しても、1事例でも足切りの39点以下があるとその時点で不合格です。
ですので、習熟度によっては足切りを回避するための事例との向き合い方をするという戦略的な選択肢も持っておくと良いかと思います。
以上