本日解説するわたしの再現答案はこちらです(R06年度事例1 66点) 雄町
こんにちは、今日はお酒にさわらない雄町です。
今回から4回にわたって令和6年度二次試験の再現答案解説をやっていきたいと思います。
模範解答から近いもの・遠いものありますが、「このように設問解釈して、こんな風に書いた」というものをお伝えできればと思います。ちなみに私は「与件文の第1段落を読む」→「段落罫線を引く」→「設問文を読む」→「与件文に戻って通読」→「設問文にとりかかる」の順番でいつも進めていました。
令和6年の事例Ⅰは、物流サービス企業として創業したA社が、事業部間の連携や事業承継といった内部問題を解消し、「物流の2024年問題」などの外部問題に直面しながらも、最終的にサードパーティロジスクティクス(3PL)事業者として事業展開を図っていくといったものでした。
テーマとしては、「事業承継」「新市場開拓」「組織制度の改革」が挙げられるのではないかと思います。
第1問
[設問文]A社の2000年当時における(a)強みと(b)弱みについて、それぞれ30字以内で答えよ。
[解答(a)強み]地域密着型高品質輸送サービス。協力会事業者との連携。荷主の信頼
[解答(b)弱み]新規開拓力の弱さ。受注管理面の非効率。旧態依然の管理体質。
まず、「強み・弱み」が第一問にきたときは、続く設問との連携を考えるので(例えば後の問題で解消できる「弱み」を指摘するなど)、私は後回しにすることが多いです。
今回は「2000年当時」という制約条件が付いていたので先に取り組んだように思います。最初は与件文の5段落以前より指摘するだろうと考えました。確かに他の設問ともつながる「弱み」はすぐに見つかりましたので、与件文ほぼそのままに書きました。
ただし「強み」には非常に迷いました。厳密に制約条件を考えると4・5段落から探すべきなのですが、3段落の「地域密着型」や「協力会」といったキーワードが魅力的に映ってしまって上記のようになっています。結果的に他の設問とのつながりが薄くなってしまっています。また他の設問とつながらない「荷主の信頼」は、マスが余ったので無理やり入れています。
本来の制約に沿った5段落の「保管業務や流通加工能力」の方から先に挙げるべきだったなぁと今にして思います。
第2問
[設問文]なぜ、A社は、首都圏の市場を開拓するためにプロジェクトチームを組織したのか。また、長女(後の2代目)をプロジェクトリーダーに任命した狙いは何か。100字以内で答えよ。
[解答]理由は、地元志向の強い既存社員では首都圏の新規開拓を行えないから。狙いは、①長女の大手物流企業での物流企画部門や営業経験を活かし、②部門リーダーを経験させることで、後継者教育を行うためである。
まず、「なぜ」とあるので、「理由は~」から書き始めること。次に「狙いは何か」とあるので、「狙いは~」と二文目を書き始めることで、題意に素直に答えることを意識しました。また「長女(後の2代目)」というこのわざわざ表現が怪しいなと感じました。(8段落冒頭で長女が2代目経営者になることは言及されますが)きっとこれは「後継者教育」に触れなさいというメッセージだとアタリをつけました。
最初に注目したのは長女が初めて出てくる6段落です。ここでは長女の前職での経験が書かれており、これは使えそうだと思いました。これは解答の狙い①の部分で使っています。また後継者教育の観点を②として使いました。
「狙い」はすんなりと思いついたのですが、ちょっと考えたのが「理由」でした。
6段落のプロジェクトチームメンバーの内容から、A社の社風に染まっていないメンバーで構成されていることが読み取れるので、首都圏の新規開拓には地元志向の強さが特徴の既存社員(5段落)=新規開拓意識の弱いメンバーを省きたかったことを表現しました。
第3問
[設問文]なぜ、Z社はA社に案件を持ちかけたのか。100字以内で答えよ。
[解答]理由は、A社が①X社との取引で一連の保管業務や流通加工の能力を高め、②Y社との取引で受注処理の効率化や各店舗の在庫管理のノウハウを蓄積した実績があり、県内進出がスムーズに行えると考えたから。
まず、「なぜ」とあるので、「理由は~」から書き始めることを意識しました。次に「Z社は~」とあるので、Z社から見てA社をどのように評価していたのかを表現しなければならないと考えました。
最初に11段落に注目しました。そこでZ社の目的は「県内進出」にあることがわかります。ただし、取引が始まってみると県内事業部が「各店舗の適正在庫管理や機動的な商品補充」がうまく対応できなかったことも書かれています。これを裏返して、Z社がA社から享受できると期待したであろう強みを他の段落から探しました。
そこで5段落のX社と7段落のY社との取引で培った能力をそれぞれ挙げ、効果として「県内進出をスムーズに行えると考えたから」としてまとめました。
第4問
[リード設問文]今後、A社が3PL事業者となるための事業展開について、以下の設問に答えよ。
[設問文 設問1]2024年の創業経営者の助言による配置転換の狙いは何か。80字以内で答えよ。
[解答]狙いは、①県内事業に精通する経営幹部のノウハウや協力会事業者との関係を長女に引き継がせるため、②長男の県内事業部と首都圏事業部の連携をスムーズに行わせるため。
まず、「狙いは何か」とあるので、「狙いは~」から書き始めることを意識しました。また、リード文の制約条件である「3PL事業者になるため~」を忘れないようにチェックし直しました。リード文のある設問は、よくその制約条件を忘れがちなので、いつもグリグリとマーカーしていました。
12段落にある配置転換については、大きく「長女」と「長男」の観点に分かれます。両者に関わるキーパーソンである「経営幹部」については、協力会の運営を任されていた(3段落目)、長女から県内事業部のマネジメントを一任されていた(8段落)人物として言及されています。
「3PL事業者になるため」という制約条件に則って、今できていないことを解消するための配置転換だと考え、①長女に不足している県内事業部のノウハウと協力会とのつながりの移譲、②長男による県内・首都圏両事業部の業務連携の観点で書きました。
ただ、②の観点では、長男の「物流システム提案力」(11段落)といった大事な点が落ちている上に「運送部と倉庫部の統括マネージャー」(12段落)という観点も外しているので、恐らく②はほとんど加点がないように思います。
[設問文 設問2]A社がZ社との取引関係を強化していくために必要な施策を、100字以内で助言せよ。
[解答]施策は、①適正在庫管理や機動的な商品補充を行うための情報システムの強化及び各事業部の連携を強化、②協力会事業部との連携を深め、県内の運送事業者を確保、③人材の多様化や確保の為に、人事処遇制度を改革する。
「施策を~助言せよ」とあるので「施策は~」と書き始めようと考えました。こちらもリード文の制約条件を忘れないようにします。
続いて設問の制約条件である「A社がZ社との取引関係を強化していくために必要な」を考えていくと、第3問でも触れた11段落のA社ができていないことを裏返して、①のように表現しました。さらに、13段落の4つの問題点である「競争激化」・「人出不足」・「人事処遇制度がほとんど変更がなされないまま」・「今後、物流の多様化や複雑化」を解消することを考えました。ただ、字数的に4つそれぞれ書けそうになかったので、「物流2024年問題の人手不足」解消にはA社の強みである協力会事業部の連携を深めることで対処し(②)、社内人材の「処遇面で不満が出ている」問題には、その改革を挙げました(③)。
今からしてみると、8段落で「年功序列的で古い慣習が残る組織体質」とあるので、それらと対置した職能給や成果主義の様な具体的なキーワードを入れても良かったのかなと思います。
おわりに
長々とお付き合いいただきありがとうございました。
基本的には「聞かれたことに忠実に答えること」を念頭に取り組んでいました。
ですが、第1問の強みと、第4問の設問(1)に何をどう書くべきか迷った記憶があります。
改めて自分の解答を分析すると「これは外れたことを書いてしまったなぁ…」という解答もありますが、それらの失敗も含めて何か一つでも受験生の皆さまの参考になれば嬉しいです。
次回は事例Ⅱの再現答案解説の予定です。どうぞお楽しみに!