字を書くこと

 二次試験勉強に入って最初に当たった壁が、字を書くことでした。

 一次試験の勉強中から薄々感じていましたが、字が書けない自分がそこにいました。一次試験はマークシートなのでなんとかなったものの、財務会計など計算のために手で書いた文字は酷いものでした。特に模試で決められた時間内で焦って書いた文字は読めたものではありませんでした。

字が上手く書けない

 普段はキーボードを多用し、ノートに書く際も万年筆を使っていました。そのため、鉛筆やシャーペンで字を書く機会はほとんどありませんでした。しかし、ある日、シャーペンで字を書こうとしたところ、驚くほど上手く書けないことに気付きました。字が不自然に大きくなり、マスや罫線内に収まらないばかりか、筆圧が低すぎてほとんど色が出ず、変な癖がついていて美しくありませんでした。自分でも信じられない状況でした。一次試験が終わり、二次試験まで残り3か月しかありませんが、どうしたものかと思案に暮れました。

 「二次試験勉強しないといけないのに、なにをやってるんだ?」と思いながら、YouTubeで字の書き方を閲覧して参考にしました。また、文房具屋に走り、色々なタイプのシャーペンを買って試しました。高いものを購入したりもしましたが、状況はすぐには良くなりませんでした。字の色が出ないため、今までの人生で使ったことのない2Bの柔らかいシャーペン芯を買って、力を入れて書いたのですが、思うような字を書くことはできませんでした。さらに、書くだけで疲れてしまいました。

まさかこんなことで躓くとは・・・

 字があまりに汚くて、二次試験の勉強をしていても、自分の回答を見直す気になれませんでした。日によっては字を書くことをあきらめ、回答を読むだけにしようと思う日もありました。「書かないとダメだ!!」と思い直し、ひたすら書き続けました。試験の解答例を写経のように書き写し、気が付くと文字をきれいに書くことだけに集中して、中身がさっぱり頭に入っていないこともよくありました

書き方の癖

 万年筆は、筆圧を必要としない文房具であり、長時間書いても疲れないことが特徴の一つです。書き心地が気持ちよく、1本の万年筆を自分好みに育てる醍醐味があります。今回のこの「良さ」が裏目に出ました。

 よくよく、自分の書き方を見直してみると、万年筆の上を持ち、ペンを寝かして書く癖がついていることに気づきました。ペンの先を持つようにしたところ、筆圧も上がり、字の色も出るようになってきました。シャーペンの芯も2B→B→HBと昔使っていた芯に戻ってきました。合わせて、字の巨大化現象も収まってきました。「なんだ、こんなことが原因だったのか?」と思いましたが、字が安定し始めたときはうれしかったです。しかし、まだ満足いくような字にはなっていませんでした。

略字

 そんなとき、たまたま見たテレビ番組で昔の作家が万年筆を使って文字を書いている様子が映し出されました。気持ちよさそうにスラスラと書いていました。その字をよく見ると全体としてはきれいに見えましたが、1文字、1文字はきれいなものと言い難く略字でした。

万年筆は筆圧を入れなくても滑るように字が気持ちよく書けるため、略字になりがちです。私もいつからか変な略字を書く癖がついていました。

 そこで、思い切ってすべて楷書体で書くことにしました。すると、一つ一つの文字がしっかり自立したものになってきました。楷書体で書いた文章全体を眺めてみると、なかなか良い仕上がりになってきました。改めて、文字の書き順や楷書体には意味があるのだと感心させられました。

まとめ

 1年以上にわたり、文字を書き続けました。一体何文字の字を書いたのでしょうか?シャーペンの芯が紙と擦れて字が浮かび上がる感触が気持ちよくなってきました。当たり前ですが、消しゴムで消せて、やり直しが効くことも素晴らしいです。そんな妙なことにも感心させられました。

文字を書くと、情報を頭で整理して再構成することによって、記憶に残りやすくなり、学習効果が高まると思います。また、「文字を書く」という作業は指先を動かすので、脳が活性化され集中力が高まります。日常の仕事が終わった後、勉強していたのですが、不思議なことに、書くことはリラックス効果をもたらしていたのではないかと思います。字を書くことで心が落ち着き、ストレスを和らげるのに役立ったように思います。経験したことはありませんが、写経も同じではないでしょうか?

 今では仕事でノートにたくさん文字を書く習慣がついており、物事を整理するのに大いに役立っています。また、仕事が終わった後に、鉛筆で文字を書いて集中することで、気持ちが落ち着かせることができるときがあります

皆さんも字を書いてみませんか?

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