合格年度 | 合格者氏名 | 再現答案 | |
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R02年度 | K.K | - |
中小企業診断士を志すまで
私が中小企業診断士の存在を認知したのは2019年の12月です。それはとある経営学の講義を受けている時のことです。そこから見えたのは企業経営理論と大きく書かれた分厚い問題集を開いて内職している人の姿でした。「なんだあの人、すごいな」と思ったことを覚えています。これが初めて中小企業診断士という資格を知ったきっかけでした。
そこから時は経ち、2020年2月になります。2月は10日ぐらいまで定期テストでその勉強をしたのちに23日ぐらいに簿記2級を取ろうとしており、その勉強しかやっていませんでした。(試験当日具合が悪くなり、しっかり落ちました)簿記2級が終わったそのころとあることが起こります。そう、コロナウイルスです。長い長い春休みに突入し、遊ぶしかない!と考えていた私にとってとんでもない出来事でした。やることがなくなり、ひまになった私は12月に見た中小企業診断士という資格を思い出します。したがって私が最初に中小企業診断士を志した理由は「暇だったから」です。(今は違います)
1次試験勉強スタート
独学で1次試験をスタートさせました。資格予備校はそもそも存在知りませんでした。テキストはTACスピードテキスト(スピテキ)2019年度版を購入しました。ここで1つアドバイスなのですが経営法務と中小企業経営・政策は最新版を買わないと最新の情報が反映されておらずゴミになってしまうので注意してください。僕は2020年度版を買い直しました。まずすべてのスピテキに1通りマーカーをつけながら読みました。脳に情報が一番効率よく入る比率はインプット3アウトプット7だと言われています。当たり前ですが、インプットなしではアウトプットの段階に進めないので、私は一通り読みました。7科目のうち経営理論、運営管理、中小企業経営・政策はそれとなく理解できたのですが、経済学は何が書いてあるかわからず、財務会計は読むだけで理解するのは限界がありました。経営法務に関しては語句から全く理解できませんでした。経営情報は内容も分からない上に体が拒否していました。
壁にぶち当たる経済、財務会計、経営法務、経営情報
そこで何もわからなかった経済は速習!マクロ経済学と速習!ミクロ経済学を買い、全部のチャプターを視聴しました。講義の時の雑音が気になりますが、体系的に経済を理解するにはいいテキストだと思います。1.75倍速で視聴していきました。これによってスピテキの経済を読むことはありませんでした。財務会計は圧倒的な演習量が必要だと痛感したので過去問完全マスター2019とスピテキを買いました。しかしこの時期は買っただけでやらなかったため後に苦しむことになります。経営法務は勉強量と点数の伸びを見たときにコスパが悪かったうえに2次試験の出題がないため捨て科目にしました。経営情報は単語から理解できてなかったのでITパスポートで基礎をつけることから始めました。基礎を100%固めることによって乗り切ろうとしました。
莫大な量の問題数
スピテキを読み続けながらもスピード問題集(スピ問)をやり続ける日々に入りました。スピ問は基礎力のアウトプットとして位置付け、1週するごとに正答率を換算しました。正答率を出した理由は的確な現状把握をして、目標点に到達するための差異を図るためです。スピ問のやり方として1週目はすべてやる。2周目は間違った問題だけやる。3週目は全部やる。4週目は1回でも間違った問題をやるという方法を取りました。まず4月から5月にかけてスピ問を2周することを目標にし、2周終わった段階で過去問完全マスターに取り掛かりました。このころには経済が得意科目になっていました。過去問完全マスターをやり始めたときに私は「学んでいない内容結構あるな」と感じました。1週目が終了した段階で試験の本質に気づきます。基礎知識の土台を作ってしまえば量をこなすことが確実に点数に繋がるということです。(経営法務以外)過去問完全マスターの1週目が終了し、このことに気づいたときには1次試験一か月前の6月でした。
実際のスピ問の正答率と過去問完全マスターの正答率はこのようになっています。
スピ問1週目 | スピ問2周目 | 過去完1週目 | |
経営理論 | 60% | 68% | 66.0% |
財務会計 | 54% | 37.5% | 64.7% |
運営管理 | 57% | 56.9% | 67.1% |
経済 | 68.1% | 69.7% | 68.2% |
情報 | 70% | 55% | 72.4% |
法務 | 49% | 71% | 55.6% |
中小経営・政策 | 61.3% | 61% | 67.4% |
5 怒涛の追い込み
基礎的な知識を整えた後は質より量がモノを言う試験だと気づいた時点で心に火が付きました。基礎的な知識の基盤が整っていない部分もあったのでまとめシートというものをこのタイミングで買い、最後の土台作りの仕上げとして使っていました。(もっと早く買えばよかった)最初は暇だからというので始めた診断士の勉強も実用的な知識や未知の領域の勉強を通して知的好奇心が高まっていきました。そこからの1か月でスピ問の3,4週目と過去完の2.3週目をこなし、C問題も2周しました。また6月に3回模試を受け、過去問が対応しきれない法務と中小を固めました。模試に関しては自分の力試しという意味合いではなく、予想問題のような形で使っていました。模試の結果によるメンタルの低下を避けるためです。このように急に勉強ができたのは理由があります。コロナで時間があったこともあるのですが、ここまでお金をかけてテキストを揃えてこと。Twitterでも様々な方に色々なことを教えていただいてもらったのに落ちるわけにはいかないという意地とプライドがありました。
実際の模試の結果の点数はこのようになっています。
スタディング | LEC | 大原 | |
経済 | 80 | 68 | 44 |
財務 | 60 | 52 | 72 |
経営 | 59 | 56 | 54 |
運営 | 60 | 49 | 50 |
法務 | 56 | 56 | 72 |
情報 | 60 | 48 | 64 |
中小 | 55 | 63 | 69 |
計 | 430 | 397 | 425 |
1次試験本番と結果
1次試験当日を迎えました。2020年の1次試験は経営情報が少し易化しましたがそれ以外は普通の難易度でした。怒涛の勉強をしてきたという自負があったので緊張はありませんでした。唯一ドキッとしたのは試験会場に1人だけサンダルで行ったのでかなり浮いていたことです。スリッパを持参して靴を脱いでいる方がいたのでそれをまねすればよかったと反省しています。財務会計以外は考えてもわかんない問題は時間かけてもわからないという考えなので途中退出してまとめシートを開き、次の科目の勉強にあてていました。
実際の結果は以下の通りです。
試験結果 | |
経済 | 76 |
財務 | 76 |
経営 | 64 |
運営 | 73 |
法務 | 60 |
情報 | 60 |
中小 | 73 |
計 | 482 |
勉強するにあたって常に意識していたこと
私は塾講師として大学受験を支える側として3年間取り組んできました。そのような塾講師であるという観点と中小企業診断士試験を合わせて意識していたことがあります。
1つ目は最大目標と最低目標を立てることです。たとえば今、問題集を3日間で終わらせたいとします。私はその時問題集を最低5日以内最大2日で終わらせるという目標を立て取り組んでいきます。こうすることで私は2日間で終わらせようと努力し、たいていは2日間と5日間の間である3日間で問題集を終わらせることができていました。模試の1週間前にも最大点数目標と最低点数目標を立て自分の現在地と合格点までの位置を常に意識していました。
2つ目はTwitterです。私は毎日勉強したことやわからない問題をTwitterに載せていました。これをすることで1日の勉強量を可視化し把握しやすくなると共に中小企業診断士を勉強している人たちとつながり、自分の立ち位置が分かり切磋琢磨していくことができました。(Z世代と言われる私の世代はもうTwitterからは離れているので毎日2.3時間やる!みたいなことはほぼありませんが、もしかしたら初めて使うとTwitterがおもしろすぎて沼にはまる可能性があるので使い方は注意です)
3つ目は周りの環境です。2つ目と被ってますが、私は周りの人にとにかく中小企業診断士試験を受けると宣言しました。学生だからこそできたことだと思います。とにかく逃げられない環境を作りました。また大学受験指導塾で働き、多くの高校生の進路を支えて大学に放出してきた私自身が真面目に勉強して試験に落ちるなどありえないことだと思っていました。このようにして周りの人を巻き込むことによって自分を強引に動かしていました。
4つ目は計画立てです。私は3か月、1か月、1週間で勉強計画を作っていました。これは中小企業診断士試験に限らず、勉強というのは大局を見据えて目の前のことに取り組まないと点数が伸びてこないからです。目の前にあることだけに集中して勉強することが悪いことではありません。しかし勉強しているという感覚だけに陥り、本当にそれが長期的なスパンで見て合格するために今やるべき必要な勉強なのかはわからないと思います。それゆえに期間ごとの計画をたて進捗を把握することが大切です。
2次試験予備校の検討
1次試験に合格し、2次試験にとりかかりました。2次試験は答えがない試験であることは知っていたので添削サービスは必須だと考えました。私の場合、独学で勉強しても自分の基準で判断してしまい自己満足の答案を作ってしまうのではないかと考えました。また1次試験のすぐあとから就活を始め、時間がないことは分かっていたので短時間で回答の骨子を固めて、演習につなげられる手段が必要でした。そのために早急に2次試験のための予備校を見つける必要がありました。そこでTwitterを活用し、おすすめの2次試験予備校を紹介していただきました。最終的にAASのWeb短期コースに申し込みました。
つかみどころがない2次試験
そして2次試験の勉強を本格的にスタートさせました。AASの講義を見始めたのですが、なんだか掴みどころがない。現代文の授業を受けているようでした。しかし根気よく見続けた結果、問題の本質を捉えて素直に答えることが一番重要なことだとわかりました。問題文の読み方やテクニックなど様々ありましたが、すべてのテクニックは作問者とそして作問の中の経営者の問題上の意図を理解するために存在しているものでした。
絶望の初演習
一通り講座を受けた後AASから指定されている過去問を解いてみました。事例Ⅰ28点事例Ⅱ36点事例Ⅲ20点事例Ⅳ45点という簡単な問題であったはずなのにも関わらず絶望的な点数を取りました(8月)、ここで大量のテキストを購入します。演習量がモノを言う事例Ⅳを得点源にするしかないと危機感を感じ、なぜかテキストを購入しました。テキストは30日完成、財務会計問題集、全知全能(誕プレ)、イケカコ、AASが指定するマーケティングの本を購入しました。30日完成以外は一ページも読まずに試験を終了すると知らずに。
進まない勉強
事例Ⅳを中心に勉強を進めていこうとしました。しかし勉強する手は進みませんでした。8月後半にやった2回目の演習は事例Ⅰ50点事例Ⅱ60点事例Ⅲ14点事例Ⅳ44点と掴みかけていたもののAAS作成の簡単な問題だったのでランキングは下の方でした。正直点数が伸びない原因は分かっていました。圧倒的な勉強不足です。社会人の方々が働きながら勉強している中こんなことを書くのもおこがましいのですが、忙しかったです。この少し後の9月の初めから診断士試験の1週間前まで勉強することはありませんでした。
早期化する就活
「全然勉強してないからこれ以降関係ないでしょ」と思ったこれを読んでくださっている方、もう少し読んでみませんか?私が2次試験に合格できた理由はここにあると思っています。今の就活の流れを簡略化すると6.7.8.9月夏インターン→10.11月早期本選考、秋インターン→12~本選考、冬インターンという構図になっています。私は7月にスタートしたため出遅れ荒波にもまれる形になりました。インターンに参加するための一般的な流れはES→Webテスト→グループディスカッションor面接(回数などは企業による)が行われます。圧倒的に出遅れたと感じていた私は様々な業界業種関わらず、30社に1か月半でESを提出しました。結果20社ぐらいに受かりました。この過程である力が身につきました。1つ目は要約力です。ESは会社ごとに様々な内容が問われます。そこに自分の体験や考えを乗せて書くのですが初期の私は400字指定に対して600字書くような人間でした。そこで伝えたいこと、同じ表現などを探っていく作業を何回も何回も繰り返したことで要約力が格段に向上しました。2つ目は意図をくみ取ることです。ESを出すということは選考に通らなければなりません。自分の経験を捻じ曲げるという意味ではなく、数ある自分の考えや情報の中からどこを使えば選考官に刺さるのかを意識していました。この2つは診断士2次試験に必要な要素だと思います。文章を読んで様々な仮説を立てたうえでその仮説の中から作問者の意図にささるのがどの仮説なのかを検討し、要約してまとめるという段階を取っています。この2つは2次試験に必須の能力です。
痛感するレベルの違い
20社ぐらいインターンに参加しました。経営コンサル、人材、教育の会社が多かったのですが、特に経営コンサルのインターンに参加して驚きました。経営コンサルタントを生業にする社員の方々の能力にずば抜けているものがありました。仮説思考、論理的思考力、当事者意識など言葉では測れないものがありました。この人のようになりたい、企業に貢献したいと大まかに考えました。インターンの議論を通じて論理的思考力を鍛えていました。議論においてまず論理性がないと意見が通らない上に議論がつまらないです。そのような実践を得て論理的思考力を鍛えていきました。
ケースフェルミ
もう一つ論理的思考力が鍛えられた場面があります。それは面接です。経営コンサルの面接というのは大抵1次でケース問題やフェルミ推定と言ったものが課されます。ケース問題というのは例えばコンビニの売上をあげるための施策とは?という一文だけ課されてそれについて面接官と議論するという面接形態なのですが、コンサルタントに対応できる力が必要です。フェルミ推定はうまく説明できないので検索してみてください。私が2次試験に合格した根幹は確実にここにあります。東大生の書いたケース問題、フェルミ問題みたいな参考書をやり込みました。これを2週したことによって診断士の基礎となる思考法を身に着けました。必要なフレームワークを独自に身に着け、声に出して説明できるレベルまで持ってきたことが合格の一番の要因だと思っています。
直前の中小企業診断士勉強と結果
1週間前になってやっと少し時間ができました。その時間を30日完成財務会計の続きをやり始めました。この時は全く合格できると思っていなかったので他の受験者と差別化するために全く出る確率がでない分野を詰めました。(そのおかげで現在価値を出す問題とセグメント利益がある程度の解答ができました)当日、事例Ⅱ以外は全く手ごたえがありませんでした。事例Ⅲに関しては確実にDだと思っていました。再現答案も作らず、就活にまた戻りました。合格発表日の日も気づいてなくTwitterをなんとなく見てみました。2次試験の受験表が見当たらず遅れましたが、合格していました。
2次試験の時に意識したこと
2次試験に関して一応意識していたことがあります。
1つ目は事例内で一貫した解答を作ることです。解答のない試験であり、経営コンサルティングに正解はないので一貫した解答をすればある程度の得点がもらえるだろうという希望がありました。
2つ目は作問者と事例企業の経営者の意図をくみ取ることです。作問者が変な箇所におかしな言葉を入れて問題の構成を作るにあたっては何らかの意図があり、欲しい解答に繋がるヒントがあります。事例内の経営者も行動の一つ一つに意味があります。その意図をくみ取り紙の上でその疑問に対する無難な回答をすることを心掛けていました。
3つ目は一回目の自分を信じることです。これは試験全般に言えることなのですが、書き直した解答の正答率は20%といわれています。そうであるならば自分の最初の直観を信じるのが私の考えです。常にこの思考を心掛けていたのが要因なのか、ただ単に現代文の力があるのかはわかりませんが、2次試験で時間を超過したことはありませんでした。
4つ目は脳死マーカーを避けることです。マーカーをつけること自体には賛成でも反対でもありません。しかしマーカーをつけることが目的になってしまって、何も整理されていないみたいなことありませんか?マーカーをつけることは簡潔に言うと問題を解きやすく整理すること(ほかに何か意味があったらすいません)だと思うので問題を見据えて意識付けしながらマーカーをつけていました。(本番ではマーカーをほぼ使わず大事なところはシャーペンでぐるぐるしていました)
最後に
結局私が2次試験のために行ったことは演習2年分と30日完成1周です。2次試験は少しの診断士試験のテクニックと少しの知識と多くの論理的思考力や仮説思考などのコンサルタントに必要な力が必要です。私は正直、コンサルタントのコの文字も名乗れませんし、そんな力はありません。今回受かったのも事例Ⅰで就活を通して得たことを書き、事例Ⅱで大学の知識を活用し、事例Ⅲでたまたまインターンの内容を活用でき、事例Ⅳで直近の内容が出ただけです。しかしコンサルタントに必要な能力を意識し、2次試験の勉強を進めていくと合格に近づけるのではないのでしょうか。もし私のこの文章が誰か一人でも2次試験を受ける方に刺されば嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。