H27_金森大輔さん

■ はじめに

 2015年は私にとって、①仕事では管理職となり、②家庭には第三子が加わり、③個人としては2次試験に本格的に挑む、という「仕事」「子育て」「勉強」の「三足のわらじ」で駆け抜けた激動の一年でした。共働きの妻からは背中を押されつつも、「結果を出せ」という重圧がのしかかる、そんな状況の中で、常に前向きに淡々と試験勉強に勤しんだ、一人の男の合格体験記です。

 

■ プロフィール

「エデュテインメント」を経営理念に掲げる企業の経営企画部門で働く36歳

家族構成:妻、長男(6歳)、次男(4歳)、三男(0歳←1次試験の3日後に誕生)

 

■ 受験歴

年度 勉強方法 1次 2次
2013 独学 経済36財務69経営60運営55 法務65情報72中小56
→4科目合格
2014 独学
(10月AAS直前合宿のみ参加)
経済72運営68中小60
→1次試験合格
総合B
B A C A
2015 AAS通学本科生
(5月GW合宿、10月直前合宿にも参加)
経済88財務88経営60運営75 法務60情報36中小49
→5科目合格
合格
A A B A

※AASでは2次試験受験資格保有者にも1次試験の受験を勧められるため、2015年度も1次試験を受けております(残念ながら「経営情報システム」は足切りでしたが…)。

 

2次試験詳細

年度 事例Ⅰ 事例Ⅱ 事例Ⅲ 事例Ⅳ 合計
2014 54点 71点 43点 64点 232点
2015 83点 66点 53点 73点 275点

 

■ 試験合格までの道のり

【2009年冬】~合格6年前~

入社6年目に営業系部署から経理部へ異動。簿記3級、2級合格後の、上司との面談にて

 

私 「業務に役立つ資格はさらにありますか?簿記1級を目指すべきでしょうか?」

上司「うち(の会社)は簿記1級ほどの専門的な会計知識は必要ないかなぁ。」

私 「はぁ…」

上司「経営全般のことが学べる中小企業診断士という資格があるよ。目指してみたら?」

私 「そんな資格があるんですね!調べてみます。」

 

ほどなく、T社「スピードテキスト企業経営理論」を購入し読み物として楽しんだり、図書館で中小企業診断士関連書籍※を借りて読んでみたり、ずっと資格のことが気になりながらも、実際に受験するまでにはいたらずに数年の時が過ぎる…。

※特に「職業、企業内診断士―アサヒビールグループ診断士の会の挑戦」、「企業内診断士の可能性 NECグループ中小企業診断士103人の挑戦」の2冊にはとても感銘を受けました。この2冊があったから中小企業診断士を目指すモチベーションを保ち続けることができたと思います。民間企業に勤めながら資格取得を目指す方にはオススメです!

 

【2013年春】~合格2年半前~

先述の上司の提案により、経営企画部門が新設される。創設メンバーに選ばれたことを契機に、試験勉強を本格的に開始。「財務・会計」「企業経営理論」「運営管理」の主要3科目は、ひととおり市販テキストを読んだものの、その他の科目はろくに手つかずの状態であったため、受験を渋っていたところ、妻から「とりあえず受けてみなさいよ!」と一喝され、受験することに(思えばこの妻の一言が合格へのきっかけでした)。

 

【2013年夏】~初めての1次試験~

過去問5年分ほどを各科目1回解いたくらいの状態で挑み、不安だらけだったが、「経営法務」や「経営情報システム」の易化にも助けられ、4科目合格という結果。「残り3科目なら来年イケるかもしれない…」という期待を持つ。

 

【2013年秋~2014年夏】~2回目の1次試験~

前回足切りとなった「経済学・経済政策」を中心に勉強。根を詰めることはせず、市販テキストを読み込み、過去問も3回転くらい解き、残りの3科目のみを受験。自己採点で合格を確信する。

 

【2014年夏~秋】~初めての2次試験~

これまで2次試験の勉強をまったくしてこなかったため、あわてて本屋でT社の過去問題集を購入。記述形式に戸惑いつつ、とりあえず解いてみて模範解答と比べてみるも、いまいち腑に落ちず…。どうしたものかなぁ、とネットサーフィンしている中で、AASの合格再現答案にたどり着く。また、2次試験2週間前に行われる「直前合格判定合宿」(といっても2日間の通いの模試+解説講座です)の存在に気付き、妻の許可を得た上で、申し込むことに。

そこは、生の中小企業診断士にも受験仲間にも会った事がなかった、ずっと独学の私にとっては刺激的な場で、特に、グループディスカッションを通じて、皆で妥当性のある解答を探し求めるという授業スタイルに感動を覚える。入社10年で与えられる10日間の特別休暇も活用して(といいつつその間、家族で沖縄旅行に出かけた甘えもあったのですが…)、集中勉強するも、残念ながら不合格。

 

【2015年1月】~AAS通学スタート~

不合格発表後、独学で手に負える試験ではないと悟り(個人的にはこの悟りが合格への一歩だったと思います)、直前合宿の体験が強い印象として残っていたAASへの通学を妻に頼み込む。ここで「結果を出せ」とのありがたいお言葉を頂戴する。1月12日、成人式の若者が集まる北とぴあにて「合格答案分析会」に参加。前に座る合格者たちを見て、「来年はあの席に座るんだ」という強い意志を持つ。

 

【2015年1-2月】~インプット講座~

「5色の蛍光ペンを使って読む」「フレームワーク」「与件構造化」「設問分解」「切り口」といったAASの「お作法」をたたき込まれる。また、「三徳会」と呼ばれる早起きメーリングリストの影響もあり、(子供が起きる前の)早朝勉強が定着。

 

【2015年3-4月】~アウトプット講座~

講座の度に、AASの新作事例を一つ解き、グループディスカッションと講師による解説がなされるアウトプット講座がスタート。答案は採点され、次回の講座で返却。初回の事例Ⅰは通学生で1位を獲得し自信を持つも、事例Ⅱ、Ⅲと順位を落とし、少し落ち込みつつ、事例Ⅳでは2位。総合ランキングではトップを取ることができた。80分の戦い方が体にしみ付いてきた手応えを感じる。

 

【2015年5月】~ゴールデンウィーク合宿~

北とぴあで開催された、「GW合格判定合宿」に参加。4科目合計では、22人の参加者中3位の成績。事例Ⅳではトップだったが、事例Ⅰ~Ⅲでは大きく外した設問もあり、「読み」の甘さと、与件文と設問とのリンク付けへの意識の弱さが露呈する。

 

【2015年5-7月】~アウトプット講座第2クール~

早朝は机に向かって過去問の答案作成、通勤時とお昼休みには、「Evernote」に保管したAAS知識教材をiPadで読んだり、「Dropbox」に保管した早坂先生の倍速解説音声を聞く、という平日のルーティンが定着しつつある。第2クールの総合ランキングは5位。相変わらず事例Ⅳは調子いいが、事例Ⅰ~Ⅲは安定しない。特に事例Ⅲは40点を下回り、苦手意識がぬぐえない。ただ愚直にAASのお作法を実践することに注力する。

 

【2015年8月】~1次試験受験と三男誕生~

8月に入ってからは1次試験に集中。水・木・金は夏休みを取得し詰め込む。結果的には「経営情報システム」で足切りとなるものの、主要3科目「財務・会計」「企業経営理論」「運営管理」では満足のいく結果。①集中して勉強する感覚を思い出したこと、②試験本番の雰囲気に慣れたこと③(不合格となったことでかえって背水の陣となり)2次試験合格への意欲を高められたこと、といった効果があったとポジティブに考える。そして、その3日後に第3子となる男の子が誕生。「三徳会」では同士の皆様からおめでとうメールが届き、嬉しかった。三男誕生を「弱み」ではなく、「励み」という名の「強み」にする、と決意を新たにする。

 

【2015年8-9月】~アウトプット講座第3クールと他流試合~

意気込んで挑んだアウトプット事例Ⅰでこれまでの最低順位を取ってしまい、さらに事例Ⅱの結果も芳しくなく、ここにきて強い焦りを感じる。そんな中、自身にとって初めてのAAS以外の模試であるT社の模試を受験。結果は事例Ⅳの爆発もあり、2,690人中71位の好成績。わき目もふらずAASのお作法習得に励むことで身に付けた、あいまいな2次試験へのブレない対応力としての「型」が、他流試合でも通用することを自覚する。また、素直な気持ちで答案に向き合ったアウトプット事例Ⅲ、事例Ⅳでは連続1位を取ることができ、更なる自信を深める。

 

【2015年10月】~直前合宿とセルフ模試~

1年前と同じ滝野川会館で開催された「直前合格判定合宿」に参加。この1年に思いを馳せながら、2次試験本番前の集大成として挑む。結果は36人中6位(1点差でトップ5に入れず…)。「曖昧な知識」「題意外し」「思い込み解答」「与件と設問のリンク外し」といった、2次試験で陥りがちな典型的なミスを犯し、本番2週間前によい点検となった。一方、そんなミスもありながらも、ある程度の点数を拾える地力がついている、というこの1年の成長を感じることができた。最後の1週間はAAS生の間でブームとなった「セルフ模試」(2次試験とまったく同じ時間割で9時50分から17時10分まで過去問4事例を解く)を行ったり、ファイナルペーパーを作ったり、体調管理に気を付けながら過ごす。試験前日に生姜焼きを作ってくれ、妻に「美味しい。これで合格できる気がする」と伝えたらとても喜んでくれた。

 

【2015年10月25日】~2次試験本番~

決戦の地、武蔵野大学有明キャンパスの試験会場に向かう。会場前の交差点に激励のため来てくださった早坂先生をはじめとするAAS講師陣と握手。トイレの位置も複数個所確認し、寒さ対策用の薄手のパーカーも準備し、時計が動かないようにセロハンテープで机に固定する。

事例Ⅰ。個人的には変化球の事例と感じ、対応に苦しむ(後で気付いたのですが、第5問の「サービス事業」を「サービス業」と読み間違え、インターナルマーケティングで書いてしまいました…)。

気を取り直して、事例Ⅱ。商店街が事例企業の「助言」問題のみで構成された一癖ある事例。自分自身が、事例のターゲットである、高層マンションに住む30代のファミリー層ということもあり、戸惑いつつも、「引き算する勇気」を持って何とか書き上げる。

お昼休みは関口先生の教えを守り、おにぎり一つをほおばり、眠気が起きない程度の栄養補給。

事例Ⅲ。与件と設問のリンク付けが悩ましく、泣きそうになりながら時間ギリギリでマス目を埋める。

事例Ⅳ。お、とうとう税率が30%になったな、などと考えながら、営業レバレッジ、CVP分析やNPVの問題を丁寧に解いていく。第4問は焦りもあり、やや見当違いのことを書いてしまったが、それなりに手応えを感じた。

全体を通じて、AASのアウトプットでもT社の模試でも味わえなかった対応の難しさだった。本試験には魔物が潜んでいる。それでも諦めることはなく、負けじと食らいつき、やれることはやったという達成感はあった。外はすでに暗く、一日中頭をフル回転させ火照った頭脳をクールダウンしてくれる夜風が心地よかった。とにかく「終わったんだなぁ…。」と感慨深かった。

 

【2015年12月11日】~合格発表~

当日は平日だったが、大腸の内視鏡検査のため仕事はお休み。自宅で下剤を飲んではトイレに行くことを繰り返している最中にスマホで番号を探す。「あった!」妻とともに喜びを分かち合う。私以上に感動している妻の姿を見て、とにかくホッとした。

なお、大腸の検査結果は異状なし。心も体もスッキリとした状態で、激動の一年がとうとう幕を閉じた。

 

■ 合格の秘訣

 AASでは10ヶ月間で800時間を求められますが、私は約500時間、とAAS通学本科生の中では勉強時間が少ない方でした。ただし、毎週の学習進捗報告は欠かさず、わき目もふらずにAASの「お作法」習得に時間を費やしました。また、「あいまい」な2次試験において、唯一得点源にできる科目である事例Ⅳには力を入れました。時間さえあれば計算問題は必ず解ける、という状態にまで持っていけたと思います。そして、事例Ⅰ~Ⅲについては、とにかく与件文と設問文から素直に導かれる、他の人が書きそうな(書けそうな)客観性のある、いわば「最大公約数」的な解答を心掛けました。AASの少人数制授業におけるグループディスカッションで周りの声に耳を傾け議論することを通じて、自身の解答が、より客観性のあるものに補正されていったように思います。

合格の秘訣は、必要最低限の知識を頭に入れたうえで、①受験校(私にとってはAAS)を信じぬく、②事例Ⅳを得意科目にする、③素直な解答を心掛ける、の3点だと思います。

 

■ 最後に

 これほど勉強に集中したのは大学受験以来で、この年になって学ぶ喜びを思い出せたことは、まだまだ続くであろう私の人生にとっても有意義なことだと感じます。また、土日は息子たちと遊ぶ時間を削って勉強の時間に充てたということもあり、遊び盛りの長男と次男には申し訳ないことをしたと感じる一方で、勉強する親の背中を見せられたことは、教育上も良い面があったと、鉛筆を持って熱心に読み書きや計算に取り組む息子たちの姿を見るたびに信じています。

 この文章を書いているのは2016年3月末日ですが、実務補習も経験し、すでに色んな出会いに恵まれています。自己啓発を通じて、新たなフィールドを開拓し、その体験を仕事に活かし、会社に貢献する。そんな良いスパイラルを作っていける企業診断士を目指していきたいです。

 そして最後に、この1年、身重(8月からは産後)の大変な時期にもかかわらず、常に背中を押し、叱咤激励してくれた妻に感謝です。妻の喜ぶ顔が見たい、結果を出したい、という思いが一番のモチベーションとなって頑張れました。いつも私を応援してくれてありがとう。これからも妻の笑顔を作れる人間でありたいと思います。

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