●はじめに
私は平成14年度の中小企業診断士試験で、1次・2次とストレート合格しました。
この様に書くと余裕で合格したかの様に聞こえますが、実際には1次試験の自己採点による平均点は61点でぎりぎり合格。2次試験も間違いなく落ちた、と思っていたので合格発表の日すら忘れていました。合格発表の日、自宅に戻ると郵便局から不在配達通知が届いており、「もしや」と思ってインターネットで確認したら合格していた次第です。
この様に私は結果的にストレート合格できました。しかし仕事も結構忙しかった為、最低限の学習しかできませんでした。ただ私が確信したのは、多忙な社会人であっても学習方法が的確(ピンポイント学習)であれば、ストレート合格も十分に可能だということです。つたない内容ではありますが、私の体験記を以下にまとめます。
●1.なぜ中小企業診断士なのか
私は専門商社にて主に工作機械の販売を手がけています。商社の営業はメーカの営業以上に「営業の付加価値」を問われます。この資格の取得を目指した第一の理由は、「営業の付加価値」を上げる為です。
第二の理由は「自分の社外価値」を上げる為です。今までは「社内価値」だけで良かった時代ですが、これからは「社外価値」の無い人材は通用しないと思います。大手企業の管理職でも転職すると収入が半減するのは、「社外価値」が無いからだと思います。
私は何事も「動機」が重要だと思います。工作機械の商談でもユーザの「動機」が不明確な場合は、成約しません。成約しても後からトラブルになります。
なぜ中小企業診断士になりたいのかという「動機」が明確であれば、モチベーションの維持も容易になり、学習への取り組みも主体的になると思います。
●2.学習の経過
私の2次試験合格に至る、学習の経過を以下に示します。
平成14年 12月 通信教育開始(期間:半年程度 費用:4万円弱)。
平成15年 6月 1次模擬試験を受験。
8月 1次試験を受験。翌週より2次試験対策で予備校通学開始。
(期間:週2回1ケ月 費用:9万5千円)
2次模擬試験を受験。
10月 2次試験(筆記)
12月 2次試験(面接)
●3.1次試験学習
通信教育をスタートして教材が送られてきて驚きました。厚さ10mmくらいのテキストが10冊。これを本当に学習し続けられるだろうか、と思いました。
最初にしたことは1次試験までの学習スケジュール作成です。一日あたりの学習範囲をテキストの項目に沿って細かく設定しました。どうしても忙しくてその日の学習ができないときには次の日に取り戻す等して、学習スケジュールを厳守する様にしました。
私の学習内容を列挙しますと、
- 1) スケジュールで決めた範囲のテキストを読んでサブノート(手書き)を作成する。
2) 通信教育で義務付けられた月に一度の添削問題。
3) 市販の模擬問題集(LEC でる順診断士)
4) 科目ごとの「まとめサブノート」をパソコンでつくる。
以上4点で、これらを並行して学習していきました。
わからないところは通信教育の添削時に文書で質問したり、インターネットの関連サイト掲示版等で質問したりしました。特にインターネットの方が役に立ちました。
1次学習を進めていくうちに2次試験の内容にも興味が出てきたので、2次試験対策の本も購入したりして、2次試験のイメージも頭におきつつ学習を進める様にしました。
4)の「まとめサブノート」は各科目を体系的に理解する為につくりました。パソコンでつくったのは修正が容易だからです。こうしたサブノートの作成と修正作業を通し、各科目の体系的な理解、2次試験への対策につながったと思います。
●4. 2次試験学習-予備校選び
自己採点の結果、1次試験にどうやら合格していると判断したので、予備校への通学に踏み切りました。前述の通り、2次試験対策の本も早期に読んでいたので、2次試験の独学での合格は不可能(少なくとも私は)との結論に至っていました。
予備校選びは「場所」と「内容」に重きをおき、2校に絞込んで見学に行き、最終的に通信教育と同じ予備校を選びました。
予備校選びは「縁」みたいなものもあるでしょうから、「ここがいい」というのは無いと思います。ただし、一つだけ意見を言うならば、中小企業診断士をメインに指導している予備校を絶対に選ぶべきです。予備校選びをしていてわかりましたが、「公務員に強いところ」「簿記に強いところ」「司法試験に強いところ」と予備校にも得意分野があります。中小企業診断士の指導をメインにしていないところでは、1次はともかく2次の合格はおぼつかないと思います。2次試験学習で予備校選びは非常に重要だと思います。
●5. 2次試験学習-学習方法
1次試験と同様、学習スケジュールを作成し、2次試験の過去問題を中心に学習していきました。しかし旧制度での問題は私にとって難しく、新制度の問題とは明らかにつくりが異なる為、「本当に旧制度の過去問題をこなすことが有効なのか」という疑問を持つ様になり、新制度に準じた過去問題、模擬問題に的を絞って学習しました。学習内容を下記に示します。
- 1) 予備校で配布された模擬問題
2) 予備校で実施された模擬試験
3) 市販の模擬試験問題集(同友館 診断士2次試験 直前対策模擬試験問題集)
4)まとめサブノートのパソコンでの作成。
学習していて気がついたことは、「一度間違えた問題は、何度も、同じ様に間違える」ということです。2次試験は論述式ですが、一度間違えた問題を数日後に解いてみると、理解したつもりでいたのに、やはり前回と同じ様に間違えます。これは「考え方」が間違っているから同じ様に間違えるのであり、「正しい考え方」を身に付けないと何度でも同じ間違えを犯します。「正しい考え方」を身に付けるには、体系的な理解もそうですが、短期的には模擬問題を幅広く、繰り返しあたるしかないと思います。特に一度間違えた問題はチェックしておき、正しい解答ができる様になるまで繰り返し解きます。
そうした学習の過程で、2次試験答案の書き方として重要だと思ったことを下記に示します。
- ① 設問を構造化して関連性をよく考えること
② SWOT分析をすること。
③ 設問は必ず3回読むこと。
<具体的には>
- a)解答のレベルは何か?
(戦略? マネジメント? オペレーション?長期? 短期?)
b)次の解答につながる解答になっているか?
c)「素直で」「わかりやすい」「具体的な」解答になっているか?
コンサルの仕事で何が「間違え」で何が「正しい」というのは難しい議論になると思いますが、とりあえずは試験に合格しないことには意味がないので、「合格できる解答」が「正しい」解答だと割り切るほかありません。
●6.仕事との両立
私の仕事は営業なので時間も不規則であり、仕事後のお酒の付き合いも結構あります。
自宅だけでの学習では時間が足りないので、営業中も常にテキストとノートを持ち歩き、客先への訪問時間の隙間時間を見つけて学習する様にしました。特に2次試験の学習にあたっては小学生向けの「マス目ノート」を購入し、問題集と共に常に持ち歩きました。
ちなみに通勤時間は新聞(日経新聞)を読む時間にあて、受験学習中とはいえ社会人として最低限必要な情報は必ず得る様にしました。
中小企業診断士の学習内容は、我々ビジネスマンの仕事とも関連性が深く、自分の仕事内容にあてはめて考えることができるため、仕事との相乗効果も得られると思います。
特に私は理系出身(工学部機械工学科)なので、経営学や経済学の学習が非常に新鮮で、ためになったと思います。
●7.モチベーションの維持
学習期間が長期間にわたる為、一人で学習しているとモチベーションの維持が課題になります。グループ学習するなどして、勉強仲間をつくるのがベストだと思いますが、私の場合はそうしたことができませんでした。そこで、インターネットの関連サイト掲示版に参加して情報収集やモチベーションの維持に努めました。一番不安に思うのは自分の学習方法が正しいかどうかということで、そうした議論をインターネットでよく行いました。
また、自分が将来どんな人間になりたいか、理想の自分(診断士として活躍する自分)をイメージしながら学習を進める様にしました。
私もモチベーションが非常に低下した時期がありました。8月後半に2次模擬試験を受験しましたが、結果は全国1292人中700位という散々なものでした。「これでは絶対に合格できない」と諦めかけましたが、気を取り直して学習を進めたことが結果的に合格につながりました。
●おわりに
最後に、私の「合格要因」をまとめますと、
- ① 学習スケジュールをたてて必ず守る。
② 模擬問題を繰り返し解く。
③ パソコンを利用したサブノートの作成。
④ 隙間時間を極限まで利用すること。
⑤ インターネットを利用した情報収集とモチベーションの維持。
⑥ 適切な予備校の選択。
⑦ 最後まで絶対に諦めないこと。
中小企業診断士の試験は、学習方法が正しく、最後まで諦めずに学習すれば、必ず合格できる試験だと思います。
今後は実務研修を得て正式に資格を得る予定ですが、まだまだ知識も経験も足りないと思います。今後も自主的に学習を継続し、中小企業診断士の名前に恥じないスキルを持つ人間になりたいと思います。
最後に、私の体験記が少しでも皆様の受験勉強の参考になれば幸甚に存じます。