1.診断士を目指した理由
私が中小企業診断士を目指そうと思ったのは、転職がきっかけでした。
数年前にIT・通信業界の営業職から行政機関に転職したのですが、行政機関というのは仕事が多岐にわたっており、もともと産業振興や中小企業の支援といった仕事を通じて社会を良くしたいという大それた思いから転職したのですが、自分がやりたい仕事に手をあげるチャンスも少ない状態でした。
そんなとき、中小企業診断士という資格を知り、調べるにつれその仕事の面白さに引き込まれ、また経営コンサルタントの国家資格であり、キャリアアップにも役立つのではという思いから受験を決めました。
2.受験歴
平成23年度 1次試験 ○ 2次試験 ×
平成24年度 1次試験 × 2次試験 ○
3.AASとの出会い
受験1年目は、平成22年10月から、平成23年度受験に向け、大手受験校の1次2次ストレート本科生という毎週日曜通学のコースに通い、勉強をスタートさせました。当時は診断士試験の奥の深さも知らず、何としてもストレート合格!と、がむしゃらに勉強し、1次試験をぎりぎりで通過(427点)することができました。2次については毎週アウトプットの問題を解き、解答解説を見ながら講師が解説するというものでした。しかし、解答にいきつくための道筋が全くわからず、何のメソッドもないまま、全てその場の現場対応で解くような状態でした。
こんな状態で受けた初めての2次試験は、当然のごとく不合格でした。
合格発表を待つまでもなく、次を考え始め、AASを選びました。
理由は、単なる受験テクニックではなく、解くための確かなメソッドを学べると感じたからです。さらに、私は単に試験に受かるだけではなく、診断士としての基礎力という実力を身につけたかったのですが、AASは中小企業診断士の育成機関と銘打ち、試験にとどまらず、診断士としての考え方を叩きこむといった指導方針だったことも大きな理由のひとつでした。
講座説明会で石原先生の話を聞き、合格答案分析会に参加し、AASに参加する意思を固め、平成24年度の試験に向けた戦いがスタートしました。
4.講義開始からアウトプット2回目(1月~6月)~苦戦~
AASの講義当初はスピーディーな講義に気後れし、ついていくのがやっとでした。石原先生から、知識があっても知恵使える知識にならなければ2次試験では勝てないという言葉を何度も聞きましたが、当時の私は知識すら怪しく、先生に質問されても頭が真っ白になって出てこないということが多々ありました。
1回めのアウトプットでは、知識がほとんど使えていないと痛感させられ、石原先生の課題やアウトプットの振り返りなどにひたすら時間を費やしました。また、事例ごとのフレームワークや仮説を身につけるために、HPの石原先生の講義を録音し、通勤途中等にひたすら聞き、レジュメをまとめたものを持ち歩き、隙間時間があれば見るようにしました。この効果が出てくるのはずっと後でしたが、これは試験直前まで続きました。
2回目のアウトプットでは1回目よりさらに手ごたえがなく、基本が身についていないことが露呈してしまい、かなり落ち込みました。アウトプットの復習ばかりに偏りすぎ、過去問をおろそかにしたことも大きかったと思います。結局アウト2回目では低空飛行のまま終わり、8月の1次試験に向けた勉強に切り替えざるを得ませんでした。
ここで、先生方のアドバイスもあり、いったん2次のことは忘れて1次に集中することにしました。2次については、感覚を忘れないようにするため時折事例を解くのみに届め、1次の勉強に集中しました。1次の結果は4科目合格にとどまり、1ヶ月あまりを1次に割いた結果としては喜べるものではありませんでしたが、今から思えば、いったん2次の勉強から離れてよかったと考えています。なぜなら、距離をおくことによって、2次の勉強法について見直すきっかけになり、残された時間でやるべきことを絞り込めたからです。
5.アウトプット3回目(8月~9月)~解答手順の確立~
3回目のアウトプットを迎えるにあたり、課題である解答手順の弱さの克服と、与件や設問の見落としを防ぐため、以下の対策を立てました。
・与件のストーリー(環境変化とそれへの対応)を意識し、設問はどの時点のことが問われているのかをしっかり認識すること。
・読み落としを防ぐため、文節ごとに斜線を入れながら読む。
・過去問集を使い、40分程度で読む・書くのプロセスの反復トレーニングを行う。
これらを実践した結果、徐々に解法プロセスに安定感が生まれました。それまであいまいにしていたマーキングの方法も決め、武器は黄色と赤のマーカーと鉛筆のみと決めました。
このころからようやくAASのお作法が身についてきたのか、設問を見たら解答骨子、といった手順をあたりまえのように、機械的に実行できるようになりました。
試験当日につくづく実感したのですが、表現力・構成力・与件活用力といった、お作法の基本中の基本を身につけていることで、本当に安心感がありました。AAS生であればできていて当たり前という部分かもしれませんが、何が起こるか分からない試験本番で、どんな問題が来ても、まずは主語述語や論理パターンなどから解答骨子の型をメモするといういつも通りの手順を行うことで、「少なくとも題意は外さなくてすむ」からです。AASで教えてもらったことは数え切れないぐらいありますが、私の場合、試験当日に最も大きかったのは、このような基本中の基本のことでした。
6.直前期(9月~10月)~守りに入る気持ちを捨てる~
直前期は有志の勉強会の課題となった設問分解を中心的に行い、それまで充分に取り組めていなかった過去問に取り組みました。この直前2カ月あまりで、かなりの数の過去問をこなすことができました。
しかし、やはり時間は足りません。10月に入って仕事の関係で学習時間が取りにくくなったこともあり、やるべきことをさらに絞り込まねばなりませんでした。
誰でもそうだと思いますが、これまでの努力を思えば、何としても合格したいという思いが逆にプレッシャーになります。個人的な話になりますが、私の場合、診断士資格が今後自分のやりたい仕事をするためのキャリアに与えるかもしれない影響も考えると、早く合格しないと、巡ってくるチャンスをつかめないかもしれないという恐怖が常にあり、それは試験前に物凄いプレッシャーになって襲ってきました。つまり、もしダメだったら、ということを考えるのが怖いため、合格するための絶対の保証を求める気持ちが大きくなり、気持ちが守りに入り、あれもこれもできていないということになってしまうのだと思います。
私は、最後の最後になって、守りに入る気持ちをようやく捨て去ることができました。それは、試験本番に起こることについてまで事前に準備することなどできるはずがないと気づいたからです。そして、試験本番に何が起こるかわからない以上、合格の保証など得られるはずがない。だからこそ、可能なかぎりの準備をしたら、当日は守りに入らず、コンディションが最高であってもなくても、自分が身に付けたものを信じて、全身全霊で力を出し切ることこそが最終目標だと思うようにしたのです。
合否に関わらず、AASでの1年間で、自分が確かに成長できたという実感があったからこそこう思えたのかもしれません。もし結果が出なかったとしても、試験から気づきを得て今後に活かせばいいと自然に思えました。
また、合格後のことを強く意識しました。診断士となることで自分は何を実現したいのか。自分の人生をどうしたいのか、試験合格はゴールではなく、通過点なのだとということを強くイメージしました。
7.試験本番(10月21日) ~最後まであきらめず~
試験本番、数日前から体調も思わしくなく、前日もよく眠れず、万全とは言い難い状態でしたが、もう余計なことは考えませんでした。
本番では、とにかく淡々と回答手順を実行していきました。本番中は、どうもしっくりこないという思いばかりでしたが、一事例終わるごとに忘れ、次のこと、目の前のことだけを考えました。ただ気持ちを落ち着かせるためだけに、フレームワークに知識を書き込んだものをひたすら眺め、糖分を補給し、次に備えました。必ず予想外のことが起こるだろうが、最後まであきらめずにやりきればそれでいいと言い聞かせました。
試験が終わって外に出た直後は、できなかったところばかりが思い出され、かなり落ち込みました。しかし、不思議な充実感もあったのを覚えています。結果がどうであれ、この1年間の勉強で、得たものは確かにあり、それをまずまず出し切ることができたという充実感でした。
8.合格 ~新たなスタートライン~
合格発表を見たとき、しばらく頭が真っ白になり、先生方に合格を報告し、祝福の言葉をいただいたあとも、数日経っても、実感はなかなか湧かず、放心状態でした。それだけ、自分にとって価値があることだったのです。喜びはじわじわと数日かけて感じられるようになりました。
AASでの勉強は、合格という結果だけでなく、診断士としての考え方や、自分の成長、数多くの仲間や先生との出会いなど、一人で勉強していては決して得られなかっただろうたくさんのものをもたらしてくれました。
お忙しい中でも、一緒にアウトプットを解き、ときには厳しいながらもハッとするようなアドバイスを下さり、勉強会にもずっと参加してくださり、受講生により近い立場からいろいろとお世話になった坂吉先輩、わかりやすい解説やメールでの個別のご指導を何度も頂き、あるべき姿と現状の捉え方など、事例に当たるための考え方を教えてくださった指尾先生、そして、終始熱い指導でグイグイと引っ張ってくださり、本番直前の合宿4事例アウトプットの際には私に「自信持っていけ!」と言ってくださった石原先生を始めとする諸先生方。
勉強会に誘って下さり、熱い議論を交わした「69の会」の皆さん。アウトプットで順位を競い合い、助け合った同期の皆さん。
皆様の存在なくして、合格はありませんでした。本当にありがとうございました。
まだスタートラインに立ったばかりですが、これからは診断士として、AAS生の名に恥じないよう、また、中小企業診断士が担うべき社会的な使命を果たすことで、自分の人生も充実させることができるよう、引き続き勉強し、精進していきます。本当にありがとうございました。
以下参考:合格答案分析会資料「私が合格した理由」
1.要因
①AASの方法論を学ぶことで80分の解答手順を身につけたから。
・読む、考える、書くの視点
・事例ごとのフレームワーク、仮説
・設問に対する回答骨子の型(並列、ピラミッド等)
・過去問やアウトプットを通じてこれらの基本を徹底することで、本試験でも
落ち着いていられた。
②モチベーションを概ね高く保つことができたから。
・合格後を強く意識し、イメージした。(自分のあるべき姿を描き、試験合格を
その手段と位置づけた)
・一人で勉強するのと違い、AASの勉強仲間の存在や勉強会での討論がよい
刺激になり、モチベーションにつながっていた。
・先生方からの熱のこもった指導。
2.実際にやったこと
・過去問の設問分解練習→勉強会に参加したことで数多くの事例にどっぷりと
浸かることができた。
・環境分析や組織人事、生産戦略だけをピックアップして解くなど、過去問を柔軟
に活用して弱点を集中的に鍛えた。
・週に2~3事例を解いて解答手順を確認しつつ、解答解説を見ながらじっくりと
振り返りを行った。
・課題図書(経営をしっかり理解する、スモールビジネスマーケティング等)の
徹底反復。
・通勤移動時間を活用し、AASのフレームワークや仮説など石原先生の講義を
音声ファイルで聞きながら、A6のノートに縮小コピーしたレジュメを繰り返し
読んだ。
・昼休み、隙間時間などを活用してAASの財務の計算問題(イケカコノート)や、
過去問を持ち歩き、1問ずつ10分前後で解くなどして毎日問題にあたるように
していた。
・AASの過去問冊子を常に携帯し、時間を見つけては事例を解く最初の40分の
プロセス(書く前まで)を繰り返し行った。
3.総合的な振り返り
・1月の講座開始から1回目のアウトプット終了あたりまでは、知識が全く活用
できず、アウトプットの振り返りばかりやっていた。2回目のアウトプットも
低調で、7月まではひたすら悩む日が続いた。
・7月からの1ヶ月間、2次をいったん忘れて1次試験に集中した。結果的にそれ
が幸いし、気分を一新して再び2次に取り組むことができた。(1次はダメでした
が・・)
・直前期はまとまった勉強時間が取れず、隙間時間での学習が多くなったが、
3回目のアウトプットあたりから、自分なりの回答手順
(80分のタイムマネジメント)で事例を解くことができるようになった。
また、事例問題にはストーリーがあり、解答にも一貫性がなければならない
ということが腹に落ちてきた。
・10月に入ってからは、完璧を目指さず、細部にこだわりすぎず、自分がすでに
身につけた技を信じて「60点」という的に当たるような解答を書こうという
意識を強く持った。
・当初思っていたような万全の準備はできたとはいえないが①モチベーションを
一定以上に保ち、ほぼ毎日途切れることなく勉強し続けたこと②試験本番では
身に付けたものを信じ、守りに入らず前のめりで押し切ったことが幸いしたの
ではないかと思います。