中小企業診断士を目指した理由

合格年度 合格者氏名 再現答案  
24年度 樋野 泰広 pdf_ico_32

1.はじめに
 4回目の二次試験受験でやっと合格できました、受験当初はストレート合格できると思っていましたので、結果的には長くかかりました。私の体験や考えが、受験生の皆様のお力添えになればと思い、合格体験記を執筆させていただきます。長文になりますが、お許しください。

2.中小企業診断士を目指した理由
 はじめに、私が中小企業診断士を目指した理由をお話しさせていただきます。私は、ある地方都市で建築設計事務所を経営していました。「・・・いました。」と過去形になっているのは、経営していた設計事務所を倒産させてしまったからです。私が経営していた建築設計事務所は、昭和11年に私の祖父が創業、父が跡を継ぎ、私は平成18年に三代目の代表取締役社長に就任しました。建築設計事務所で、戦前から創業し、しかも親子三代で承継していた会社は日本全国でも珍しいと思います。私自身も一級建築士として、地域の住宅から公共建築まで多くの建築設計に携わってきました。しかしながら、私が経営を引き継いだ時点で、会社は債務超過の状態で、日々の資金繰りにも困窮するような状態でした。そこで、大変申し訳なかったのですが、従業員に辞めてもらったりと、経営者としては非情にならざるを得ませんでした。当然、私自身の生命保険の担保提供、個人での借り入れ等あらゆる手段を講じたと思っています。
 しかしながら、万策尽き果て、社長就任三年経過を目前にしたところで、私は事業の継続を断念し、高校時代の同級生でもあった弁護士に依頼して、会社の破産申立および連帯債務者である私個人も自己破産申立を行いました。破産処理を進めている時に、その同級生の弁護士から、「うちの事務所で働いてもらえないか?」という声をかけてもらいました。その時、私は無職の状態でしたし、経営者として財務の知識や、建築関係の知識が役に立てると思い、法律事務所で働き始めることにしたのです。事務所に入ってからは、弁護士の補佐として、主に会社破産の事務手続きを中心に業務を行っています。つまり、自分の破産手続を進めながら、他の人の破産手続きの事務も行うという、日本でも珍しい法律事務所スタッフとなったのです。そして、法律事務所で働き始めたのを契機に、「自分と同じような会社破産を少しでもなくそう!」「社会に役立つ仕事をして、迷惑をかけた人に恩返しをしよう!」という強い決意を胸に、中小企業診断士の資格取得を目指しました。

3.受験歴
 平成21年から受験を開始し、平成24年に二次試験に合格しました。一次試験については、あまり苦労していない感想を持っています。というのも、一次試験は時間をかければ合格できる試験だと捉えていたからです。前にも述べましたが、自己破産手続後だったため、遊びに使うお金もなく、時間だけはあったので、勉強時間を十分確保できたからです。一次試験については、1年目はT社市販の問題集と直前の模試のみ、3年目も基本的に独学ですが、T社市販の問題集と直前の模試に加え、L社の集中講座(問題演習と解説DVDのみ)を利用していました。地方在住のため、通学は考えられませんでしたし、できるだけコストを抑えて勉強していました。
 一方、二次試験については苦労しました。成績は、一年目がCACAの総合B、二年目がBBBDの総合B、三年目がCBAAの総合Bでした。感覚的には、一年目の出来が最も良かったという感じです。勉強を重ねるにつれて、どんどん成績が悪化するという感じになっていきました。

 
平成21年
平成22年
平成23年
平成24年
一次試験
免除
免除
独学
 
独学
 
二次試験
×
CACAのB
×
BBBDのB
×
CBAAのB
L社DVD通信
独学
独学
AAS通信

4.AASとの出会い
 AASについては、平成23年の二次試験直前に合宿という講座があること知り、気になっていました。しかしながら、合宿が二次試験の一週間前であったため、地方在住の私にとっては、移動時間のために勉強できなくなることが懸念され、参加はしませんでした。結局、平成23年の試験も不合格となり、引き続き独学で二次試験の勉強を進めていました。しかしながら、勉強すればするほど、合格できる気がしなくなっていくのです。普通の試験であれば、勉強すればするほど、知識が身につき合格への実感をつかめると思うのですが、中小企業診断士の二次試験に限っては、そうではなかったのです。そこで、平成24年の5月末に、一念発起して、AASのWEB本科コースとチャレンジ要約特訓に申し込みました。さらに、10月の直前合宿にも参加をさせていただきました。

5.AAS前の二次試験勉強
 AASと出会う前の二次試験の勉強法は、初年度にL社のDVD通信で勉強していたこともあり、L社の解法スキームに基づいて進めていました。解答については、L社だけでなくT社や、その他市販の過去問題集等も参照し、自分にとって最もしっくりくる解答を模索していました。ただ、この勉強法では、自分の解答を添削してもらうことがありませんので、何が正解か全くわからず、雰囲気が合っていればOKと判断して自己満足しているに過ぎないものでした。

6.AAS後の二次試験勉強
 AASに申し込んで決意したことは、添削課題とチャレンジ要約特訓を確実にやりきることでした。添削課題については、新作が1回、過去問が2回提出できます。添削課題は新作が4事例×3の12回、過去問が4事例×4×2の32回、つまり合計で44回分の提出が可能になります。私がAASを始めたのは6月からでしたので、10月の二次試験までの期間を逆算すると、1週間に2回分の課題を提出しなければなりません。中学、高校生の頃、通信講座というものをやってみたことはあるのですが、一度も添削課題を提出することなく終わったことがほとんどだった私にとって、課題を全て提出するというのは、結構高いハードルでした。しかし、今回だけは、どんなことがあっても全て提出するという強い信念のもとやりきることができました。また、チャレンジ要約特訓についても、必ず期限内に提出することを続けました。要約特訓については、入賞は1回だけでしたが、とにかく続けることで力がついていったのではないかと考えています。添削課題は、Webの動画で復習するだけでなく、仕事の昼休み等に音声を何度も聞いて、事例の解き方をマスターするようにしました。さらに過去問は、HPクラスの模範解答を参考にして、ほぼ全ての年度の事例を解いていきました。過去問については、過去4年間勉強を続けている弊害で、L社やT社の模範解答が脳に定着してしまっているため、AAS流の解法に思考回路が切り替わるのを実感できたのは、9月末頃だったと思います。
 添削課題や過去問を続けていくうちに、ひとつの結論にいたりました。中小企業診断士試験の本質とは、「問われたことに素直に答えること」「答える内容は与件文の中に書いてある」ことであると、この2つさえできれば自然に合格得点がとれるようになると考えるように至ったのです。確かに、中小企業診断士に求められることは、相手からヒアリングした内容(=与件文)をもとに、相手の質問(=ニーズ)に的確に解答することです。ヒアリングしていないことを想像で答えても相手には伝わりませんし、コンサルティングとして成立していません。このような考え方を身につけることができるようになったのも、とにかくがむしゃらに添削課題を提出し、添削内容を復習していったからだと思います。その結果、だんだんと「問われたことに素直に答えること」ができるようになっていきました。
 そして、神戸での直前合宿では、自分の実力がAAS生のなかでどのくらいに位置しているのかを把握できたことが、大きな自信につながりました。他校の模試は受けていましたが、模試は二次試験の1ヵ月以上前のことなので、あまり信頼できません。直前期であったことで、自分の実力や解答方法に間違いがないかといったことが確認できました。幸いにも、私は参加者のなかで総合2位という成績が取れ、自信を深めることができました。

7. 二次試験を受けて
 二次試験では、まず事例Ⅰの設問4で問われたことに解答していないことに試験終了後に気付きました。重要な与件としてマーカーを付けていた箇所を漏らすという失態でした。そこで、この失敗を挽回すべく、「問われたことに素直に答える」を意識しながら、事例Ⅱ、事例Ⅲと進めていくことができました。つまり、事例Ⅰの失敗をプラスに転化させることができたのだと思います。しかしながら、事例Ⅳでまさかの問題傾向の変化です。設問1は、ほとんど間違っています。設問1が間違うと芋づる式に他の問題も間違ってしまうので、計算結果はほとんど間違っていたと思います。
 試験終了後、本来であるならば口述試験の勉強をしなければならないのですが、事例Ⅰ、事例Ⅳの失敗があるので、やる気になりません。それでもと思い、解答の復習をやってみると、事例Ⅲの設問4は、「多品種少量生産にすべき」などと解答しています。まず、間違いなく不合格だと思っていましたが、幸いにも合格という結果を得ることができました。

8.最後に
 勉強法よりも、志望動機中心の合格体験記となってしまいましたが、私が伝えたかったのは、「なぜ、中小企業診断士を目指したのか」という初心を絶対に忘れないことが、この試験合格の最大のポイントであると考えているからです。
 私の場合、会社の倒産・自己破産の経験から、「中小企業診断士となり、できるかぎり企業の倒産を減らす!」という強い思いを持っていたからこそ、勉強を続けることができました。
 事例問題で登場する企業など、まったく甘い会社です。多くの中小・零細企業の経営者が抱える問題はもっと切実です。資金繰りで夜も眠れないといったことは、ごくこくあたり前のことです。その時のことを思えば、資格試験の勉強等は苦労のうちに入りません。単に、資格が取得できれば良いという考えではなく、「この資格を取得して何をしたいのか?」を常に意識して勉強していくことが最も重要なことではないかと考えています。

   以上、受験生の皆様の参考にしていただければ幸いです。

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