H18_早坂健治さん

1.はじめに

中小企業診断士試験の勉強を始めて 2 年、平成 18 年度に合格することができました。この 2 年間を振り返ってみると、私自身、学習を進めていく上でいろいろな問題・課題に遭遇しました。そしてその都度、対策を考え実行し課題をクリアしていけたことが合格の大きな要因になったように思います。この合格体験記では、受験を志している方々のご参考になればと思い、私が経験した問題・課題やそれに対する対策などの情報も織り交ぜながら書きすすめていこうと思います。

 

2.志したきっかけ

中小企業診断士の資格を取得して何をするか、私には明確なビジョンがあるわけではありませんでした。志した理由のひとつは、大学時代の教授で中小企業診断士の資格を持っている方がおり、その方の話を聞いて企業診断という響きに漠然と憧れみたいなものを持っていたこと。もうひとつは、会社に入ってもうじき 10 年になろうとしており、仕事に対するマンネリ化やこのままではいけない、現状を変えたい、もっと自分の仕事力を高めたいという思いでした。漠然とした憧れとエンプロイアビリティの向上を目指してとでもいいましょうか、そんな理由から勉強を始めたのでした。

 

3.平成 17 年度受験

平成 16 年 10 月より勉強を開始しました。あまり調査もせずに実績のありそうな予備校を選び、通学講座に通うことにしました。これが後に痛い目にあいます。

ほとんどなんの知識もない状態での勉強開始でした。勉強を開始して一ヶ月程経つと、どれ程の勉強が必要なのか理解しはじめ、あまりの学習範囲の多さに呆然としました。ただ、学習内容は仕事に直結する部分も多く次第に面白さに惹かれていきました。

この当時、私が直面した問題・課題やその対策は次のようなものでした。

■問題・課題1-学習習慣を作ること

長年のサラリーマン生活で身についた毎晩の晩酌の習慣や趣味娯楽に興じ、学習するという習慣がありませんでした。学習習慣をつけるためには、生活習慣から見直さざるを得ず、苦労しました。

〔対策①-休日の学習習慣の確立〕

予備校の授業には必ず出席することを目標にすることで、週末の学習習慣をつけていきました。予備校の授業は、ほぼ皆勤賞(最後の一回だけ欠席)でした。 

〔対策②-平日の学習習慣の確立〕

晩酌の習慣は断ち切ることができないだろうと思い、早朝学習に取り組んだりしました。音が大きい目覚まし時計を新たに購入し、 AM5:00 に起床し勉強しましたが、長続きはしませんでした。結局は私の場合は早朝学習より、晩酌の習慣を断ち切るほうが簡単でした。

■問題・課題2-モチベーションの維持

私は飽きやすい性格です。それは、自分自身が一番よく知っていました。そんな私がモチベーションを維持するために取った策は次のようなものでした。

〔対策①-予備校の通学講座に通うこと〕

日々の仕事や生活に追われ、ついつい診断士学習のことが頭から離れていくことがあります。しかし、毎週予備校に通うことにより、講師や学習仲間からの刺激を受け診断士学習モードへの切替ができました。また、予備校に通うために高い学費を払っているので、簡単には諦められなくなるという効果もありました。

〔対策②-勉強を楽しむこと〕

勉強を楽しむために特になにか工夫したわけではありませんが、中小企業診断士の学習内容は仕事に役立つ部分も多く、楽しみながら学習できました。結果としては、勉強を面白く感じたことがモチベーション維持には一番大きかったように思います。

■問題・課題3-学習範囲の広さ

学習当初は、学習範囲の広さに呆然としました。ただ、少しづつ学習のポイントや方法を掴んでいけたように思います。主に一次試験の対策になりますが、次のような学習を行いました。

〔対策①-予備校での授業参加とテキスト通読〕

授業参加とテキスト通読で、まずは大きく科目全体の体系を覚えていきました。あまり細かい点にはこだわらず、少し調べてもわからない点は読み飛ばしていきました。(細かい点の暗記は③参照)

〔対策②-財務への苦手意識の克服〕

財務ははじめ全く歯が立ちませんでした。簿記から経営分析、設備投資の経済性計算や企業価値計算等範囲も広く、苦手意識がありました。これを克服するために、簿記 3 級テキスト&問題集を一冊購入し一通り行いました。不思議なことに、簿記が理解できると芋づる式に財務の内容が理解できるようになり、苦手意識は薄れ財務の面白さに目覚めていきました。財務に苦手意識がある方は、まず簿記からだと思います。 3 級程度で十分です。

〔対策③-過去問、模試、問題集の回転〕

私は時間の関係もあり、サブノートや単語帳は作成しませんでした。代わりに過去問や模試、問題集を何度も解くことで細かい事項を暗記していきました。経営法務や中小企業施策では特に有効でした。最後に合否を分けるのは、どれ程の問題数を回転できるか、にかかっているように思います。

平成 1 7年度の受験結果は、<一次試験:○合格 二次試験:×不合格> でした。

二次試験の学習は、一次試験の終了後から開始しました。しかし、当時通っていた予備校の経営状態悪化により、二次試験の講義がろくに行われなくなり、結局二次試験の学習はほとんど独学で行うことになってしまいました。安易な予備校選びを反省する出来事でした。

今にして思えば、二次試験は全く歯が立たなかった状態でした。自分の経験や思い込みで答案を作成し、何が問われているのか理解できていませんでした。しかし当時は、そこそこの答案が書けたのではないか、なぜ自分の答案が間違っているのか理解できていませんでした。

 

3.平成 1 8年度受験

悔しさのあまり、不合格発表の翌日から受験校選びを開始しました。去年の失敗も踏まえ、 1 8年度は各受験校の講座説明会に出来るだけ出席し、複数の予備校を比較検討して結論を出しました。私が AAS を選んだ理由は、“少人数制でディスカッションの時間が多くとられていること”でした。 2 次試験の学習では、ディスカッションを通して自分の考えを話し他の人の考えや意見を聞くことにより思考を深めていく学習方法が有効に思えました。

大手予備校はどこも講義形式であり、一方的な考えの押し付けになり理解が深まらないように感じました。講義形式だと眠くなってしまうのでは、というのも少しありましたが。。

結果的にこの考えは正しかったと思います。 AAS の授業では、1事例をて3~ 4 人程度のグループで 1 日かけてディスカッションしながら深めていきます。これにより事例を深く理解し、自然と二次試験に必要な思考方法が身についていきました。

二次試験の学習において私が直面した問題・課題やその対策は、実は次のひとつだけでした。

■問題・課題4-事例を 80 分で解ききれない(書ききれない)

この問題・課題は私の二次試験学習のスタートであり、その対策がゴールでした。

なぜ 80 分で問題が解ききれないのか。私は、字を書くスピードが遅いためだと思っていました。また字が汚いことも気になっていました。そのため、通信教育のボールペン字講座にも申し込みました。しかし、ボールペン字講座は時間がかかるうえ、短期間では思ったような成果はあがりませんでした。

あるとき AAS の授業で生産事例を解いたときも、いつものようにすべて解答しきれず空欄を作ってしまいました。 AAS では事例問題を添削指導してくれます。その事例問題の添削で、解答できなかった空欄に赤ペンで以下のようなことが書かれていました。

「時間切れでしょうか?①与件の中での問題点の特定 ②対応策の検討 ③文章化 このどのステップが問題でしょうか?②なら与件の中にヒントがあることもあります。」

この赤ペンが私に、気づきを与えてくれました。書くスピードではなく、①②に問題があるのではないか。問題点の特定や対応策の検討が遅いため、書く時間が確保できていないのではないか、と発想を転換して考えるという気づきです。そして問題点を特定するためにどのように与件を読み込んでいくか、対応策はどのように導き出すかと考えを進めていきます。そして次のような対策を実施していきました。

〔対応策①-蛍光ペンによる色分け〕

SWOT 分析やドメインの策定を短時間で行うために、 4 色の蛍光ペンを使用し与件文の色分けを行うようにしました。参考までに色分けを載せておきます。

・ブルー  企業概要(業種、従業員数、組織体制等)
・イエロー 機会、強み
・ピンク   脅威、弱み
・オレンジ その他重要事項(経営理念、ビジョン、経営者の考え等)

オーソドックスですが、やはり SWOT 分析やドメインの策定は事例を解くための基本であり重要です。だいぶ入念に訓練を行いました。これにより、事例を以前より深く理解できるようになり、解答の方向性も見えてくるようになりました。

〔対応策②- 80 分のタイムマネジメントの作成〕

80 分のタイムマネジメントを作成しました。タイムマネジメントの作成手順は次のようにおこないました。

・各事例共通の 80 分間で行う作業を細かく洗い出す
・各作業毎の目標時間を設定する
・作成したタイムマネジメントに従い事例を解く
・事例を解いた結果をもとに見直し、改善を行う

タイムマネジメントは何度も見直し・改善を加えていきました。最終的に、解答文字数の違い(7 00 字未満・以上)により2パターンのタイムマネジメントを作成し本試験に臨みました。

〔対応策③- AAS の設問分解練習〕

AAS では、設問分解練習というメソッドがあります。私はあまり熱心に設問分解に取り組んだほうではありませんでしたが、それでも過去5年間分の過去問を1回転行いました。これにより文章構成力がつくと同時に、文字を書くことに慣れ、段々と書くスピードが上がっていきました。

これらの対策により、最終的にはどのような問題でも 80 分で解答し切れるようになりました。また、解答内容も与件に忠実になり、思い込みや経験による解答も少なくなっていきました。結局、 80 分で解けなかったのは、字を書くスピードではなく、“解答を作成する手順( 80 分の中でなにをどのように行うのか)”とその“タイムマネジメント”が出来ていなかったためでした。

平成 1 8年度の受験結果は、<一次試験:×不合格 二次試験:○合格> でした。

一次試験は受験しましたが不合格でした。二次試験の勉強が気になり、また一次試験の勉強よりも面白く感じていたため、一次試験の勉強はほとんど行わずに受験しました。そのため、不合格の結果もあまり気にしませんでした。試験会場までの道順や時間、試験会場の雰囲気等を味わえたのでよかったかと思います。

二次試験当日はだいぶ緊張していました。事例Ⅰは想像以上に難しく、解いている最中に「今年もダメか」という諦めと悲しみの感情がでてきました。しかし、どこかの合格体験記に書いてあった「本番では最後まで諦めるな!」という言葉を思い出し、気合を入れ直しました。試験終了後も、やはり合格答案が書けたようには思えず落ち込みました。

しかし、その後、各予備校の解答説明会に参加するうちに、事例Ⅰは難易度が高く他の受験生も私と同じようにできていない人が多いこと、それほど大幅にはずした答案ではなかったこと、が判り少し安心しました。もしかしたら・・とも思うようになりました。そして、合格!

2 次試験は大勝負、皮肉なことに今までがんばってきた人ほど試験当日のプレッシャーは大きいものです。しかし、やはり過去の合格者がいうように「本番では最後まで諦めない!」ということが重要なのです。私は身に染みて体験しました。これが、最後の合格の秘訣です。

 

4.最後に

はじめに書いたとおり、私には中小企業診断士として何をするか、明確なビジョンがあるわけではありませんでした。しかし、試験に合格した今、新しい夢が生まれました。

“中小企業診断士として、経営者と共に経営課題に果敢にチャレンジし、ひとつでも多くの中小企業の成功・発展に貢献したい”という夢です。中小企業診断士試験を通して、生活習慣が変わり、また人生が大きく変わろうとしています。この資格との出会いと AAS の講師・受講生の方々はじめ、私の資格取得に携わってくれたすべての人達に感謝します。ありがとうございました。

来年の受験生、がんばれ!

<参考資料-合格者の80分間> 

>合格者の80分間 事例Ⅰ   >合格者の80分間 事例Ⅱ

>合格者の80分間 事例Ⅲ   >合格者の80分間 事例Ⅳ

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