第1問 中小企業診断士 早坂 健治
組織・人事事例の第1問は、後の設問への橋渡しの問題です。
A社の多角化の理由を問う問題でしたが、想定以上に多くの人の解答が、「ライフサイクルの克服」と「複数事業展開による相乗効果の発揮」という着眼点はあっていました。但し、 80 字という字数のため、書き方(因果の文章構成や与件の引用)で点数の差がはっきり現れた問題となりました。
事例Tの第 1 問は、事例問題全体の方向性の根拠を示し、後の設問への橋渡しをする意味があります。本事例でも、美容室経営への進出の根拠を示しており、第 4 問(設問2)と関連が見られます。
本設問は、1通り最後の設問まで解いて事例問題全体のストーリーを把握してから、最後に解答したほうが、書くべき内容が明確に出来たかもしれません。
MECEな切り口で
本設問では、「理由を2つ」問われています。2つということですので、MECEな切り口で解答を考える必要があります。
本設問で問われていることは、「A社が美容室経営へ進出し事業の多角化を進めた理由」です。まず、美容室経営への進出(多角化)というのは、AASのフレームワークでいうと、どのレベルに該当するでしょうか。そうです、A社の全体戦略に該当します。そして、問われているのは、その美容室経営への進出という全体戦略をとった理由です。
それでは、全体戦略は、どのように導かれるのでしょうか。全体戦略は、SWOT分析により企業の内部環境・外部環境を分析し、そこから導かれます。
このように考えていくと、本設問も実はSWOT分析の問題であることがわかるでしょう。SWOT分析で2つの切り口ですので、内部環境、外部環境という切り口が浮かんできます。この切り口から与件を探していくと、「ライフサイクルの克服」と「複数事業展開による相乗効果の発揮」という解答の方向性が見えてきたのではないかと思います。
書き方も重要です
やはり、一度読んですっと頭に入ってくる文章は、採点者から見て印象がいいです。本設問はSWOT分析の問題にしては、 80 字と比較的字数が多い設問でした。そのため、文章構成に迷った方も多かったのではないかと思います。今回採点していて印象の良かった解答には、次のような特徴がありました。
@与件の文章、キーワードをうまく引用していること
A文章が因果で構成されていること
@により、一般論ではなく事例企業に即した解答をしていることをアピールでき、Aで文章が冗長にならず、読みやすくなります。これらのポイントを心がけて書いてみることで、採点者に読みやすい解答になりますよ。
ワンポイントアドバイス
相乗効果を指摘できていても、A社が美容室業務のノウハウを有していることを指摘できている解答は少数でした。A社には美容室業務のノウハウがあるから相乗効果も期待できるため、ノウハウを有していることは書いておく必要があります。
組織活性化を理由のひとつにあげた解答も見受けられました。第 2 問との関連性を考えての解答だったかもしれません。しかし、与件文に、「社長は半ば強引に美容室経営への進出を決めた」とあります。組織活性化をするのであれば、社長が半ば強引に美容室経営へ進出するのは得策とは言えず、また、なぜ「美容室経営」なのかという根拠が薄いため、解答としての妥当性は低くなります。
第2問(設問1) 中小企業診断士 村上昌隆
組織的要因と問われれば?!
ヘッドスパの導入で各部門の協力が得られなかった理由を問われた設問でした。「 A 社の組織的要因をふまえて〜」と制約条件があります。組織的要因と言われれば、『組織構造面』と『組織文化面』から考えていくのがセオリーです。ほとんどの方がこの切り口で解答されていて良かったのですが、逆に言うとこの切り口を使わなかった方は猛反省し、しっかり復習してくださいね。ただこの設問は難問でした。全体の“つながり”はもちろんのこと、特に第2問(設問2)と第4問(設問1)との“切り分け”を意識しながら解答する必要があったので、考えを整理しないうちに解答したら、それぞれバラバラな解答になってしまう可能性があるからです。このような設問は十分に考えを整理した上で解答するようにしてくださいね。
組織に関する独特のキーワードは覚えておこう!
今回の解答例でも、『組織の硬直化』、『保守的な組織体質』、『セクショナリズム』といった組織に関する独特なキーワードが使われています。このようなキーワードを使うことにより【組織】の事例らしい解答になります。本試験までにAASはもちろんのこと他社の過去問解答例等で使えるキーワードを抽出し、覚えておくことをお奨めします。
もちろん、解答を書く際は、与件重視で上記のキーワードに溺れて、一般論的な解答にならないように注意してくださいよ。
第2問(設問2) 中小企業診断士 村上昌隆
関連性を十分意識して!
(設問1)の状況に対して、 A 社社長にどのようなアドバイスをするかを問われた設問でした。(設問1)で解答した問題点を解決するためのアドバイスが必要なのですが、中には、(設問1)で解答した内容と関係のない解答を書かれた方もいらっしゃいました。あくまで、(設問1)で特定した問題点に対するアドバイスですから、関連性を十分意識して解答してください。細かい点な点ですが、(設問1)で「@〜、A〜」と解答されたら(設問2)でも「@〜、A〜」とそれぞれリンク付けして解答するように心掛けて下さい。採点者への気配りが合格への最後のハードルですよ。
“ベタ”な表現で差別化しましょう!
一般論的な内容で解答されている方もいらっしゃいました。内容は良いのですが、一般論のアドバイスでは、A社社長は何をして良いのかわかりません。アドバイスを聞いて社長が具体的に行動を起こせるようなアドバイス、つまり与件に沿ったアドバイスをすることが必要です。与件の言葉をそのまま使った“ベタ”な解答が一番です。
極限の緊張状態で迎える本試験1時間目の事例、“ベタ”な表現で差別化しましょう!
第3問 中小企業診断士 早坂 健治
設問文を注意深く読もう
無理に能力・モラールの切り口で解答している答案が予想以上に多く見受けられました。
本設問には、「退職に対するリスク軽減とスタッフの定着率向上が重要」と明記されています。このように設問文で切り口が明示されている場合には、それが出題者の意図ですから、その切り口に従って解答しましょう。能力・モラールというAASのフレームワークの切り口は人事戦略を考えるうえで大変有効ですが、本設問のように設問文に解答の切り口が明示されている場合には、その切り口(出題者の意図)を優先してください。
あくまで、出題者の意図に素直な解答を心がけ、フレームワークは解答を考える上でのひとつの有効なツールとして柔軟に活用していきましょう。
事例企業に沿った解答をしよう
人事問題では、本設問のように具体的な対策を問われるケースも多くあります。具体的な対策となるとつい一般論で解答しがちになります。今回の解答にも、一般論での解答が
大変多く見受けられました。設問文には、「 a 店は今後どのようなことに取り組んでいく必要があるか」と書かれています。そのため、解答として求められているのは、一般論ではなく a 店の事例に即した対策となります。その場合には、与件に解答の根拠を求めることが必要になります。与件や設問文の文言・キーワードなどを解答に盛り込むと、 a 店の事例に沿った解答であることを採点者にアピールできますよ。
ワンポイントアドバイス
独立支援制度の構築を提案できている方は多くいましたが、「美容室の多店舗展開と連動した」独立支援制度を提案できている方は少数でした。この解答を導くためには少し類推が必要で難易度が上がりますが、 a 店の事例に即した対策としては、ぜひとも解答に盛り込みたい具体的対策です。事例全体の方向性が見えていた方は導きやすかったのではないでしょうか。
第4問(設問1) 中小企業診断士 林浩史
社長の思いに注意する!
組織構造改革に関する設問ということで、多くの方が「事業部制組織」を指摘できていました。現在の A 社が機能別組織であることからも押さえることができたと思います。そして、どのような事業に組織再編するかを、組織図や現在 A 社が抱えている課題から考えるわけですが、ここで社長の思いであるかぎ括弧内の言葉「時代にマッチした製品・サービスをいち早く市場に提供する企業」にも注目してください。
与件情報の中でも、社長の思い、その思いを言葉にした経営理念や経営ビジョンに企業の方向性が示されており、その方向性は解答すべき方向性と一致しています。何を答えてよいか分からなくなったときに、すがることのできるものとして存分に活用してください。
改革によって何が得られるかも示す!
組織改革すべきだと提言するためには、組織再編することでどういった結果が得られるのかを示すことが必要です。この設問に至るまでに A 社が抱える問題、課題を抽出してきているはずです。そして、解決できていない箇所が必ず残っています。だからこそ、改革すべきだと提言する意味があるのです。設問文には、「どのように改革すべきか」と書いていますが、診断士として A 社社長に話をする場面を想定して、字数と相談しながらどこまで書かないといけないか、考えるようにしてください。
第4問(設問2) 中小企業診断士 林浩史
高いレイヤーから考える!
本社としての今後の役割が問われた設問でした。事業部制組織における本社の役割と各事業部の役割をきっちり整理している方は、その知識を元に A 社の状況を当てはめてしっかりと書けていました。その一方で、視点の高さが合わないために方向性の全く違う解答も幾らか見受けられました。社長や本社に対する設問では、今後の企業のあり方や将来像に対してどのように働きかけていくのか、が問われている可能性に目を向けてください。
また、「相乗効果」を挙げている解答も多く見られました。間違いではないのですが、第 1 問との関連から A 社としては、今後の継続的な成長も大事なところですので、「多角化のメリット」を挙げる方が A 社の将来のためにも良いと考えられます。与件文の最終段落に社長の言葉や思いとして「相乗効果」という言葉があることも影響しているように感じますが、与件全体や設問文も踏まえて最も適切な語句を選ぶことも必要です。 |