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合格体験記>平成19年度 第2次試験合格体験記

「『妥当性で勝負する』が救いのテーゼに」  山田 肇

■  受験暦

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回数 3回 6階

■ はじめに

合格が今でも信じられません。終了12分前で空欄を 4 つも残してしまった事例T。優柔不断に正解を求めて同じところを行きつ戻りつした結果でした。これまでと同じ愚を繰り返している自分が信じられませんでした。「しっかりしろ!満点不要の方針はどうした!与件、与件だ!」自分の怒声が響き渡りました。受験歴をご覧下さい。長い長い受験生活です。何故、こんなことになるのか。自身の至らなさを反省しながらこれまでの道のりを振り返り、私のように本試験に上手く対応できず、苦労している受験生へエールを贈る気持ちで体験記を綴りたいと思います。

■ 受験勉強スタート

勉強開始は平成13年秋に遡ります。勤務先が奨励する大手受験校の1次試験用の通信講座からスタートしました。数年前に勤務先の倒産を経験し、再就職は果たしたものの年齢は 40 代半ばに達し、少しでもエンプロィアビリティを向上させようというのが受験動機でした。

1 次試験の学習は、業務に関連する情報を幅広く吸収でき、それによって新聞・雑誌などの情報をより深く理解できるようになるなど、生きた知識が得られて勉強自体はとても楽しいものでした。しかし、科目数は多く試験範囲も広いため相当の学習量が必要でした。テキストを読んでサブノートや単語帳を作成し、通勤時間を活用して知識の定着を図りました。試験の3ヶ月位前から市販の問題集や受験校の模擬試験を利用して知識の定着度合いを測定し、不足部分は単語帳を追加作成するなどして繰り返し学習しました。1次試験は3回合格しましたが、その要因として大きかったのは、当時作成した学習ツールだったと思います。特に単語帳は10冊以上になり、最後の方では手垢にまみれ、自分でさえ手にとるのが気持ち悪いほどでしたが、2回目以降は、この単語帳に当りながらテキストを通読することで記憶を回復させることができました。但し、経営法務や中小企業経営・中小企業政策は、前回受験以降の変更部分を捕捉するため、都度、市販の参考書を購入しました。また、財務・会計は、知識のほか計算力をつける必要があり、市販の問題集を繰り返し学習しました。

1 次試験の勉強方法は、多くの合格者が振り返るとおり、知識が断片化しないよう体系的に学習し、繰り返すことによって基本的な知識を確実に定着させることだと思います。また、広げると限りのない試験分野を効率的に学習するため、知識の幅と深さはテキストの範囲にとどめることに留意しました。勉強時間は、情報処理技術者試験と並行して、平日は1〜2時間、休日は4〜5時間程度だったと思います。1回目の合格に費やした時間は10ヶ月で700時間くらいになる計算です。

■ 迷路への入り口

平成14年、1次試験合格後体調を崩し、2週間の入院加療を余儀なくされました。退院してすぐに10月に入ってしまい、準備不足を自覚してさすがにこの年の2次試験合格はあきらめました。当然の如く不合格となりましたが、本試験の難易度の高さには改めて驚かされました。準備不足とはいえ、ほとんどの設問に対応できず、何を書いてよいかさっぱり見当もつかなかったからです。しかし、トレーニングを積み、準備さえ整えば来年の試験は何とかなるだろうと高を括っておりました。自信過剰のなせる技です。この勘違いには理由があります。当時私は情報処理技術者試験にも熱心に取り組み、2時間で2400字以上の小論文試験がある高度区分の試験を次々に突破していました。ちなみに本試験1週間後の情報処理技術者試験にも合格し、一般的に難しいとされる試験をクリアできたことで、愚かにも論述試験に変な自信をもってしまっていたのでした。中小企業診断士に求められるのは、中小企業経営に対する診断・助言です。自分の経験に基づいて与えられたテーマを説明する情報処理技術者試験との違いを認識できていませんでした。この勘違いが、後々、知識を目いっぱい振り回した独りよがりの対応につながっていくのでした。

■ 最初の迷走

「トレーニングを積みさえすれば」という考えは、誤りでした。何故なら、私の場合は、トレーニング以前に、中小企業診断士として持つべき視点が全くというほど欠けていたからです。例えば、SWOT分析の着眼点や方法、3Cやドメイン3軸の視点、製造業・卸売業・小売業・サービス業の違いなどです。確かにこれらの視点は1次試験のテキストの最初の方で説明されています。しかし、重要であるという割りにはさらっとしか書かれていません。それを読んだだけの自分には、具体的にそれをどう使うのか、あるいは、そもそも「使う」とはどういうことなのかが理解できていませんでした。そうしたレベルにも拘わらず、私が選択したのは、あるネットの勉強会が主催する2次試験用の通信講座でした。料金が安く、通学の時間的制約を解決し、主催者の指導を受けられると考えたからです。この勉強会は会員制になっていて、相互扶助の精神を基本とし、会員間での情報交換や主催者による解説などが行われるものでしたが、それだけに2次試験の解法を体系的に教えてもらう場ではありませんでした。意見をぶつけ合い参加者自らが気付きを得ていこうとする空間は、今振り返ると、大変有意義な場であったと思うのですが、当時は、多様なレベルの参加者が様々な意見ぶつけ合うため、私のレベルでは情報を整理しきれませんでした。「与件の構造化」、「題意の把握」、「戦略レベルの特定」、「解答の一貫性」等々、 2 次試験攻略のための必要作業が色々あることはわかりましたが、具体的にどうすれば良いのかが分かりませんでした。そもそも、この頃の私のレベルでは、一つの事例を80分でやり遂げることが困難で、戦略策定フレームといってもテキストの最初の方に例示されたものをイメージできる程度だったのです。こうして、当然の帰結として、15年の本試験も前年と大して変わらぬ程度に惨敗を喫したのでした。

■ 僅かな光明

力不足を実感した私は、2次試験対策として、大手受験校の通信講座を利用することにしました。受験校はHPやパンフレットなどから良さそうなところを感覚的に決めました。しかし、ここに至って漸く、2次試験の解法を体系的に学ぶことができ、「解答は全て与件に基づく」という最も基本的で重要な視点や、戦略策定フレームは業種分類別に使うべし、局面に応じて何枚も用意すべしなど、その活用方法を学ぶことができました。こうして、1次試験からの出直しではありましたが、光明を見出してターゲットを2次試験において受験準備を進めたのでした。

ところが、80分の中で事例を攻略することがなかなかできません。特に、この解法のキモである与件と解答をつなぐための「類推」や「課題設定」を行うことが難しく、時間をいくらかけても解説で示される論理展開ができませんでした。解説の論理性やそこに至る結論に疑問はないのですが、いざ事例に向き合うとできないのです。どの与件を使うのか、漏れはないか、設問間の関連付け等をあれこれ思い悩み、与件の整理に戸惑う内に時間が不足するのでした。これは読み方の不備と「切り口」の不足が主な要因だったのですが、これに気付くのはもっとずっと後になり、AASとの出会いを待たねばなりませんでした。そして、健闘し升目は全部埋めましたが、16年の本試験も敗退しました。

この間、私生活では母を喪い、仕事面では意図しない内部異動となりました。悲しみや環境変化への対応のため、勉強は惰性に流されていたように思います。しかし、中小企業診断士の勉強が自分を支えてくれるようにも感じ、縋るように継続していたことが思い出されます。

■ 再び迷走

80分の中で事例に対応することが最大の課題でした。そのためには「類推」や「課題設定」ができなくてはなりません。先の受験校から24事例分の問題集を購入し、繰り返しトレーニングに励みました。しかし、結果は芳しくありませんでした。相変わらず、模範解答には程遠く、このままではまた落ちると考えた私は、1次試験で利用した受験校の短期の通信講座と5日間だけの直前答練に参加しました。2次試験の解法はひょっとすると1次試験の勉強内容との結びつきが深いのではないかと考えたからです。これはあながち間違いではなく、その解法の違いに驚くことになりました。ここでは1次知識をベースに与件を構造化し、知識体系の中に解答を落とし込むという手法がとられていたからです。理論は明快でしたがその理論を使いこなすだけの知識が自分には足りませんでした。1次試験をもっと勉強しておくんだったと思っても後の祭りです。「類推」や「課題設定」の方法は見えましたが使いこなせない。80分は瞬く間に過ぎ行き、求めても求めても正解が見えず、 17 年も敗退しました。

この年は、本試験の翌日、妻が倒れました。高熱を断続的に発し、それから40日間もの入院生活を強いられました。幸い命に別状はなかったものの、生活基盤の脆さを実感し健康であることの幸せを思わずにはいられませんでした。知らず知らずの内に彼女に負担をかけていたのかもしれません。もう止めようかと思ったのもこの頃です。

■ AASとの出会いと幾つも気付き

ある時書店で診断・助言ワークブックT・Uを手に取り、AASを知りました。そこには「正解ではなく妥当性で勝負する」とありました。これが、模範解答を求め、それに限りなく近づこうとして失敗していた私にとって救いのテーゼとなりました。「答えは一つではない」ことは巷間よく言われることですが、はっきりと「妥当性で勝負」と言ってもらうことで精神的支柱を得た気持ちになりました。妻も徐々に回復してきており、細々ながら勉強を再開することにしました。そして、平成18年1月からAASのHP会員となり、多彩な学習ツールの利用や、1次試験から2次試験への橋渡しの場としての毎週火曜日の真剣勝負をとおして、幾つもの気付きを得ることができました。

その一つは、自分の最大の問題点は、「書く」ことよりも「読む」ことにあった点です。白書事例や春秋トレーニングにおいて、いかに与件情報を読めていないかが分かりました。与件に根拠を求めようとするあまり、与件を細大あまさず読み取ろうとし、その結果、事例企業の問題点や課題、今後の進むべき方向を一元に捉えることができていませんでした。戦略策定フレームにあるとおり、理念・ビジョンから事例企業を捉え、SWOT分析を通して現在の事業活動の問題点・課題、そこから導かれる今後の方向性を大所・高所から見なければならないのに、これまでの読み方では一所懸命灯りを照らしているつもりでも、「木を見て森を見ず」に陥りうすぼんやりした中で事例を解いていたのだと思います。それなのに過去問研究と称してたっぷり時間をかけると与件情報を整理できていたため、つい「分かったつもり」「できたつもり」になっていました。

二つ目は、戦略策定フレームの活用についてです。AASでは10個用意されていますが、これを眺めていて相互に接続できることに気が付きました。例えば、成長戦略で垂直方向や水平方向の多角化がテーマになる場合があります。こうした場合は業種分類別の戦略策定フレームを接続して俯瞰すると、与件の整理や今後の方向性が見えやすくなります。本年度の事例でいえば、事例Uでの小売業からサービス業への拡大、事例Wでの卸売業を中抜きする製造業者の小売業への進出です。AASの10個の戦略策定フレームは、マーケティング・人事・生産と横展開もできますし、製造・卸売・小売・サービスと上流から下流に縦展開することもできます。サブ・ノートに戦略策定フレームを企業の成長戦略をイメージしながら何度も書き、過去問を使ってツールとして活用できるようにしたことは大きな合格要素になったと思います。

三つ目は、合格するための到達水準に関してです。当HP上に多くの合格体験記と再現答案が公開されています。最初に再現答案を拝見した感想は、正直なところ「全然イケテナイ」と思いました。これなら自分の答案の方がましなのではとも思いました。しかし、事実は、「イケテナイ」答案が合格答案で自分の答案は不合格答案です。両者のはっきりした違いは、合格答案は与件の言葉を随所に使っていることでした。自分の答案が「与件に基づいて書きました」といえるかどうか考えてみました。自分ではそのつもりでも、採点者に伝わっているかどうか。そして、与件の言葉を可能な限り使って過去問を解いてみて、自分のこれまでの答案がいかに与件を離れていたものであるかを認識しました。そして思い当たりました。事例問題が診断・助言をテーマとする限り、「与件の言葉」で書かなければ診断報告書になり得ないということを。

■ 本当に合格できるのか

平成18年の本試験は、はっきり合格しに行きました。しかし、これまで以上の緊張とプレッシャーがかかり、やってはならない間違いをいくつも犯し、相当善戦したものの結果はまたしても不合格でした。原因は、80分のタイムマネジメントにありました。例えば、最初の事例Tで、プレッシャーによって与件の読み込みが思うようにいかず、やがて解答に着手すべき時間が到来しても方向性が見つからず更に焦る、最も悪いパターンに陥ってしまったのでした。精神面の弱さが出ました。「イケテナイ」答案でよいのに「イケテナイ」答案さえ書けない。本当に合格できるようになるのか。 ( 不 ) 合格発表後しばらくは疑念と弱気が交錯し、またしても非常に辛い時期を過ごすことになりました。

しかし、「妥当性で勝負する」ことに徹した答案は、不合格通知で確認するとそれほど悪くありませんでした。受験校の模範解答に比べればそれは低レベルではありましたが、結果はあと一歩でした。これに勇気付けられて、AASのHP会員を継続するとともに、トレーニング機会を求めて、これまでと違う受験校の通信講座を受講することにしました。過去の過ちの記憶があるため、新しい解法に触れることに多少の抵抗はありましたが、模擬試験の出題傾向が本試験に近いように感じ、あくまで80分対策のトレーニング機会と捉えて受講することにしました。ところが幸運だったのは、この受験校の解法は、いかにして80分の中で答案を組み立てるかに焦点をあてていたことです。そして、部分点を徹底して取りに行く方針は、正答を求めてやまない頑迷な自分にとって大きく視界を開いてくれるものでもありました。

■ いよいよ合格へ

80分のタイムマネジメントは最後まで課題となりました。与件の全体像を掴みつつ、設問を正確に読み取り、与件箇所をもれなく捕捉する。そして、しっかり書き切り、見直し時間を残す。こうした手順をサブノートに書き込み、試行錯誤を重ねながら何度も改良を(?)加えましたが、なかなか完成しませんでした。例えば、設問を読んでから与件を読むべしとする教えに従うと、どうしても全体像の把握が疎かになってしまうのです。かといって、設問を読まずに与件を読むと、解答時間を確保できるかどうかといった不安が増幅して上手く読み込めないのです。こうした手順の試行錯誤を繰り返した結果、直前の模擬試験の結果は過去最悪となってしまいました。合格はもう絶望のような評価もありました。しかし、それでも手順の確立さえ整えばやれる自信はありました。昨年の本試験で失敗しながらも、後一歩の結果を残せていたからです。最終的には、最初に設問を「チラ見」することに落ち着かせました。最初に軽く設問を眺めることで自分を安心させ、与件の大枠把握を優先させるためです。そうして臨んだ19年の本試験でしたが、冒頭に記したように、また同じ過ちを繰り返したのでした。しかし、結果は合格でした。不完全ながら80分のタイムマネジメントを行ったことと、与件の全体像を把握できたこと、徹底して与件にしがみつき与件の言葉を拾い続けた成果だと思っています。再現答案は見事に「イケテナイ」答案になっていると思います。しかし、苦労の果てに行き着いた答案です。これまでの合格者の再現答案を、今、本当に理解できたと思っています。

■ 最後に

多年度受験生の皆さん。決してあきらめることはありません。1次試験に合格した方ならきっと2次試験は突破できる筈です。何故なら、合格のためにはそれ以上の知識は不要であり、「読み方」や「書き方」の気付きさえ得られれば、「考える作業」は自然に正解へ向かうからです。大事なのはそうした気付きを得るための努力を行うことだと思います。独学の方には、「AASのHP会員」は、そのための方策としてとても有効だと思います。モチベーションを維持させることもできましょう。また、満点は不要です。私のように完全解答を目指す作業に陥ると、80分のタイムマネジメントに支障をきたします。意識して「部分点でOK」、いや寧ろ「60点をとる」という程度で良いのかもしれません。(とはいえ、これが一番難しかったのですが.....。)

6年間は長かった。でも、振り返ると懐かしくも感じます。勉強の苦労が折々の生活シーンに結びついているからです。しかし、これで終わったわけではありません。人より遅い歩みではありますが、牛歩よろしく千里の先を目指していきたいと思っています。

「怠らずゆかぱ千里の果ても見む 牛の歩みのよし遅くとも」

平成19年度 第2次試験

 
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