昨年(平成13年)12月1日の土曜日、次男を幼稚園まで迎えに行って帰ってきましたら、自宅のポストに郵便局の不在通知が入っていました。差出人を見ますと中小企業診断協会。「やったー!」と思いましたね。苦節3年、やっと2次試験の関門を突破できた瞬間でした。横にいた家内も、舞い上がってしまい「再配達を待ってたらあかん。郵便局まで取りに行っといで。」と言う始末です。結局、郵便局に電話を入れ、その日の3時ごろに「口述試験受験の資格取得通知」を取りに行きました。
冒頭申しましたように、私は2回2次試験に失敗しました。この合格体験記では失敗した理由と合格できた理由の違いをお伝えできれば、と思います。今、大学受験予備校のテレビCMで「不合格体験記」というのをやっていますよね。「○○大合格のポ−ズ」とか言って体のシェイプアップに励む男の子のCMです。私の「不合格体験記」はあれほどコミカルではありませんが、分かりやすいと思います。
また、私はこの「合格体験記」を3次実習を終えた時点で書いています。3次実習は5〜6人のグループで診断報告書等を作成するのですが、わたしのグループは6人中なんとストレート合格者が4人もいました。そんな方々と15日間作業をして、私の考える「不合格の理由」、「合格した理由」は、確信に変わりました。その理由も後ほど詳しく書きます。
私が初めて2次試験を受けたのは平成11年です。この時は、1次試験突破で精も根も尽き果てて2次試験の準備も十分ではなかったので、自分でも落ちたのは納得でした。しかし、平成12年度は充分に準備をして試験に臨みました。通っていた受験予備校でも成績は上位、8月の全国模試では約300人中2番の成績でした。それでもだめだったのです。因みに、模試でトップの方も残念な結果でした。
私は少なからずショックを受け、当時御指導いただいた先生に相談に行きました。はじめは先生も「落ちた理由がわからない」とおっしゃっていましたが、私の再現回答を御覧になるとズバリ指摘されました。「具体性に欠ける」と。
別の言い方をしますと、2次試験は試験と言うより企業診断そのものだと思います。企業診断である以上、診断対象企業の社長さん(=採点官)に納得していただかないと意味がありません。そこに必要なのは、アカデミックな表現、マクロ的な分析(当然必要なケースはありますが)ではなく、社長が「明日からでも即実行できる」具体的な助言なのです。そして、そのような助言を可能にするのは、「この企業をほんとに良くしたい」といった素直な気持ちに他なりません。
診断を希望する中小企業の社長さんは、例外なく経営が苦しいから受診されるのだと思います。順風満帆でしたら、わざわざお金を払って尚且つ財務諸表を見せてまで診断を希望したりはしないと思いますよ。そんな社長に、例えば「商品回転率が悪いので在庫を減らしましょう」としか言わなかったらどうなると思われますか?「そんなことはわかってる。どうしたら在庫が減るんや!」と怒られるのがオチと思います。
「過去3年の販売実績の分析から綿密な仕入れ計画を作成し、余分な仕入れを無くす」とか「同機能の商品は一つにまとめ在庫管理を容易にすると共に、単品番での仕入数量を増やすことで仕入条件の改定をメーカーに申し出る」等(もっと良い書き方があると思いますが)と書いた上で「在庫削減」の助言があるのだと思います。
失敗した年の私の回答にはこれが無かったのです。精神論になって恐縮ですが、「与件に忠実に」とか「キーワードをはずさずに」(もちろんこれも大事なことですが)ということにこだわり過ぎたということです。というか、それだけだった、ということです。「クライアントの社長がわかりやすいように」ではなく、失敗をしないように無難な回答になってしまった。結果、「だから、どうせいっちゅうねん!=(どうしたらよいのか!)」といった面白くも何とも無い回答になったのだと思います。肩肘張った大学教授のような答えは必要ありません。本心から、「この企業を良くしたい」といった素直なパートナーの立場で回答することが大切だと思います。
ここまで読まれた方の中で、「ほんまかいな」と思われた方も多いと思います。その方々のために前述したストレート合格された人の話をしたいと思います。
皆さん優秀でしたが、頭脳明晰、鋼のごとき精神力、幅広い知識を駆使し卓越したプレゼンテーション能力の持ち主・・・と言うわけではありません。負け惜しみかもしれませんが、ごく普通の能力の持ち主で、作業内容でも私が劣っているとは思いませんでしたね。ただ、書く文章、説明が分りやすいのです。決して卓越した理論を展開するわけではありません。ベタベタの表現ですがとにかく分かりやすいのです。御自分の経験を交えたりして、
「こういった問題の場合、私も経験があるのですが私の場合は・・・」といった説明で、とにかくイメージしやすく分かりやすいのです。
こういった人たちは普段の仕事から、分かりやすい会話をされているのでしょうね。良い格好をしたりせずに自然体で。変に知ったかぶりをせずに、難しい専門用語も使わず、もちろんよく勉強をされているでしょうが、自分の持っている知識だけを駆使して何とか自分の考えを伝えようとされているのだと思います。
このような分かりやすい助言ができるかどうか、という視点で採点官は採点をするのだと思いますよ。逆に気取った回答は嫌われるとさえ感じます。実際、実習を指導された先生のお話を聞いても、皆さん「分かりやすい説明を」と口を揃えておっしゃいます。そして圧巻だったのは実習の診断報告会での指導官の先生の提言です。私たち実習生の報告もそれなりに聞いていただいていた訪問先の社長が、先生の提言を聞いたとたん目の色が変わりました。すぐに幹部社員を呼び先生の提出された資料を囲んで議論が始まりました。報告会はしばし中断です。とにかく具体的なデータに裏づけされた核心を突いた分かりやすい提言なのです。「金の取れるコンサルとはこれだ」と目の前にたたきつけられた思いでしたね。
次に、受験に失敗した年度と合格した年度の私の勉強方法の違いについてお話しいたします。もう私がここで書こうとすることはお分かりだと思います。
失敗した年は、試験に知識で対応しようとしていました。テキストや「インストア・マーチャンダイジング」と言う本にかかれている内容を細部にわたってノートに纏めて、日経流通新聞の記事もスクラップにして整理しました。まあ、しんどかったですよ。知識の整理は必要なのですが、大事なのは蓄えた知識を駆使して、具体的な助言をするスキルなのです。そのスキルを磨く訓練が欠けていたのです。
では、その「スキルの磨き方」ですが、私は2つの方法を実践しました。一つは過去問題のアウトプットです。時間内にどれだけ具体的な回答が書けるか。これをテーマに繰り返しやりました。そして、回答が具体的な助言になっているかどうかを受験校の先生にチェックしていただきました。二つ目は、日々の仕事で、部下に対する具体的な指示、上司に対する分かりやすく簡潔な報告、お客様に対する分かりやすいプレゼンを心がけました。これらのことをひたすら繰り返しました。もちろん、試験制度の変更に伴い知識の整理はやりましたが、時間の配分は上記の過去問のアウトプットに時間をさきましたね。たぶん、今回はその成果がでたのだと思います。
知識の整理は、1次の知識の整理と中小企業白書の纏めだけで良いと思います。今年診断士試験にチャレンジされる方には、整理した知識を使って具体的な助言を指定された字数内で纏める訓練をなさることをお勧めいたします。その題材としては、過去問を使うのが良い方法だと思います。本試験のレベルも分かりますしね。それと、既に中小企業診断士になったつもりで日々のお仕事(学生さんの場合は学生生活)に取り組まれることも効果があると思いますよ。
中小企業診断士の試験は難関と言われますが、司法試験のように日々の生活の全てを勉強に向けなければならない、というものではありません。正しい方法でがんばれば突破できる試験です。私の体験談がこれから診断士試験にチャレンジされる方の御参考になれば幸いです。がんばってください。合格を心よりお祈りいたします。
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